駆け出しネットワークエンジニアが学ぶべき「ネットワークの基礎」とはネットワークの基礎と資格【中編】

ネットワーク機器の基本的な知識は、全てのITエンジニアにとって必須だ。ネットワークの基礎を学ぶのに適したCisco Systemsの認定資格「CCST Networking」の公式ガイドを書いた著者に、ネットワークの基礎を聞いた。

2025年01月06日 07時00分 公開
[Deanna DarahTechTarget]

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 ネットワークが専門でなくとも、IT担当者はネットワークおよびネットワーク機器の基礎知識を学ぶ必要がある。

 ネットワーク機器ベンダーCisco Systemsはエントリーレベルの認定資格「CCST Networking」(Cisco Certified Support Technician Networking)を2023年から提供している。CCST Networkingの公式ガイドブック『Cisco Certified Support Technician CCST Networking 100-150 Official Cert Guide』の著者であるラス・ホワイト氏に、ネットワークのベストプラクティスと、CCST Networkingの重要な知識を聞いた。

ネットワーク初心者が学ぶべきネットワークの基本

―― 公式ガイドブックの第10章で「ネットワークの設計時に、物理的、論理的なレイアウトについて、多くの検討事項がある」と書かれていますね。何を検討するのでしょうか。

ホワイト氏 ネットワークの設計では複数の事項を考慮する必要がある。例えば「回路グルーミング」(注)だ。

※注:トラフィックグルーミング、ネットワークグルーミングとも。複数の回線を集約して1つの回線として扱い、帯域幅を効率的に使用する手法。

 他にも、データセンター内において、サーバに接続するスイッチをどこに設置するか、そしてケーブルをどのように配線するかといった点が挙げられる。サーバラックの一番上にスイッチを設置するか、それとも下部に設置するかによって、ケーブルの長さや管理のしやすさが変わってくる。複数のサーバラックに対して、スイッチをまとめて設置するラックを配置するかどうかも検討すべきだ

―― ネットワーク構成図は必要でしょうか。ネットワークエンジニアが、構成図なしでネットワークを構築した場合、どのようなことが起こる可能性があるのですか。

ホワイト氏 例えば、ルーターが故障したらどうなるか。どのようにNAT(ネットワークアドレス変換)するのか。トラフィックはどこに再ルーティングされるのか。構成図がなければ何も分からない。何が起こっているのかも分からない。構成図には他にもさまざまな利点がある。例えば、論理ネットワークの構成図から物理的なハードウェアのレイアウトを把握することも可能であり、ネットワーク全体の管理性を向上できる。

―― ネットワーク機器の選定と管理方法について、どのようなアドバイスやベストプラクティスがありますか。

ホワイト氏 最も重要なことは、ネットワーク機器を簡単に交換できるようにしておくことだ。優れた機能を持つからといって、別の機器に交換できないのであれば、特別な事情がない限り、ネットワークに組み込んではいけない。常に「5年後にはどうなっているか」と考えてほしい。ハードウェアに関しては、将来を見据えることが重要だ。ハードウェアはモジュール化され、交換可能であるべきだ。ベンダーの名前よりも重要なことだ。

―― ネットワーク機器ベンダーCisco Systemsが提供するエントリーレベルの認定資格CCST Networkingの取得希望者の多くは、ネットワーク機器について何を理解するのが最も難しいと感じていますか。

ホワイト氏 ほとんどの人は、コネクター関係を除けばハードウェアはそれほど複雑ではない、と感じている。難しいのは、ハードウェアからソフトウェアへの移行に伴う「抽象化」という概念だ。ハードウェアの複雑な仕組みを、ソフトウェアで扱いやすいように単純化して表現することを抽象化と表現する。

 ネットワークの場合は、物理的なネットワークの構成を抽象化することで、論理ネットワークを表現する。物理ネットワークも論理ネットワークも、物理的なハードウェアの中を流れる通信だが、同じものではないということを理解する必要がある。抽象化のレベルにも複数の層があり、これを理解するのが本当に難しい。

―― ネットワークが仮想化されるようになり、ソフトウェア定義型アーキテクチャへの移行が進んでいますが、なぜネットワーク機器は重要なのでしょうか。

ホワイト氏 仮想化したネットワークであろうとソフトウェア定義型のネットワークであろうと、結局はどこかで物理的に実行しなければならない。加えて、仮想化やソフトウェア定義を可能とする機能を持つハードウェアが必要だ。前述の通り、ハードウェアは交換可能であることが望ましいが、特定の技術を利用できるハードウェアが必要なことは覚えておく必要がある。

 例えば、私の現在の職場ではトンネリングプロトコル「GRE」(Generic Routing Encapsulation)を使ったVPN(仮想プライベートネットワーク)をよく使用している。だが、ほとんどのルーターはGREトンネルを使えなくなっているので、現在はGREを徐々に廃止し、別の方法を探している。

 「当社の使っているルーターはGREに準拠していない。別の方法を使ってほしい」と顧客に言われるので、ネットワークアーキテクチャ、少なくとも使用するテクノロジーについて検討し直す必要がある。このようにハードウェアが違いを生む。

 工場でも同じ状況が見られる。今でも、電話線しかない工場は珍しくない。Cat5(カテゴリー5)やCat6(カテゴリー6)に準拠したLANケーブルは使えない。広大な工場で、LANケーブルを配線し直すのは不可能だ。それには何百万ドルも掛かるかもしれない。このようにハードウェアが本当に重要だ。ネットワーク構成は物理的な制約から逃れられないからだ。


 後編はホワイト氏へのインタビューを基に、どのような人がCCST Networkingを取得すべきなのかを紹介する。

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