Supermicroのデータセンター向け「Blackwell」システムの出荷はNVIDIAにとって朗報だが、企業はROI(投資対効果)を慎重に見極めるべきだとアナリストは指摘する。どういう意味なのか。
GPU(グラフィックス処理装置)ベンダーNVIDIAの主要パートナーであるサーバベンダーSuper Micro Computer(以下、Supermicro)は、NVIDIAのGPU新アーキテクチャ「Blackwell」を搭載した、データセンター向けAI(人工知能)アクセラレーターの出荷を開始した。最新世代のAIアクセラレーターが計画通り市場に投入されたことになるが、アナリストによれば、GPUを必要とする企業はこの出荷開始を素直に喜ぶことはできない。
2025年2月5日(現地時間)、SupermicroはBlackwell向けのインフラを含む一連の製品ポートフォリオ「Supermicro Building Block」を発表。このポートフォリオには、空冷または液冷の冷却システムが含まれており、Blackwellを活用したAIワークロード(AI技術関連の処理やタスク)と並行してアプリケーションを実行できるよう、複数のCPUオプションが用意されている。Supermicro Building Blockにはその他、データセンター管理ソフトウェアやネットワークスイッチ、配線システムなどが搭載されている。
2024年11月に開催した決算報告会の際、NVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏は、Blackwellシステムの過熱問題に関する報道について投資家から質問を受けた。この問題が解決されなければ、Blackwellの導入がユーザー企業のデータセンターで遅れる可能性がある。
その際フアン氏は、具体的な回答を避けつつもBlackwellの生産は「順調に進んでいる」と強調した。「Blackwellは非常に良好な状態にあり、今期の出荷計画は当初の想定を上回る規模になっている」とフアン氏は述べた。
ただしBlackwellのシステムが市場に投入され始めても、購入者が実際に製品を手にするまでには時間がかかる可能性があると、調査会社Gartnerでアナリストを務めるチラグ・デカテ氏は指摘する。「Blackwellの需要は依然として供給を上回っており、現在のところ数カ月待ちの状態だ。大規模なGPU調達の初期段階では、クラウド事業者やハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)が中心となっており、一般企業向けの供給は限定的だ」
Supermicroは、従来の企業データセンターからハイパースケーラーまで対応するラックスケールシステム(ラック単位で提供されるコンピューティングシステム)の広範な製品を展開している。従来の企業向けには、10U(ユニット)サイズの空冷システムにGPU「Blackwell B200」を8基搭載したAIアクセラレーター「NVIDIA DGX B200」を提供する。
企業はBlackwell導入のROI(投資対効果)を慎重に評価する必要がある。「AI技術の導入は、単にGPUを大量に購入することでは完結しない」とデカテ氏は指摘する。「供給が限られているとはいえGPUの調達自体は比較的容易だが、それらを活用し、具体的な成果を出すことこそが難しい」
製薬会社、金融機関、大手小売企業などは、オンプレミスインフラでAI技術を活用することの価値を見出している。しかし、技術の成熟度が十分でない現状では、インフラが高度に整備されていない企業にとって、AI技術を社内のインフラで導入することは依然として困難だ。こうした状況が改善されるまで、クラウドサービスを活用する方が現実的な選択肢となる可能性が高い。「Google、Microsoft、Amazon Web Services(AWS)といったクラウドベンダーは、Blackwellをユーザー企業に提供する最前線にいる」とデカテ氏は述べる。
Supermicroの新製品発表は、同社が取締役会任命の特別委員会による収益水増し疑惑の調査を受け、新たな法務および財務担当役員を任命すると発表してから約2カ月後のことだった。結局、委員会は不正行為の証拠を見つけることができず、同社の財務の再報告は不要となった。この疑惑は、元従業員が連邦裁判所に申し立てたものであり、Supermicroの監査法人であるEY(Ernst & Young Global)の辞任につながった。EYは辞任の際、Supermicroの経営陣および監査委員会が提供する情報に信頼を置けなくなくなったとする書簡を提出した。
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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