HDDはSSDに比べて容量当たりのコストが安く、当分の間は大規模ストレージシステムにおいてHDDが採用され続けると考えられる。こうした状況はどれくらい続くのか。
SSDに代表されるフラッシュメモリ技術を用いたストレージ(以下、フラッシュストレージ)は、継続的に技術が進歩し、その容量価格は低下している。一方のHDDは、現状は容量当たりの価格を武器に、SSDに対抗している。
東芝のストレージ担当事業開発上級マネジャーのライナ・カイゼ氏へのインタビューを通じて、HDDはどれくらいの期間、SSDに対抗できるのかを探る。
カイゼ氏 SSDなどのフラッシュストレージとHDDの価格差を保つために、われわれはHDDの容量を増大させ続けながらコストを抑えて製造する必要がある。過去10年通用し、今後少なくとも10年以上通用する仕組みは、同じ製造コストでさらに2TBあるいは4TBを増やして製造し、価格は従来のモデルのまま据え置くことだ。そうすれば容量当たりのコストが下がり続け、SSDなどのフラッシュストレージとの差が保たれる。
SSDは容量単価が下がっているが、HDDも大容量化を続ける中で容量単価の優位性を保っている。HDDとSSDの容量単価の差が保たれる限り、HDDは存続し続けるだろう。
われわれの研究施設や生産、生産準備の状況から判断すると、われわれは40TBのHDDを発売できるとみている。問題はコストだ。
24TBのHDD2台を数百ドルで購入できるのに、誰が40TBのHDD1台を数千ドルで購入するだろうか。1TB当たりの価格が高くなる新技術を打ち出してもうまくはいかない。
われわれは1TB当たりの価格を据え置いた新技術を開発する必要がある。恐らく50TBまで容量を増やすことは可能だ。そのための技術は既に研究段階を終えている。あと10年は、HDDは安泰だと言える。
もう一つ技術的に可能なのは、100TBから200TBのHDDだ。それは研究で確認されている。つまり、現在のフォームファクター(大きさや形状などの仕様)で100TBから200TBは物理的に実現できるだろう。
まだ分からないのは、こうした100TBから200TBのHDDを市場が受け入れられる価格で製造できるかどうかだ。SDDと同じ価格で製造すれば、HDDとしては高くなり過ぎる。価格差は必要だ。HDDは、われわれが大容量化や価格の据え置きといったトレンドを追い切れなくなった時点で徐々に姿を消す可能性があるが、そうなるかどうかはまだ分からない。
フラッシュメモリ技術については、速度を理由にさらなる圧縮や重複排除などの機能を向上させられるという見方もある。加えて、SSDは初期の設備投資はHDDより高いが、運用コストは削減できるという主張もある。SSDはHDDに比べて以下の点でコストを抑えられる可能性がある。
だが、こうした運用コストの差で、初期費用の差を償却しようとすると、われわれの計算では15年から50年は必要だ。つまり、現時点ではデータセンターにおける運用コストの差でSSDがHDDより安価になる可能性を考える必要はないということだ。フラッシュストレージが優位である点はその高性能を発揮できる小規模ストレージシステムになると言える。
あらゆる観点から考えると、大規模ストレージシステムには今後もHDDが採用され続けるだろう。
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