無線LAN(Wi-Fi)の新規格「IEEE 802.11be」(Wi-Fi 7)の機器が市場に出回り始めた。Wi-Fi 7は何が優れているのか。ネットワーク機器ベンダーのシスコシステムズが語る必要性とは。
無線LAN規格「IEEE 802.11be」(Wi-Fi Allianceの認証規格では「Wi-Fi 7」)は日本市場では2023年から利用可能になり、2025年4月現在の法人市場にはWi-Fi 7に準拠する製品も増えてきた。法人向けの国内Wi-Fi 7市場はどのような状況なのか。エントリーモデルのアクセスポイント(AP)などWi-Fi 7関連製品をリリースしたCisco Systemsの日本法人シスコシステムズに聞いた。
働き方改革の一環として従業員の在宅勤務やテレワークが一般化したことなどを背景に、オフィスの規模を縮小するなどの理由で新たな物件に引っ越す企業は珍しくない。そのタイミングで社内のネットワークインフラを最新規格の無線LANに移行するという話もよく聞くようになった。
前世代に当たる「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)は2019年のリリース、Wi-Fi 6の使用周波数帯に6GHz帯を追加した「Wi-Fi 6E」は2020年にリリースされている。そのため、企業の導入タイミングによっては、そろそろWi-Fi 6/6E機器の更新タイミングを迎える企業も出てきている。
国内のWi-Fi 7の状況について、シスコシステムズの高橋 敦氏(執行役員 ネットワーキング事業担当)は、「半年くらい前にはWi-Fi 7に準拠した端末が揃っていないという話もあったが、今はそうした議論はほぼなくなっており、無線ネットワークを刷新するのであればWi-Fi 7を検討しない理由がない状況になっている」と語った。
さらに同氏は、無線LANをアップデートするために「給電方式の見直し、アップリンクの設計、帯域設計などが必要になるため、アクセススイッチ、アグリゲーションスイッチ、コアスイッチ、WANルーターなど、ネットワークインフラ全てのモダナイゼーションが必要になる」と述べた。その上で、「シスコシステムズはWi-Fi 7を出発点として、お客さまのネットワーク全体のモダナイゼーションを支援していきたい」と語った。
シスコシステムズはWi-Fi 7に準拠しているAPのエントリーモデルとして「Cisco Wireless 9172シリーズ」を発表している。
Cisco Wireless 9172シリーズは2.4GHz、5GHz、6GHzの3つの周波数帯を利用できる。有線側インタフェースは2.5Gbps Ethernetだ。天井取付け型の「CW9172I」と壁面取付け型の「CW9172H」の2種類の筐体(きょうたい)デザインを用意している。
この他にも、シスコシステムズは無線LANの運用管理を支援するツールとして以下を紹介した。
Cisco SystemsのD マシュー・ランドリー氏(バイスプレジデント ワイヤレス&ネットワークアシュアランス プロダクトマネジメント担当)は「なぜWi-Fi 7なのか」という疑問に対して、特に信頼性の高さがポイントだと語った。同氏はWi-Fi 7で導入された新技術として「マルチリンクオペレーション」(MLO)と「プリアンブルパンクチャリング」(Preamble Puncturing)を挙げた。
従来の無線LANデバイスは通信時に、利用できる周波数帯が複数ある中から、どれかを選んで使用していた。それに対しMLOは2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯の3つの周波数帯全てを1つの通信で同時に使用できるという技術だ。これにより帯域幅を拡大して通信速度を向上させることができるが、どこかの周波数帯で混信や電波障害が発生した場合でも他の周波数帯を利用して通信を継続できることから、高信頼性を確保する上でも役立っている。「MLOはネットワークの遅延を劇的に軽減し、パケットの衝突を抑制することにも役立つ」とランドリー氏は語った。
プリアンブルパンクチャリングは、使用しているチャネルの一部に穴を開けるイメージだ。従来は使用中のチャネル(データ送受信用の周波数帯)の一部に混信などが生じるとチャネル全体が使用できなくなっていたが、プリアンブルパンクチャリングでは混信が生じたチャネルの一部を切り離し、残りの部分だけを使って通信を継続できる。Wi-Fi 7では帯域幅を拡大するため、6GHz帯ではWi-Fi 6Eでの160MHz幅のチャネルを320MHz幅に拡大しているが、同時にノイズが乗ってきた場合の被害も拡大してしまう可能性があるため、プリアンブルパンクチャリングによって被害軽減を図ったものだ。
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