Microsoftは「SharePoint Server 2019」のサポートを2026年7月に終了する。サポート終了後もSharePoint Server 2019を使い続けると、どのようなリスクがあるのか。
Microsoftは社内ポータルサイト構築ツール「Microsoft SharePoint」のオンプレミス版「SharePoint Server 2019」のサポートを順次終了する。すでに2024年1月にメインストリームサポート(新バージョン発売後の初期サポート)は終了しており、2026年7月には延長サポートも終了する。SharePoint Server 2019をサポート終了後も使用し続けると、どのようなリスクが生まれるのか。
Micosoftがセキュリティ更新プログラムを提供しなくなるので、サイバー攻撃に対してより脆弱(ぜいじゃく)になる。これはデータの破壊、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)への感染、自社や顧客、パートナー企業、従業員のデータの漏えいにつながる恐れがある。攻撃者が、パッチ(修正プログラム)未配布の脆弱性を悪用する可能性もある。
重要かつ不可欠な修正プログラムとセキュリティ更新プログラムのみを提供する延長サポート期間中であれば、Microsoftは重要性の高いセキュリティ上の問題には対処する方針だ。ただしSharePoint Server 2019ユーザーが減少するにつれて、ユーザーコミュニティー主導で脆弱性を発見することは難しくなる。そのため、Microsoftの対処が遅れることが懸念点だ。
規制が厳しい分野のユーザー企業は、サポートが終了したソフトウェアを使用した場合、コンプライアンス(法令順守)違反に該当する恐れがある。コンプライアンス違反は罰金、自社の信用失墜、収益の低下につながる。例えば規制の基準に準拠していないツールを使用した企業は、国際標準化機構(ISO)の規格に適合していることを証明する「ISO」などの認証を失う可能性がある。そうすると現在の契約、将来の新規契約締結に悪影響が及ぶ。
サポート終了から時間が経過するにつれ、新技術や新製品との連携が難しくなり、機能性が低下する可能性がある。テキストや画像を自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)のような新技術を活用したシステムとの間で互換性の問題が発生し、その問題に対処するために無駄な労力を消費した結果、生産性の低下を招く事態も考えられる。
SharePoint Server 2019を継続して使用するためにはコストや労力が必要だ。これまでMicrosoftが対処していた問題に対し、自社のIT担当者が構成管理、パッチ適用などを実施し、対処しなければならなくなる恐れがある。このような自前の回避策やパッチ適用は、運用コストの増加につながりかねない。
SharePoint Server 2019を使用している企業は、上述したリスクを把握し、別のツールへの移行を計画する必要がある。移行先の例は、サブスクリプション型の「SharePoint Server Subscription Edition」やクラウドサービス型の「Microsoft SharePoint Online」などだ。サポート終了を機に、自社の要件にMicrosoft SharePointが適合しているかどうかを再考し、競合製品を検討する手もある。
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