生成AIの次のステップとして注目を集める「AIエージェント」だが、技術的な制約や市場の未成熟さといった課題も浮き彫りになっている。専門家はこの技術の展望についてどのような見解を示しているのか。
2025年3月、調査会社Gartnerは米国テキサス州でカンファレンス「Gartner Tech Growth & Innovation Conference」を開催した。「What is Agentic AI and How Will the Market Evolve and Grow?」(AIエージェントとは何か、市場はどのように進化し成長するのか)と題したセッションには、AI(人工知能)エージェントの活用を検討する企業のIT担当者が集まった。この技術の現在地と将来展望について、専門家はどのような見解を示したのか。
セッションを主導したGartnerのアナリスト、エリック・グッドネス氏は、AIエージェントについて「AI技術を活用して、情報を認識して意思決定を下し、実際の行動を起こすことで、デジタルおよび物理空間で目標を達成する自律的または半自律的なソフトウェア」と定義する。
AIエージェントの概念が注目を集めたのは2024年のことだ。ITベンダー各社はAIエージェントを「生成AI」の次のステップとして売り込み始め、企業はこのツールを自社に導入するために試行錯誤している。
一方、AIエージェントに関する話題が注目を集める中で、その明確な定義を求める企業の声は少なくない。「これは2000年代前半から中盤にかけてクラウド技術が登場し、バズワードとして飛び交っていた時期を思い出させる」とタガミ氏は話す。
ITサービスベンダーMonksのマーケティング&テクノロジーサービス販売担当シニアバイスプレジデントを務めるブライアン・タガミ氏は、「IT担当者は、AIエージェントの仕組みや活用方法の理解、投資すべきかどうかの判断基準、そして顧客との適切なコミュニケーション手法について、明確な指針を求めている」とカンファレンスで述べている。
AIチャットbot「ChatGPT」の開発元であるAIベンダーOpenAIは、2025年3月11日(現地時間)、企業向けAIエージェントを構築するための新しいAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)「Responses API」を発表した。OpenAIは、ユーザー企業がAIエージェントの開発に苦戦している状況を認識しており、Responses APIはその課題の解消を目的としている。同社は、AIエージェントの開発をさらに簡単かつ迅速に進めていけるよう、新たなツールや機能を順次提供していく計画だ。
グッドネス氏は「AIエージェントには計り知れない可能性がある」と述べ、AIエージェントベンダーのBeam AIやOrby AIが企業の複雑なタスクを自動化している事例をカンファレンスで紹介した。Gartnerでアナリストを務めるモリー・ビームズ氏は基調講演で、「企業におけるAIエージェントの導入が進むにつれて、より多くの業務をAIエージェントに委ね、最終的には自律的に運用されるようになる」と述べている。
一方でグッドネス氏は、AIエージェントが現在語られているビジョンに到達するには時間がかかると警告する。具体的には、AIエージェント同士の相互連携の難しさや、イノベーションがバラバラに進んでしまうといった課題が障壁となっている。「企業全体でAIエージェントを活用し、組織横断的な業務を管理・実行している事例はまだ少なく、実際のユースケースが不足している」(グッドネス氏)
このように技術的な課題があり、市場もまだ成熟していないものの、大手企業が技術革新を進めるにつれてAIエージェントは急速に普及する、というのがタガミ氏の予測だ。そのため、IT担当者はAIエージェントに対する投資の妥当性を確認しようとしている状況だ。「現状は、AIエージェントの活用方法や既存システムとの統合について、IT担当者が適切な判断を下すための指針が欠如しているのが現状だ」(タガミ氏)
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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