AIエージェントに関する新しい潮流が、IT業界を席巻している。次々と最新ツールを打ち出すNVIDIAやOpenAIなど大手企業の狙いとは何か。最新動向を解説する。
2025年4月23日(現地時間)、半導体ベンダーNVIDIAが「Enterprises Onboard AI Teammates Faster With NVIDIA NeMo Tools to Scale Employee Productivity」と題するブログ記事を公開。企業が独自の「AIエージェント」(AI:人工知能)を構築できるツールを備えたAIプラットフォーム「NeMo Microservices」を提供開始したことを明らかにした。NVIDIAがAIエージェントに焦点を当てる背景には何があるのか。
NeMo Microservicesは複数のツールで構成されている。主なツールは以下の通り。
NeMo Microservicesは、NVIDIAの競合AIベンダーがAIエージェント向けのツール群を相次いで発表する中で登場した。同時期の動きとして目立っているのはGoogle、Adobe、AI技術ベンダーDataikuだ。
Googleは、2025年4月9日(現地時間)に公開したブログエントリ(投稿)で、AIエージェント開発ツール「ADK」(Agent Development Kit)を発表した。Adobeは同年3月18日(現地時間)に、AIエージェントの構築、管理、オーケストレーションを支援する「Adobe Experience Platform Agent Orchestrator」を公開した。Dataikuは2025年4月24日(現地時間)、「The Universal AI Platform」を発表した。これは、予測モデルを活用してAIエージェントを制御したり、新たなAIエージェントを構築したりするためのシステムだ。
「企業はニーズに応じてツールを選択できるというユニークなメリットを享受している状態だ」。調査会社The Futurum Groupのバイスプレジデント兼アナリスト、ブラッドリー・シムニン氏はこう述べる。
同氏は、NeMo Microservicesを使う最大のメリットとして、AIチップの世界的サプライヤーが提供するデータを利用できることを挙げる。
「AIの機能や性能を支えている力の源はデータであるとNVIDIAは理解している」。シムニン氏はこう話す。「企業が簡便かつ低コストでデータを取り込めるようにすることが、エージェントAIの発展につながる」(同氏)
調査会社Constellation Researchの創設者でプリンシパルアナリストのレイ・ワン氏は、「NVIDIAは、単なるAIチップベンダーにとどまらない存在になりつつある」と語る。
「チップだけを取り扱っていても、経済サイクルの波に振り回されるだけだと同社は気付いた。だからこそ、同社はチップからAIエージェントまでを包括的に提供するシステムを重視するようになった。こうしたAIの基盤を構築することで、計算コストを引き下げることが可能になる」とワン氏は指摘する。
ハードウェアやソフトウェアのスタックを多様化させる企業がある一方で、顧客がシンプルに生成AIへアクセスできる方法を提供するベンダーもある。
OpenAIは2025年3月、同社のマルチモーダルAIモデル「GPT-4o」の画像生成機能「4o Image Generation」を公開した。同年4月には、画像生成用マルチモーダルモデル「GPT Image 1」をAPIに統合したと発表した。この発表においてOpenAIは、画像生成AI機能を持つAdobeのサービス「Adobe Firefly」や「Adobe Express」で、OpenAIの画像生成モデルを利用できることも明らかにした。
「APIを使った画像生成機能を通じて、OpenAIの顧客はより柔軟な操作が可能になる」。調査会社Informa Tech(Omdiaの名称で事業展開)のチーフアナリスト、リアン・ジー・スー氏はこう述べる。
「つまり、画像をエンドユーザーの好みに合わせて細かく調整できるようになったということだ」(スー氏)
スー氏はさらに、「OpenAIの画像生成モデルは注目が集まっているものの、Adobeなどが支配する画像生成AI市場で競争を強いられている」と指摘する。Adobeは自社のツールにOpenAIのAPIを統合することになったが、両社はいまだに競合の立場にある。OpenAIはモデルの提供者であり、その使用方法を制御する立場にない。一方、Adobeをはじめとするサービス提供者は同社の製品やサービスにOpenAIのモデルを組み込むことで、ユーザーの選択肢を広げることができる。
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