「IEEE 802.11be」(Wi-Fi 7)の標準化はまだ完了していないが、既に無線LAN機器ベンダーは、ドラフトを基にしたWi-Fi 7製品を提供している。Wi-Fi 7ではどのような機能が利用できるのか。
標準化団体IEEE(米電気電子技術者協会)は、無線LAN規格「IEEE 802.11be」(Wi-Fi Allianceの認証規格では「Wi-Fi 7」)の標準化を、2024年12月に完了する計画だ。ただし、Wi-Fi 7に準拠した無線LANアクセスポイント(AP)やクライアントデバイスは既に市場に出回っている。標準化が完了する前に、Wi-Fi 7の仕様の主要な部分が決定されたドラフトを基に、ベンダーが製品の開発を開始しているからだ。
Wi-Fi 7には、「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)と比較してさまざまな機能が追加されている。Wi-Fi 7でどのような進化が起きたのかを見ていこう。
米TechTarget傘下の調査会社ESG(Enterprise Strategy Group)のプリンシパルネットワーキングアナリストであるジム・フレイ氏は「Wi-Fi 7はまだ正式に標準化されていないものの、Wi-Fi 7に準拠したデバイスが既に市場に出回っている」と語る。
Wi-Fi 7は、以前までのWi-Fiと比較して、さまざまな点で機能が向上している。フレイ氏によると、主な機能には以下のようなものがある。
フレイ氏によれば、Wi-Fi 7はこれらの機能を搭載することで、過去のWi-Fiと比較して「広帯域」「低遅延」「高信頼」といった特徴を持つ。Wi-Fi 7の主な企業向けユースケースを見ていこう。
Wi-Fi 7では、MLOの一部として、複数の周波数帯およびチャネルを束ねる「リンクアグリゲーション」機能を利用できる。これにより通信速度の向上と遅延の削減が期待できる。
「広い帯域幅が必要なアプリケーションは、企業がWi-Fi 7を導入する動機となる」とフレイ氏は語る。広い帯域幅を利用できるアプリケーション例は以下の通りだ。
Wi-Fi 7の新機能であるMLOやプリアンブルパンクチャリングは、通信の安定性を向上させる。通信障害や干渉が発生した場合でも、無線LAN接続を維持できる可能性が高くなる。
「Wi-Fi 6までの規格よりも、Wi-Fi 7は通信量の急増による影響を受けにくい」とフレイ氏は語る。その上で「Wi-Fi 7はレジリエンシー(障害や災害からの回復力)に優れ、信頼できる接続を提供する」と述べた。
フレイ氏が特に魅力に感じているWi-Fi 7のユースケースが、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)だ。ユーザーはARとVRで、現実世界と仮想世界が融合したり、仮想世界に入り込んだりといった、没入感のある体験ができる。主にゲームやエンターテインメント用途で活躍している技術だが、それ以外の業界でもカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上などに活用する企業もある。
従来の無線LAN技術では、「ARとVRに必要な通信速度と通信容量を実現できないことが多かった」とフレイ氏は語る。ARとVRを利用するために有線接続を利用していた企業も、Wi-Fi 7を使えばARとVRのアプリケーションをリアルタイムで利用できるようになる可能性がある。
「Wi-Fi 7はARとVRに必要な冗長性、信頼性、処理速度を備えている」とフレイ氏は語る
次回はWi-Fi 7の採用が広がらない理由を解説する。
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