「AIエージェント」は「RPA」とは何が違い、どう使われるのか?AIエージェントの活用が本格始動【前編】

2025年は、AIエージェントの開発や導入がいよいよ本格化すると見込まれる。具体的にどの領域で活用が進むのか。RPAとの違いにも触れながら、AIエージェントがこれからどのように使われていくのかを探る。

2025年04月23日 05時00分 公開
[Esther ShittuTechTarget]

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 2024年後半以降、「AIエージェント」(AI:人工知能)への関心が急速に高まった。AIベンダー各社は、大規模言語モデル(LLM)やAIチャットbotの開発からAIエージェントの構築へと軸足を移しつつあり、2025年は企業で本格導入が進む「実用化元年」になると期待されている。

 AIエージェントは業務の課題をどう解消し、どういった領域での活用が見込まれているのか。自動化の手段として使われてきたRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)との違いにも触れながら、AIエージェントがこれからどのように使われていく可能性があるのかを探る。

「AIエージェント」導入はどこから進む? 静観が招くリスクとは

 さまざまなベンダーが、業務プロセスの自動化を目的にするAIエージェントの開発を加速させている。調査会社Forrester Researchによると、400社以上のベンダーがAIエージェントを開発している。

 AIエージェント構築ツールの提供も盛んだ。CRM(顧客関係管理)システムベンダーSalesforceは2024年秋、ローコード(最低限のソースコード記述)のAIエージェント構築ツール「Agentforce」を発表した。Microsoftも、開発者向けのAIエージェント構築支援コミュニティー「Azure AI Agents Service」を立ち上げている。

 「AIエージェントと従来の自動化やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は混同されがちだが、2025年にはこうした混乱が解消に向かい、現場への本格導入が進んでいくだろう」。こう話すのは、AI駆動型の提案依頼書(RFP)ソフトウェアベンダーResponsiveの共同創設者兼CIO(最高情報責任者)AJ・サンダー氏だ。

 RPAは、AI技術を使用せずにソフトウェアロボットやbotを用いて定型業務を自動化するルールベースの自動化だ。対するAIエージェントは、LLMなどのAI技術を用いて、状況に応じた判断や柔軟な対応が可能な非決定論的なシステムだ。

 Forrester Researchでバイスプレジデント兼主席アナリストを務めるクレイグ・ル・クレア氏は、「RPAとAIエージェントは“デジタルの同僚”という点では共通している」と話す。そこにAIが加わることで、より文脈を理解し、臨機応変に対応できる“賢い同僚”へと進化する。それがAIエージェントだ。

AIエージェントはどの領域で活用が進むのか?

 実際にAIエージェントは、カスタマーサポートの他、財務管理や不正検知などの分野でも導入が進んでいる。「記憶や計画、複雑なマルチステップ処理が必要な領域で、AIエージェントが大きな役割を果たすことになるだろう」とサンダー氏は話す。

 中でも注目されるAIエージェントの応用例が、動画制作だ。例えばAIエージェントは、視聴者の関心を引き付けるストーリー展開や、購買意欲を刺激する行動喚起(CTA)を盛り込んだ動画コンテンツの構成を支援する。

 AI技術を活用した動画生成ツールを開発するColossyanのリサーチディレクターを務めるシャーザイブ・アスラム氏は、次のように話す。「ユーザーのエンゲージメントを高め、成果につながる動画を効率的に制作する上で、AIエージェントは極めて有用なツールとなるだろう」

 調査会社Gartnerでアナリストを務めるトム・コショウ氏は、「AIエージェントは、動画作成のような特定の用途にとどまらず、より広範な経営課題の解決にも貢献するだろう」と述べる。

 中でも同氏が注目するのが、「企業におけるスケーラビリティ(拡張性)の課題解消」だ。企業が直面するスケーラビリティの課題には主に2つある。一つは、人手不足で業務がうまく回らないケース。もう一つは、優秀な人材によって生み出された成果を、より大規模に展開できないケースだ。「まさにこの両方の課題に対処できるのがAIエージェントだ」(コショウ氏)

 一方、AIエージェントの活用にはさまざまなレベルがある。ビジネスプロセスマネジメント(BPM)ソフトウェアベンダーPegasystemsのAI Labディレクター兼リードサイエンティストを務めるピーター・ファン・デル・プッテン氏は次のように話す。「AIエージェントには、情報を取得、統合、要約し、一定の結論を導き出す“支援的”な段階と、その情報に基づき自律的に行動を起こす“実行型”の段階がある」

 プッテン氏は、「AIエージェントの真価は知能の高さそのものではなく、それを組織の中でどう活用するかに懸かっている」と強調する。企業がAIエージェントの価値を実感するには、実際に試してみる必要がある。「AIエージェントは時に驚くような成果を上げることもあるが、それを確かめる唯一の方法は、安全な環境で実験することだ」(プッテン氏)


 後編は、AIエージェント実装の最新動向を解説する。

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