「GPUの進化」は企業にとって“うれしいことばかり”ではない?NVIDIAは「Blackwell」を発表

人工知能(AI)技術の活用が急速に広がる中、企業がAI技術の活用を成功させるために乗り越えなければならない課題とは何か。NVIDIAの「Blackwell」など、GPUの進化を踏まえて考える。

2024年05月27日 07時30分 公開
[Scott SinclairTechTarget]

関連キーワード

人工知能 | GPU | イノベーション


 「人工知能(AI)技術を利用する準備ができているか」――。2024年3月、NVIDIAが米国で開催したカンファレンス「GTC 2024」で、同社のCEOであるジェンスン・フアン氏は企業などの組織にそう問い掛けた。

 これからAI技術なしではシステムの在り方を考えられなくなる時代に突入しようとしている中で、NVIDIAは新たにGPU(グラフィックス処理装置)アーキテクチャ「Blackwell」を発表した。企業は、こうしてGPUを中心としたAI用インフラが進化することの利点を享受できる一方で、幾つかの課題に直面するという見方がある。その課題とは何なのか。

「GPUの進化」が企業に突き付ける難題とは?

 NVIDIAによると、Blackwellは2080億個のトランジスタを搭載し、大規模言語モデル(LLM)の大量データの高速処理ができる。GPU間の帯域幅は1.8TBpsだという。Amazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftの大手クラウドベンダーはBlackwellの発表に合わせ、同技術を採用する計画を明らかにした。

 今後は生成AIを本格的に導入する動きが広がる見込みだが、AI技術の利用を巡るさまざまな課題が浮上している。一つは、AI技術の導入にはそれに適したインフラが必要になるため、コストがかさむということだ。AI技術をどう利用すれば、その投資に見合うだけの価値を引き出せるかという点も経営者の悩みどころになる。

 組織はAI技術の導入に際し、クラウドサービスを利用するか、システムをオンプレミスで構築するかを決めなければならない。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)は、「データを迅速に利用できるようにするためにオンプレミスでシステムを構築するニーズが旺盛だ」と説明する。

 そうした中、Dell TechnologiesやHitachi Vantara、Pure Storageといったハードウェアベンダーは、AI技術を活用するための製品やサービスの開発にNVIDIAと連携して取り組んでいる。GTC 2024ではそうしたインフラ製品のプロトタイプが披露された。AI技術の利用に最適化したインフラ製品が増えることにより、組織にとっての選択肢が広がる。ただし、それと同時に適切な製品を見極めることも難しくなる。

 自社に最適なインフラを採用するに当たり、組織はAI技術を何のために活用するのかをまず明確にする必要がある。使用するデータの量やAIモデルの学習に使うパラメーターの数などに加え、独自のAIモデルを開発するのか、既存のAIモデルを用いるのかを決めなければならない。

 AI技術の用途によってインフラに求められる条件が大きく異なる。製品選定をする際は、ベンダーに相談してみるのも手だ。AI技術の活用に関連する製品ラインアップが豊富なベンダーであれば、製品の選定ポイントや利用方法などについて参考になるアドバイスを提供してくれるはずだ。AI技術の利用に最適なデータ選びをベンダーが支援してくれる場合もある。

 AI技術は近い将来、企業をはじめとした組織の業務を大きく変える可能性がある。AI技術を活用する方針が明確になったら、投資を惜しまず、AI技術を利用するためのインフラの整備に早期に乗り出すことが重要になる。AI技術の用途とそれに必要なデータを見定めた上で、パートナー企業の協力を得て「土台づくり」に取り組むことが成功の鍵だ。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news176.jpg

「伊右衛門」「日清麺職人」「鍋キューブ」に見る2024年上半期食品・飲料トレンドは「うま濃い余韻」
食品メーカーの商品開発やマーケティング支援などを行う味香り戦略研究所は、2024年の食...

news076.jpg

オラクルが広告事業から撤退へ ポストCookie時代の業界地図は変わるか?
Oracleは「Responsys」「Moat」「BlueKai」などの買収を重ねて広告部門を構築してきた。...

news068.jpg

琉球泡盛「残波」「海乃邦」の海外展開を例に考える日本のブランドが持つべき視点
日本のブランドが海外展開で持つべき視点とはどのようなものか。2024年4月にI&CO APAC代...