「AIエージェント」にどこまで任せられる? Googleが“制御”を重視する理由本格化する企業のAI活用【後編】

人間の指示なしで自律的に動く「AIエージェント」は、生産性を飛躍させる一方、大きなリスクもはらむ。AIエージェントを適切に制御、管理するために、Googleが重視する要素とは。

2025年08月21日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

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 AI(人工知能)技術の進化によって、自ら思考し、計画を立て、業務を遂行する「AIエージェント」という存在が生まれた。人間の指示なしで自律的に動くAIエージェントは、生産性を向上させる可能性を秘める一方、大きなリスクもはらんでいる。AIエージェントが、与えられた権限を超えて機密情報にアクセスするといった問題に対処することが、AI技術を活用する企業にとって課題になりつつある。

 この課題に対処するため、Googleはどのような形で企業を支援しているのか。同社のクラウドサービス部門Google Cloudで、アジア太平洋地域のカスタマーエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるモー・アブドゥラ氏に話を聞く。

AIエージェントの“暴走”をどう防ぐ?

 GoogleのAIエージェント管理ツール「Google Agentspace」は、AIエージェントを発見、再利用するためのギャラリー機能と、各AIエージェントに定義済みのガバナンスルールを適用する仕組みを持つツールだ。ここでのガバナンスルールの例として、アブドゥラ氏は「エンドユーザーの認証情報を引き継いで本人として振る舞う」「エンドユーザーの認証情報を引き継ぐが、特定の操作には制限をかける」といったルールを挙げる。これらのルールによって、AIエージェントが完全に自律的に動作するのかどうか、特定のアクションには人間による承認を必要とするのかどうかを定義できる。

 ただし企業がこうしたAIエージェントを大量に導入し始めると、重要な問題が浮上する。それは、IT部門やセキュリティ部門が、人間のエンドユーザーに対してID・アクセス管理(IAM)システムで実施しているように、AIエージェントの権限をどのようにまとめて制御、管理すればよいのかという問題だ。

 GoogleのIAMサービス「Google Cloud IAM」を使って、AIエージェントの権限と人間のエンドユーザーの権限を一元管理できるのかという問いに対し、アブドゥラ氏は将来的な実装を示唆する。だが少なくとも2025年7月時点では、Google Agentspaceの仕組みで対処する必要がある。

 シンガポール在住のアブドゥラ氏にとって、AI技術が現地の成功事例につながるのを見ることは、特にやりがいのあることだという。同氏はDBS BankやPrudentialといった企業による取り組みを、この地域で起きている「世界を先導する」イノベーションの証拠として挙げた。金融機関DBS Bankは、AI技術を活用して顧客サービスを強化し、顧客ごとに最適化された金融ガイダンスを提供している。保険会社PrudentialもGoogleと提携し、医療分野に特化したAIモデル「MedLM」を用いて医療文書を分析することで、保険金請求処理の迅速化とミスの削減を目指している。

 こうした企業のAI導入は、シンガポール政府の強力な支援によって後押しされている。アブドゥラ氏は、ITに関するシンガポール政府の合同庁Digital Industry SingaporeとGoogle Cloudの共同イニシアチブである「AI Cloud Takeoff」プログラムを例に挙げる。このプログラムは、最大300社の地元企業が独自のAI CoE(中核的研究拠点)を設立することを支援するもので、生成AI(画像やテキストを自動生成するAI技術)製品の構築を支援するプログラム「AI Trailblazers」の成功を土台にしている。

 アブドゥラ氏は自身のキャリアを振り返り、ある重要な気付きが転機になったと語る。同氏はかつて、コンテナ管理ツール「Docker」といった、今日のクラウドサービスの根幹を成す技術に携わるエンジニアだった。しかし、あるときこう自問したという。「われわれはこれほど素晴らしい技術を開発しているが、それだけでは不十分ではないか。この技術を誰もが活用できるよう、その導入までを支援することこそが重要ではないか」

 この気付きが、彼を純粋な技術開発の現場から、顧客企業と直接向き合い、AI技術のような最先端技術の導入を支援する現在の役職へと導いたのだ。今、AI技術とその関連技術は成熟し、企業のAI技術活用は単なる実験からROIを重視した導入に移行している。アブドゥラ氏の問いに対する答えは、企業にとって、ますます「イエス」になりつつある。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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