SSDはもはや“ストレージ市場の主役”と言っていい存在だ。容量増大をはじめとして今後の進化にも期待が集まる。そうしたSSDの状況は、キオクシアなしに語ることはできない。それはなぜなのか。
「SSD」はPC内臓ストレージとして主流になっただけではなく、データセンターにおいてもHDDに並ぶ欠かせないストレージになった。今後のストレージの容量増大に関しても、SSDはけん引する存在だ。そうしたストレージ市場の現状も今後も、あるベンダーの存在なしには語れない。それがキオクシアだ。なぜキオクシアはSSDの歴史や今後の進化においてそれほど重要なのか。
調査会社Objective Analysisでゼネラルディレクター兼半導体アナリストを務めるジム・ハンディ氏は、ストレージ業界における一連の発明においてキオクシアの存在は際立っていると指摘する。キオクシアはまだ東芝の一部だったときに、NOR型フラッシュメモリとNAND型フラッシュメモリを発明した。
フラッシュメモリを構成する要素に金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)がある。これはベル研究所(Bell Laboratories)が1959年に発明したものだ。これを利用したフラッシュメモリの仕組みができたのは、1980年代のことだ。1984年に当時の東芝(2017年に東芝のフラッシュメモリ事業を分社化してキオクシアが誕生)がNOR型フラッシュメモリを発明し、その後1987年にNAND型フラッシュメモリを発明した。NAND型フラッシュメモリは一般的にSSDの記録媒体として使われている。
NOR型はNAND型よりデータの読み出し速度は速かったが、製造コストが高くなる課題があった。NAND型はランダムアクセス(対象となる不連続のデータに直接アクセスする方式)が低速で耐久性が劣る課題があったが、データの記録密度がNOR型よりも高くなる利点があった。NOR型もNAND型も、初期はコスト効率よくスケーリングすることに課題があった。
2007年、キオクシアはNAND型フラッシュメモリのメモリセル(記憶素子)を積層することで同じ面積での記録密度を高める3次元NAND型フラッシュメモリ「Bit Cost Scalable Flash」(BiCS Flash)を発表した。そのBiCS Flashは2024年現在で第8世代が登場しており、積層数は218層となっている。
他のSSDベンダーも積層技術を手掛けるようになったことを前提にして、もともと積層技術を発明したのはキオクシアだった点をハンディ氏は評価する。キオクシア以外のベンダーとしては、例えばSamsung Electronicsが「V-NAND」と呼ぶ垂直構造の3次元NAND型フラッシュメモリを提供している。
SSDの記録密度に大きく貢献している技術は3次元化の他にもある。1つのメモリセル(記憶素子)に複数bitを配置する「多値化」の技術はその一つだ。キオクシアはこの多値化の技術進化において貢献してきた。1つのメモリセルに3bitを格納するTLC(トリプルレベルセル)や、1つのメモリセルに4bitを格納するクアッドレベルセル(QLC)などのNAND型フラッシュメモリが使われるようになっている。
米カリフォルニア州サンタクララで2024年8月に開催されたカンファレンス「FMS: the Future of Memory and Storage」で、キオクシアは「FMS Lifetime Achievement Award」(FMS生涯功労賞)を受賞した。3次元NAND型フラッシュメモリを開発し、メモリセルを積層することによって記憶密度を高める仕組みを実現した功績が称えられた。
その他キオクシアは、2024年内に東京証券取引所に新規株式公開(IPO)を申請する計画があると報じられている。2025年秋には、岩手県北上市の北上工場の新製造棟が稼働開始する計画だ。
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