IBMが「IBM z17」を発表 AI時代の“次世代メインフレーム”の特徴は?AI時代に向けて設計された初のメインフレーム

IBMはメインフレームの次世代モデル「IBM z17」を発表。プロセッサに内蔵されたAIアクセラレーターの強化に加えてPCIe接続のアクセラレーターカードを最大48枚搭載可能にするなど、AI時代を前提にした設計が特徴だ。

2025年04月18日 05時00分 公開
[渡邉利和]

 IBMは2025年4月8日(米国時間)、メインフレームの次世代モデル「IBM z17」(以下、z17)を発表した。提供開始は2025年6月18日(米国時間)の予定。z17は「AI時代に向けて完全に設計された初のメインフレーム」とされ、「ハードウェア、ソフトウェア、システム運用の全てにAI(人工知能)機能を備えた」という。

AI時代に向けて設計されたメインフレーム「IBM z17」

 プロセッサには、前世代モデルの「IBM z16」に搭載された「Telum」の第2世代となる「Telum II」を搭載する。5.5GHz駆動のコア8個を集積し、コア当たりの性能(シングルスレッド・パフォーマンス)はz16のTelum比で11%向上し、コア当たりのキャッシュ容量は40%増で、面積は20%削減、消費電力は15%削減された。

画像 IBM z17が搭載するTelum II(提供:日本IBM)《クリックで拡大》

 オンチップで搭載されたAIアクセラレーターも第2世代に進化しており、LLM(大規模言語モデル)向けの命令セットの追加も行われている。新たにオンチップでDPU(データ処理ユニット)が搭載され、従来はI/O(入出力)カード上のASIC(アプリケーション特化型集積回路)で実行されていたI/O処理を代替できるようになった結果、低遅延での通信が可能になっている。AIワークロードの処理能力を向上させるため、PCIeカードを介して接続される拡張オプションとして「IBM Spyreアクセラレーター」も2025年第4四半期に提供予定となっている。Telum IIに内蔵されるAIアクセラレーターとアーキテクチャは同一だが、実装の異なるAIアクセラレータを32コア搭載する。z17の1筐体(きょうたい)に最大48枚のSpyreアクセラレーターを搭載可能。

画像 IBM z17(提供:日本IBM)《クリックで拡大》
写真 日本IBMの二上哲也氏

 背景状況について説明した日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の二上哲也氏(執行役員 IBMフェロー コンサルティング事業本部 最高技術責任者)は市場の課題として「人材不足」「IT技術継承」「安定稼働」「企業データの活用」の4点を挙げ、これに対して同社は「AI」「自動化」「ハイブリッド・バイ・デザイン」で課題解消を目指すとした。

 メインフレームに関しては、長年にわたって主要開発言語として利用されてきたCOBOLに習熟した開発者の引退などで人材不足が課題とされてきたが、同社のAI製品ポートフォリオである「IBM watsonx」では生成AIを活用したソースコードの自動生成や、改修を積み重ねた結果としてブラックボックス化したソースコードを解析して仕様書を作成したり、自動リファクタリング機能でソースコードを改善して可視性を高めたりするなど、AIによってメインフレームの活用や運用管理を支援する他、高度な運用自動化も実現する。

 ハイブリッド・バイ・デザインは、メインフレームとクラウドサービスを組み合わせてシステムを構築するようなハイブリッド環境を最初から想定し、「計画段階から全体最適化を意識して設計する」考え方を指す。AIモデルの学習など、メインフレームにある基幹系のデータをクラウドサービスからセキュリティを確保した上でリアルタイムに参照するようなニーズが増えてきているが、メインフレームとクラウドサービスを後から接続しようとしても簡単にはいかないことが多いため、あらかじめそうした完成形を意識してシステム設計を行う必要があるという。

 メインフレームは長い歴史を誇ることと裏腹に、ノウハウを持ったエンジニアの高齢化や後継者不足、ノウハウ継承の断絶などの課題も存在するが、こうした課題に対してAIの活用で解消を目指すのは正しいアプローチだと言える。AIワークロードの処理能力を向上させることに加え、メインフレーム自体の運用もAIで支援していくなど、多面的なAI活用を見せる同社だが、別途展開しているwatsonxにおける取り組みも一貫しており、ユーザーにとっての信頼感につながるだろう。z17は基幹系システムのためのプラットフォームとしてメインフレームを利用しているユーザー企業がAI活用を加速していく際の選択肢になると考えられる。

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