NVIDIAが次世代AIプロセッサとして発表した「Vera Rubin」とは何者かBlackwell強化版だけじゃない

NVIDIAは2025年のGTCでGPUのロードマップを公開し、「Blackwell Ultra」や「Vera Rubin」をはじめとする新製品群を発表した。同社はAI市場のニーズにどう応えていく計画なのか。

2025年04月23日 07時30分 公開
[Antone GonsalvesTechTarget]

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人工知能 | GPU


 2025年3月18日(米国時間)、半導体ベンダーNVIDIAは同社の年次イベント「NVIDIA GTC」でGPU(グラフィックス処理装置)アーキテクチャの最新ロードマップを公開した。2025年中に最新GPU「Blackwell」の強化版「Blackwell Ultra」の提供を開始し、2026年後半には次世代AIプロセッサ「Vera Rubin」を市場投入する計画だ。市場投入する計画だ。NVIDIAは高まるコンピューティング需要にどのような製品ラインアップで応える計画なのか。

次世代AIプロセッサ「Vera Rubin」とは何者?

 「AI(人工知能)の処理性能に対する要求は一層加速している。AIエージェント(業務の流れの中でリアルタイムに意思決定し、タスクを自律的に遂行できるシステム)や推論モデルの登場により、われわれが2024年に想定していた計算量の100倍以上が、現在必要とされている」。NVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏は、GTCの基調講演でこう話した。

 NVIDIAが今後のコンピューティングの需要に応えるために提供するVera Rubinは、CPU「Vera」とGPU「Rubin」で構成される。Vera Rubinは、CPU「Vera」とGPU「Rubin」で構成される。Vera Rubinを搭載したサーバシステムには、帯域幅3600Gbpsを実現する次世代相互接続技術「NVLink 6」や、13Tbpsの帯域を誇る高帯域幅メモリ「HBM4」が搭載される。これは、Blackwell Ultraで採用されている「HBM3E」の8Tbpsと比べて大幅な性能向上となる。加えて、新たに開発されたNIC(ネットワークインタフェースカード)「CX9 SuperNIC」も採用される。

 NVIDIAはGTCで、同社GPUの性能をさらに引き出すための関連製品群も併せて発表している。

推論処理をGPU間で効率分散

 GTCでは、AI推論を効率的に分散処理するためのオープンソースソフトウェア「NVIDIA Dynamo」も発表された。AI推論とは、AIモデルにデータを入力し、論理的な結論を導き出したり、予測や問題解決を実施するプロセスを指す。NVIDIA Dynamoは、数千基のGPU間で推論処理を効率的に調整する役割を担う。

 「推論モデルがインフラに与える負荷は、AIチャットbotのそれを大幅に超えることから、NVIDIAがGPU性能の強化に注力するのは当然の流れだ」。こう話すのは、調査会社Futurum GroupでAI担当バイスプレジデントを務めるニック・ペイシェンス氏だ。

 「今後およそ2年程は、NVIDIAがハイエンドGPU市場を実質的に独占するだろう」とペイシェンス氏は語る。NVIDIAはソフトウェアスタックの整備に力を入れており、NVIDIA Dynamoはその最新の成果だ。「市場の拡大と領域の多様化を見据えた賢明な戦略だ」とペイシェンス氏は評価する。

Blackwell Ultra搭載のAIスパコン

 2025年後半には、NVIDIAのハードウェアパートナー各社が、Blackwell Ultraを搭載した大規模AIインフラ「DGX SuperPod」の提供を開始する計画だ。DGX SuperPodは、サーバモジュール「NVIDIA DGX B300」および液冷式のAIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX GB300」を搭載可能。NVIDIA DGX GB300は、Blackwell Ultra72基と「Grace CPU」36基を内蔵する。

 Cisco Systems、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Lenovoを含む十数社のハードウェアベンダーが、2025年後半にNVIDIA DGX B300搭載サーバの提供を開始する計画だ。

大規模GPUの分散接続を可能にする次世代ネットワークスイッチ

 NVIDIAはGTCにおいてシリコンフォトニクス(電気信号の代わりに光信号を使用して高速データ通信を実現する技術)を活用した次世代ネットワークスイッチ「NVIDIA Spectrum-X」と「NVIDIA Quantum-X800」も発表した。これらのスイッチは、地理的に離れた拠点間でも数百万基のGPUを接続可能にする。

  • NVIDIA Spectrum-X
    • 柔軟な構成が可能なEthernetベースのネットワーク基盤。2026年にNVIDIAのパートナー企業から出荷される計画。
  • NVIDIA Quantum-X800
    • NVIDIA Quantum-X800は144ポートの800Gbps通信を可能にするInfiniBandスイッチ(高速・低遅延通信向けのネットワーク機器)。2025年中にNVIDIAのパートナー企業から出荷される計画。

個人向けの小型AIコンピュータ

 NVIDIAは、個人向けAIスーパーコンピュータ「DGX」ブランドの新製品も発表した。デスクトップシステム「DGX Station」は、784GBのメモリを搭載したNVIDIA DGX GB300を内蔵しており、GPUはGrace CPUとインターコネクト技術「NVLink-C2C」で接続されている。NVIDIAは、SoC(システムオンチップ)「GB10」を搭載した小型AIコンピュータ「DGX Spark」も発表した。

(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)

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