SEO“だけ”ではもう勝てない? Google検索の「AI Overviews」対策を考えるGoogle検索の進化に注目【後編】

Google検索にAI機能「AI Overviews」が新しく組み込まれた。企業がコンテンツマーケティングを考える上で押さえておくべきポイントとは。

2025年06月13日 07時00分 公開

 2024年5月、Googleの検索エンジン「Google検索」にAI(人工知能)機能「AI Overviews」(AIによる概要)が搭載された。企業のコンテンツマーケティング(情報発信を通じて見込み客との信頼関係を築き、購買活動を促す手法)にどのような変化をもたらすのか。AI Overviewsの利点と課題を踏まえて、企業がこの新機能を賢く活用するためのポイントを解説する。

SEOだけでは足りない、Google検索「AI Overviews」対策を考える

 AI Overviewsは、ユーザーが検索クエリを入力すると、Googleの大規模言語モデル(LLM)「Gemini」が要約を生成し、関連するWebコンテンツのリンクを提示するものだ。検索クエリに対して「AIによる回答が有用」とシステムが判断した場合に、検索結果ページ(SERP)の上部に表示される。

 AI Overviewsの基本的な特徴は以下の通り。

  • 視認性の高い表示
    • AI Overviewsは検索結果ページの上部に表示される。Google検索のナレッジパネル(トピックに関する概要を簡単に確認できる情報欄)と同様、ユーザーが複数のWebリンクを確認する必要なく、必要な情報に迅速にアクセスできる設計だ。
  • 複数のソースを基にした要約
    • GoogleのナレッジグラフやWebコンテンツを基に、AIモデルが検索結果を要約する。これにより、ユーザーは短時間でトピックの要点を把握することができる。
  • リンクカードによる誘導
    • AI Overviewsの表示にはリンクカードが含まれており、より詳細な情報が掲載されたWebページにユーザーを誘導する。リンクカードには、情報元となるWebサイトのタイトル、要約文、リンクが記載されており、ユーザーは出典に簡単にアクセスできる。
  • 多段階の推論による回答
    • AI Overviewsは、検索クエリに関連する情報を結び付けて推論することで、複雑な検索ニーズにも対応できる。例えば、「ヨセミテ国立公園近くの手頃な価格でペット同伴可能なホテル」というクエリに対しては、ペット料金、公園入口までの距離、設備情報などを含むホテルの一覧を表示する。
  • 計画立案やアイデア出し
    • 計画立案やアイデア出しにもAI Overviewsを活用できる。例えば、旅行を計画する場合、宿泊先や食事、アクティビティーを含んだ具体的な旅程を提案してくれる他、現地で注意すべきことといったアドバイスも表示する。

「AI Overviews」のメリットとデメリット

 AI Overviewsは、検索体験やユーザー体験(UX)の向上だけでなく、コンテンツマーケティングの観点でも有用なインサイト(洞察)をもたらす。具体的には、以下のようなメリットがある。

  • 関連情報への迅速なアクセス
    • 検索クエリに対してAIモデルが要点を簡潔にまとめて表示することで、ユーザーは複数のWebページを行き来せずとも、トピックの全体像を短時間で把握できるようにする。情報源にはGoogleナレッジグラフや関連するWebコンテンツが含まれ、さまざまな視点をバランスよく提示する。トピックについて深掘りしたいユーザーのために、関連するWebリンクも併せて提示される。
  • 企業コンテンツの可視性向上
    • AI Overviewsに自社コンテンツが掲載されれば、認知拡大やトラフィック増加が期待できる。検索意図に合致した良質な情報を提供するWebサイトは、AI Overviewsで取り上げられる可能性が高く、SEO(検索エンジン最適化)やブランド戦略においても優位に働く。
  • ナビゲーションの最適化
    • AI Overviewsは、文章中に挿入されたインラインリンクや、動画や音声などの要素を含んだリッチメディアを通じて、ユーザーが関心のある情報へスムーズに遷移できるよう設計されている。こうした仕組みは、回遊性の向上や深い関与を促進する点でも効果的だ。
  • 情報過多による負荷の軽減
    • 検索エンジン上には膨大な情報が存在するが、その中から重要なポイントを要約して提示することで、ユーザーが本当に必要としている情報に集中しやすくなる。結果として、情報探索に伴うストレスを軽減できる。
  • ユーザーエンゲージメントの強化
    • 必要な情報を迅速かつ明確に伝えることで、ユーザーの関心を引きやすくなる。要約を起点に関連するWebリンクへと誘導することで、より深いリサーチや行動喚起(商品購入や問い合わせなど)につながる可能性が高まる。

 このように、AI Overviewsは検索体験を大きく進化させる可能性を持つ。一方で、ユーザーや情報発信者にとって懸念点も存在する。

  • 不正確および偏った情報のリスク
    • AI Overviewsでは、AIモデルが学習データとアルゴリズムに基づいて要約を生成する。そのため、元データに偏りや誤情報が含まれていた場合、それがそのまま反映されてしまう可能性がある。GoogleがAIモデルの品質改善に努めているとはいえ、ユーザーが誤解を招く情報をうのみにしてしまうリスクはゼロではない。
  • Webサイトへのトラフィック減少
    • AI Overviewsは、検索結果ページ上で要点を簡潔に提示する構造になっている。そのため、ユーザーが元のWebページを訪れる動機が弱まり、クリック率や訪問者数の低下を招く可能性がある。これにより、特に広告収益や認知向上を重視するWebサイトにとっては、集客力の低下が懸念される。
  • 文脈や細やかなニュアンスの欠落
    • AI Overviewsでは、情報を簡潔に要約して伝えることを重視している。そのため、元の文脈や背景、微妙なニュアンスが削ぎ落とされてしまうことがある。特に複雑なテーマや多面的な議論では、要点だけでは不十分であり、誤解を生む可能性がある。
  • 競争の激化
    • AI Overviewsに掲載されるためには、検索意図に合致した高品質なコンテンツを継続的に提供する必要がある。この最適化競争が加速することで、資本力のある企業が有利になる一方、リソースの限られた中小規模の発信者にとっては参入障壁が高まる恐れがある。
  • 情報発信者によるコントロールの難しさ
    • AI Overviewsでは、AIモデルが複数の情報源を基に再構成して要約を生成するため、発信者が意図した通りに内容が伝わらない場合がある。背景説明が省略されたり、言葉のトーンが変わったりすることで、読者に誤解を与えるリスクがある。

企業がAI Overviewsを活用する方法の例

 Googleによると、AI Overviewsの主な目的は、ユーザーを有用なWebコンテンツへとスムーズに誘導し続けることにある。つまり、企業にとっては検索意図に合致した高品質なコンテンツの提供がますます重要になるということだ。

 AI OverviewsはGoogle検索エンジンと連携して動作しているため、基本的なSEO対策も引き続き不可欠となる。企業がAI Overviewsをどのように活用できるか、その具体例を示す。

  • スポンサー広告の活用
    • 2024年10月、GoogleはAI Overviewsにスポンサー広告を表示する新しい広告モデルを導入した。企業は、AIモデルが生成した要約の中に、自社製品やサービスの広告を組み込むことが可能となった。例えば、「革製ソファのクリーニング」と検索すると、クリーニングの手順に関するAI要約とともに、クリーニングキットなど関連商品の広告が表示される場合がある。
  • ショッピング体験の強化
    • AI Overviewsは、350億件以上の商品データを統合したAIシステム「Shopping Graph」と連携し、価格、レビュー、販売情報などをリアルタイムで反映する。例えば、「おすすめのキャンプ用テント」と検索すると、AIモデルが複数の製品情報を比較、要約した上で、購入候補を提案する。
  • 多言語市場へのリーチ拡大
    • Googleのマルチタスク統合モデル(MUM)によって、AI Overviewsは多言語対応が可能となっている。これにより、異なる言語圏のユーザーや、複雑かつ多面的な検索ニーズを持つ層にもアプローチしやすくなる。つまり、グローバル展開を視野に入れる企業にとって、ローカライズされた高品質コンテンツの整備が、AI経由でのトラフィック獲得の鍵となる。
  • 動画検索への対応強化
    • AI Overviewsは動画コンテンツの検索にも対応している。テキストクエリと完全に一致しない動画でも、意味的な関連性に基づいて推奨されるため、視覚情報を重視するユーザー層に対してより効果的にアプローチできる。
  • Webサイトと検索UI(ユーザーインタフェース)の再設計
    • AI Overviewsを通じた情報取得が主流化するにつれ、Webサイト自体の設計や情報提示の在り方も見直しが求められる。特に重要となるのが、要約に適した簡潔で整理されたコンテンツ設計、および直感的なUI設計だ。AIモデルにとって理解しやすい、かつユーザーが必要な情報に迅速にアクセスできるサイト設計は、今後のWeb戦略において不可欠な要素となる。

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