塩漬けだった「メインフレーム」が再び脚光を浴びる理由メインフレームへの投資が復活?

クラウドサービスへの投資が加速する中でメインフレームの存在感は薄れつつあったが、最新の調査では、メインフレームへの投資意欲が高まっている状況が見えた。その背景には何があるのか。

2023年10月29日 10時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 メインフレームへの投資意欲が高まっていることが、メインフレーム向けのソフトウェアベンダーBMC Softwareが実施する年次調査で明らかになった。クラウドサービスへの投資が加速する中で、メインフレームをレガシーシステムだと見なして投資を抑制する企業はあるが、それ以上にメインフレームの活用を広げる企業が多い実態が見える。メインフレームへの投資が戻ってきた背景には何があるのか。

メインフレームへの投資“復活”は当然なのか?

 BMC SoftwareはITおよびビジネス分野のリーダー約800人を対象にメインフレームに関する運用や投資の状況を調査し、結果を年次調査レポート「2023 BMC Mainframe Survey」でまとめた。

 レポートによれば、「メインフレームで動かす新たなワークロード(アプリケーション)が増えた」と回答した割合は62%で、「メインフレームをレガシーシステムだと見なしている」という回答(32%)を大きく上回った。メインフレームで動かす新たなワークロードが増えたという回答は、2016年の同じ調査では46%だったため、以前よりメインフレームの活用が重視される傾向にあることが分かる。今回の調査では、「過去1年でメインフレームへの投資を増やした」という回答は63%だった。

 BMC Softwareによれば、メインフレームを運用している組織において顕著なのは、以下2つの手法の採用が進んでいることだ。

  • 開発チームと運用チームが緊密に連携する「DevOps」
  • システム運用で人工知能(AI)技術を活用する「AIOps」

 組織がDevOpsの体制強化を重視するのは、業務の中核的なアプリケーションをビジネスの状況に応じて迅速に変更する必要性があるからだと考えられる。DevOpsを強化する過程でデータ量やデータベースの種類が増え、インフラの改善が必要になり、メインフレームへの新規投資に向かっていると推測できる。

 DevOpsにおいて強化が必要な要素を尋ねる設問で、最も多かった2つの回答は「開発者体験の向上」と「開発の品質と効率の向上」だった。他には、以下が挙がった。

  • テストの自動化
  • 開発やデプロイの工程を効率化する「DevOpsツールチェーン」の採用
  • メインフレームと非メインフレームをまたいだ同一アプリケーションの利用

 AIOpsの採用は、メインフレームか非メインフレームかにかかわらず進む傾向にある。特筆すべき点は、メインフレームの重要性が見直されている兆候が見えることだ。「メインフレームでAIOpsは必要ない」と回答した割合は、2年前の2021年版では41%だった。今回の2023年版ではその割合は29%へと下がっている。

 企業がAIOpsを導入する主な目的は以下の通りだ。

  • システムの連続稼働時間の向上
  • 問題の早期発見と対処
  • 稼働状況の予見と対処

 AIOpsを導入する際は、スキルやコストの不足、システムの複雑性などが課題になりがちだが、BMC Softwareによれば、これらを課題だと捉える組織は減少する傾向にある。同社は「組織がリスクを抑制しながらシステムの回復力(レジリエンス)を高められる程度にまで、AIOpsの分野は成熟した」と指摘する。

 一方、クラウドコンピューティングの導入を検討している場合の優先事項として最も多かったのは、「クラウドコンピューティングによるワークロードと、メインフレームを接続すること」だった。クラウドコンピューティングの用途として、回答者の41%が「クラウド型のストレージとバックアップ」を挙げた。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SATA接続HDD」が変わらず愛される理由とは

HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

TechTarget郢ァ�ク郢晢ス」郢昜サ」ホヲ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。