ChatGPTや生成AIに続き、注目を集めることになった「エージェント型AI」。自律的にタスクを実行するこの技術は定着するのか、それとも“次の流行”に取って代わられるのか。
大規模言語モデル(LLM)の技術が台頭し、真っ先に「ChatGPT」と「生成AI」という用語が知られるようになった。次に、業務の補佐役を意味する「コパイロット」(Copilot)への関心が高まり、2024年以降は“自律的にタスクを実行するAI”として「エージェント型AI」(Agentic AI)」が注目を集めている。
これらは全て、わずか3年足らずの間に起きたことだ。すぐにエージェント型AIが“バズワードの賞味期限切れ”を迎えてもおかしくない。生成AI関連のバズワードの変遷に関して、われわれはすぐにまた“新たな局面”を目撃することになるだろう。
MicrosoftやAmazon Web Services(AWS)、Salesforceなどは、それぞれ独自のエージェント型AIのツールを打ち出した。AdobeやQualtrics、Oracle、OpenAI、Deloitteといった企業も同様の動きを見せている。
だが現状を見ると、AIによる補佐機能としてコパイロットが実際にどういうものか、まだ評価すら始められていない企業も少なくない。その一方で、関心の中心はすでに自律性の高いエージェント型AIへと移行してしまっている。この流れを見る限り、エージェント型AIもまた、新たな技術やキーワードの登場とともに、すぐに“過去のもの”になる可能性は十分にある。
「いずれも一時の流行で、賞味期限がある」と語るのは、調査会社Forrester Researchのアナリスト、ブランドン・パーセル氏だ。同氏は「AIという概念は常に変化している」とした上で、次のように語る。「次に何が来るのかを正確に言うことはできないが、エージェント型AIは少なくとも今後1年以上は最先端の位置にとどまる可能性がある。この技術には『自動化』が深く関わっており、業務効率化が進むことに加え、売上高の増加を企業にもたらす可能性も秘めているからだ」
Adobeで顧客体験管理ツール「Adobe Experience Platform」のプロダクトマーケティング担当シニアディレクターを務めるクラスジャン・タッカー氏は、「現在“エージェント型AI”と呼ばれている技術は定着する」との考えを示す。「最終的には、エージェント型AIは当たり前のようにバックグラウンドで動作するようになり、ユーザーが意識的に考えたり語ったりすることはなくなる」。それは、スマートフォンで地図アプリを使う人が、A地点からB地点までの経路を検索するとき、その裏で動作する複雑な仕組みや技術について考えることがないのと同じだという。
とはいえ現時点では、「エージェント型AI」が具体的に何を指すのかについてさえ、ベンダー間で見解が一致しているわけではない。明確な共通定義は存在しないのが実情だ。
「正直なところ、今の時点で『エージェント型』という言葉の意味を本当に理解している人がどれほどいるのか、私自身も自信がない。実際には、この言葉があまりに多様な意味で使われ、乱用されているからだ」。そう語るのは、MarTechの創設者で、現在はHubSpotでプラットフォームエコシステム担当バイスプレジデントを務めるスコット・ブリンカー氏だ。
ブリンカー氏は続けて次のように述べる。「エージェント型AIの技術の根底にあるのは、AIによる自動化という“魔法”をワークフローなどのプロセスに組み込めるという発想だ。つまり、もはや従来型のワークフローは存在せず、全てがエージェント型のワークフローに置き換わっていくということになる」
実質的な中身が何であれ、エージェント型AIが今後も生きながらえるには相互運用性が必要となる。自律的な作業のためには、エージェント同士が「会話」をして、お互いのデータレポジトリを利用できる必要がある。
PwCのパートナーで、Global Adobe Allianceのリーダーを務めるフィル・レグノー氏は、多くの場合、エージェントを機能させるにはベンダーごとのサイロの外側にあるデータが必要になるはずだと指摘する。エージェント間のデータのやりとりの標準化は、エージェント型AIを普及させる力になる。「エージェント型AIが機能するためには、データ、インテリジェンス、アプリケーション、いずれのレイヤーであれ、相互運用性が重要になる」
以上を踏まえると、エージェント型AIはまだ初期段階にあり、「自律型テクノロジー」の別名と考えてもよさそうだ。とはいえ現在の流れが続くと、2026年の今ごろには、別の新たなテクノロジーについて語っているはずだ。しかし心配することはない。企業はエージェント型AIへの評価と投資を進めており、この技術はおそらく永遠になくならない。ただし、呼び方は変わる可能性がある。
では、生成AIの次なる進展はどのように呼ばれることになるのか。例えば「オートbot」(Autobot)は響きがいいし、「シンギュラリトロン」(Singularitron)もなかなか悪くない。ただ残念ながら、どちらもすでに別の製品で使われている。
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