「IPv6」への移行が必要なのはなぜ? 「IPv4」は何が駄目なのか?IPv6への移行の基本【前編】

インターネットにおける通信で使われる「IPv6」は、「IPv4」の複数の課題を解消するプロトコルだ。どのような点が改善されるのか。移行する前にその基本を覚えておこう。

2025年04月01日 08時00分 公開
[Damon GarnTechTarget]

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IPv6 | ネットワーク


 IP(インターネットプロトコル)のバージョン「IPv4」は数十年にわたり、インターネットの標準プロトコルとして使用されてきた。IPv4によってさまざまなクラウドサービスやWebサービスが実現してきた。しかし、IPv4は複数の課題を抱えている。その課題と、次世代バージョンの「IPv6」によっていかに課題を解決できるのかを解説する。

IPv4は何が問題なのか?

 IPv4には、以下のような課題がある。

  • 利用可能なアドレス数が約43億に制限される
  • 暗号化機能の欠如
  • 不十分なルーティング機能

 IPv4のこうした課題を解決するのがIPv6だ。IPv6は以下の特徴を持つ。

  • より多くのアドレス空間
  • ネットワークセキュリティプロトコル「IPsec」を標準搭載していることによる暗号化
  • ヘッダーのシンプル化などによる効率的なルーティング

 以下の表は、IPv4とIPv6の基本的な機能比較を示している。

特徴 IPv4 IPv6
アドレス長 32bit 128 bit
アドレス数 約43億 約340×10の36乗
表記方法 ドット付き10進数 16進数
ブロードキャストアドレス 利用可能 マルチキャストに置き換え
暗号化 デフォルトではなし IPsecに組み込まれている
構成 静的または動的 「DHCP」
(Dynamic Host Configuration Protocol)など
自動設定またはDHCPv6

IPアドレスのフォーマット

 IPv4アドレスは32 bit長で、4つのオクテット(8bitの集合)に分かれている。各数値は0から255の範囲で「192.0.2.0」のように表記する。IPv6アドレスは128 bit長であり、0から9とAからFまでの16個の文字を使った16進数を使用して「2001:DB8::1:1:1」のように表す。

 IPアドレスでは、ネットワークを識別するための「ネットワーク部」と、ネットワーク内のどのクライアントかを識別するための「ホスト部」を区別する。

 IPv4アドレスでは、全てのIPアドレスを固定されたクラスに分ける「クラスフルアドレス」方式でアドレスを割り当てる。クラスフルアドレスはIPアドレスを用途に応じてクラスA、クラスBなどに分類して、ネットワーク部も固定する。

 これに対して、IPv6アドレスは、必要に応じてネットワーク部を定義できる「クラスレスアドレス」を採用し、表記方法に「Classless Inter-Domain Routing」(CIDR)を使用する。CIDRはネットワークアドレスとサブネットマスクを示し、ネットワーク部分とホストアドレスを表すビット数を指定する。

名前解決とIPv6

 名前解決は、機械向けに数字などで構成されるIPアドレスを、人間が読める名前に変換するプロセスだ。IPv6は、IPv4よりも桁数が多く、人間にはさらに覚えにくいため名前解決の重要性は高い。幸いなことに、名前解決の仕組みである「DNS」(Domain Name System)を利用した、主要なDNSサーバの大半はIPv6のリクエストを標準で処理できる(図1)。

画像 図1 DNSによる名前解決のサンプル画像(画像は筆者が取得した英語版)


 次回はIPv6を実際に運用するためのコマンドや、移行時の注意点を解説する。

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