ネットワークエンジニアは魅力的な仕事だが、求人動向から人気低下の兆しが見受けられる。ネットワーク業界は何をどう変えればいいのか。
ネットワークエンジニアリングはクールな仕事だが、近年の求人サイトの動向などを見ると、ネットワークエンジニアリングの人気が落ちている可能性がある。一部のネットワークエンジニアたちはこうした状況に危機感を持ち、自ら動画やSNSなどでコンテンツを発信している。
ネットワークエンジニアリングはなぜ人気が落ちているのか。どのように変わらなければいけないのか。
以下の取り組みは若年層を取り込むのに重要であり、ネットワーク業界も取り組む必要がある。
「これらの取り組みにより、ネットワーク業界に新しい人材が加わり、熟練したプロから駆け出しのエンジニアに知見や技術を継承できる」とネットワークエンジニアのアレクシス・バーソルフ氏は語る。
業界外へのリーチという点では、まだまだ改善が必要だ。IT技術支援ベンダーTechSalesCraftの創設者でCTO(最高技術責任者)のスコット・ロボフン氏は、新卒採用に固執するのではなく、大卒未満の学生、転職希望者、退役軍人などから人材を探すことを企業に勧める。
「莫大(ばくだい)な額の奨学金の借金を抱えている学生もいる。必ずしも大学に行くことがベストではないということだ」とロボフン氏は語る。「大学の学位なしでもネットワークエンジニアになれる」。企業からすると資格は分かりやすいが、資格ではなく、知識を追求する姿勢や熱意の方が重要だ。
さらに、「いるはずもない、ネットワークエンジニアリングを熟知した完璧な人材を求める理不尽な募集要項ではなく、応募者の気持ちを考えるべきだ」と航空宇宙企業Blue Originのネットワークエンジニアであるレキシー・クーパー氏は語る。「求める基準が高過ぎると、ほとんどの人々はおじけづいて応募しない」
ナイジェリアを拠点とするネットワークエンジニアのエマニュエル・モルディ氏もこれに同意する。「企業は入社したての人材をサポートし、OJT(実地訓練)を奨励すべきだ」(モルディ氏)。「ネットワークエンジニアはしばしば特定の認証資格の必要性を感じるので、従業員の資格取得のサポートが望ましい」
「CCNA、さらに『Cisco Certified Network Professional』と『Cisco Certified Internetwork Expert』などの資格試験をパスし、経験を積まなければならないと、ネットワークエンジニアの大多数が思っている」とモルディ氏は語る。「この分野に進みたい人にとって、険しい道だ」
ベンダー、プロバイダー、IT企業にも、ネットワークエンジニアを志す人材をサポートし、手を差し伸べる責任があるとバーソルフ氏は語る。こういった企業は、ネットワーク業界のスキルギャップと人材不足に対処することで利益を得ているのだから、当然の責任だ。ワークショップを開催したり、インターンを受け入れたり、メンターシッププログラムを運営したり、ネットワークエンジニアリング関連の活動に寄付したりすべきだ。
しかし、こういったアプローチよりも、ネットワークエンジニアリング業界のベンダーや大企業は依然として自分の殻に閉じこもり、ビジネス目標だけに夢中なように見えるとクーパー氏は語る。
「寛大になってほしい。高価な機器を持っていない、恵まれないコミュニティーにもっとアプローチしてほしい。全ての若い人にネットワークエンジニアリングについて伝えてほしい」とクーパー氏は語る。
ネットワークエンジニアリングは死にかけているのだろうか。他のIT技術やIT産業が成長する中で時代遅れになりつつある技術なのだろうか。
これらの問い掛けは大げさではあるが、実際に多くの人々が検索し、記事に取り上げられ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で議論されている(図1)。
図1 掲示板型ソーシャルニュースサイト「Reddit」で議論されている(画像は筆者が取得した英語版)
もしあなたがネットワークエンジニアリングを理解しているなら動画配信サービス「Netflix」であれ、AI(人工知能)チャットbot「ChatGPT」であれ、レストランチェーンであれ、世界のほとんどがネットワークで機能していることを知っているはずだ。ネットワークが存在しなければ、私たちの今の生活は全く違ったものになる。
「面白いことに、ネットワークの普及により、ネットワークエンジニアがIT企業やネットワークベンダーで働く必要がなくなった」とネットワークエンジニアのアレクシス・バーソルフ氏は語る。代わりに、スポーツ、アート、音楽、食肉業界など、どこでも好きな業界で自分の可能性を追求できる。
「ネットワークエンジニアは特別だ。どこに行ってもネットワークがあるからだ」とバーソルフ氏は語る。「石油、ガス、航空宇宙、『Butterball』(米国の七面鳥ブランド)など、どの業界に進んでもいい。どの企業もネットワークエンジニアを必要としている」(バーソルフ氏)
小さい頃からネットワークエンジニアになりたかった人も、キャリアの途中で転向した人も、クーパー氏、モルディ氏、ロボフン氏と同じく、ネットワークエンジニアリングが本質的に備える、ロジカルな性質や問題解決の道筋がある点に魅力を感じている。
ロボフン氏は、ネットワークエンジニアリングの「シンプルで、オタクっぽい」プロセスやフローが魅力だと語る。モルディ氏は、ネットワークエンジニアリングの「必ず正解があり、人助けになる」点が良いと語る。「世界のさまざまな事象は原因も解決法も常に明確ではないが、ネットワークエンジニアリングははっきりしている」とクーパー氏は述べる。
「ネットワークエンジニアリングを学べば、宇宙の真理を解き明かしたような気持ちになれる」(クーパー氏)
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