DNS、DHCP、IPAMを管理する「DDI」というネットワーク管理の考え方がある。まだ注目が集まっているとは言えないが、今後は欠かせない仕組みになる可能性がある。
ネットワーク内のデバイスを管理するには、単にIPアドレスを割り当てるだけでは不十分だ。クラウドサービスやIoT(モノのインターネット)の利用が増加傾向にある中で、企業のネットワークは複雑化している。そのネットワークと、ネットワーク内のデバイスを管理する仕組みが重要になってきた。
IPアドレスベースのネットワーク管理を合理化するためには、「DNS」(Domain Name System:ドメインネームシステム)、「DHCP」(Dynamic Host Configuration Protocol:動的ホスト構成プロトコル)、「IPAM」(IP Address Management:IPアドレス管理)といったネットワークのプロトコルやシステムが欠かせない。以上3つを総称した用語が「DDI」だ。
DDIのそれぞれの仕組みにはどのような役割があり、3つの要素を統合することがなぜ重要なのか。DDIの現状と共に説明する。
DDIを構成する3つの仕組みの役割は次の通り。
DDIツールはこれら3つの要素を集中的かつ自動的に管理するための機能を提供する。DDIは2019年に調査会社Gartnerが作った用語だ。熟知している企業はほとんどないと言えるだろう。ITコンサルティング企業Enterprise Management Associates(EMA)が333人のDDIの専門家を対象に調査したところ、DDI管理戦略において成功していると回答したのは回答者全体のわずか31%だった。
EMAのリサーチ担当バイスプレジデントのシャマス・マクギリカディ氏は次のように語る。「DDIは『ハイプサイクル』(成熟度や採用度で図る技術のライフサイクル)においてもまだ注目はされていないが、DDIが非常に重要になる明確な理由がある」
DDIは、ネットワークにクラウドコンピューティングの技術や考え方を盛り込んだ「クラウドネットワーキング」が普及するにつれて、より重要性を増している。ネットワーク運用は、企業のネットワークと複数のクラウドインフラ、それらを結ぶネットワークを一元的に管理・制御する「マルチクラウドネットワーキング」(MCN)の時代に突入している。DDIツールはMCNを目指す企業が必要とする、一元的な管理方法を提供する。
ネットワーク管理者の中には、自社デバイスのIPアドレスを管理する方法として、スプレッドシートやオープンソースのツールを好む人もいる。しかし、マクギリカディ氏は「そうした管理方法よりDDIツールによる管理の方が優れている」と指摘する。DDIツールのメリットは各項目を管理できるだけではない。ネットワークのレジリエンシー(障害や災害からの回復力)や生産性の向上、セキュリティの強化といったメリットがある。
ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの運用、ネットワークの自動化に取り組むのであれば、DDIツールを採用する理由があると言える。企業がクラウドネットワーキングを利用する場合、DDIの重要性を認識せざるを得ないだろう。
企業はさまざまな目的でDDIツールを活用できる。EMAの調査によると、企業がDDIツールに求める機能として上位に挙がったのは、「セキュリティ」や「スケーラビリティ」(拡張性)だった。その他、「マルチクラウドの運用」「ネットワークのレジリエンシー」「ネットワーク検出」(可視化)も重要な機能として挙がった。
後編はDDI管理ツールを実際に利用している企業がどのような使い方をしているかを解説する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
リモートワークやクラウドサービスが拡大する中、ネットワーク遅延の課題を抱える企業も少なくない。通信遅延は生産性にも影響するだけに契約帯域の見直しも考えられるが、適切な帯域を把握するためにも、帯域利用状況を分析したい。
在宅勤務でSIM通信を利用していたが、クラウドの通信量急増により、帯域が圧迫されWeb会議での音切れが発生したり、コストがかさんだりと、ネットワーク環境の課題を抱えていたシナネンホールディングス。これらの問題を解消した方法とは?
VPN(仮想プライベートネットワーク)は、セキュリティの観点から見ると、もはや「安全なツール」とは言い切れない。VPNが抱えるリスクと、その代替として注目されるリモートアクセス技術について解説する。
インターネットVPNサービスの市場規模は増加傾向にあるが、パフォーマンスやセキュリティなどの課題が顕在化している。VPNの利用状況などのデータを基にこれらの課題を考察し、次世代インターネットVPNサービスの利点と可能性を探る。
代表的なセキュリティツールとして活用されてきたファイアウォールとVPNだが、今では、サイバー攻撃の被害を拡大させる要因となってしまった。その4つの理由を解説するとともに、現状のセキュリティ課題を一掃する方法を解説する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。