Google検索に新しく導入されたAI機能「AI Overviews」は、これまでの情報検索の在り方をどう変える存在なのか。Googleが見据える次世代の検索体験について考察する。
「AI Overviews」(AIによる概要)は、Googleの検索エンジン「Google検索」に新たに組み込まれたAI(人工知能)機能だ。Googleの大規模言語モデル(LLM)「Gemini」が検索クエリを読み込み、簡潔な要約と関連するWebコンテンツへのリンクを提示する。
本稿は、AI Overviewsの基本的な仕組みや従来のGoogle検索との違い、ユーザーの情報探索に与える影響について解説する。
Googleは2024年5月、米国のユーザー向けにAI Overviewsの提供を開始した。検索クエリに対して「AIによる回答が有用」とシステムが判断した場合に、検索結果ページ(SERP)の上部にAI Overviewsが表示される。具体的には、ユーザーが迅速な回答を求めている場合や、Googleのナレッジグラフ(事実情報のデータベース)を含む複数の情報源からの要約が有効と判断された場合に表示されやすくなるという。
Google検索における「強調スニペット」は、特定のクエリに対して単一のWebページから抜粋した情報を表示するものだ。一方のAI Overviewsは、複数の情報源からデータを収集し、より包括的な要約を提示するのが特徴だ。単なる情報提示にとどまらず、ユーザーが詳しく知りたい項目にすぐアクセスできるよう、出典元のリンクも併せて提示する。「もっと見る」ボタンを押すと、箇条書きのリストや画像など、詳細な補足情報も表示される。AI Overviewsは広告の下かつ、通常の検索結果より上に配置され、ユーザーがより素早くトピックの全体像を把握できるよう設計されている。
2025年1月時点で、AI Overviewsは日本、米国、カナダ、オーストラリア、インド、ニュージーランド、南アフリカ、イギリスを含む100カ国以上で利用できる。対応言語も幅広く、英語、日本語、ヒンディー語、インドネシア語、スペイン語、ポルトガル語などが含まれる。
AI Overviewsを利用するには、以下の条件を満たす必要がある。
Google検索エンジンは1998年の公開以来、Webクローラー(巡回ロボット)がWebサイトを巡回して情報を収集、インデックス化し、その内容を独自アルゴリズムで順位付けする仕組みを採用している。このアルゴリズムの代表が「PageRank」であり、ユーザーの検索意図により適する情報を表示するため、Googleは継続的にアルゴリズムやランキング手法の改善などに取り組んでいる。
一方、AI Overviewsの目的はこうしたインデックス検索を置き換えることではなく、検索結果を補完してユーザー体験(UX)を高めることにある。Geminiが検索クエリを処理して要約を生成する他にも、「次に知っておくべきこと」「関連する話題」を提案して、回遊性の向上や深い関与を促進する。
AI Overviewsは、Googleの親会社であるAlphabetが2023年5月に発表した実験的機能「Search Generative Experience」(SGE)をベースに発展したものだ。SGEでは、ユーザーが「次の質問」をクリックすることで、対話形式で情報を深掘りしていく「会話モード」が実装されていた。しかし、現時点のAI Overviewsにはこの機能はなく、AIチャットbot「ChatGPT」「Gemini」のような「継続的に対話を重ねていく形式」にはなっていない。
生成AIを検索に組み込んでいるのはGoogleだけではない。Microsoftも同様の取り組みを進めており、2023年12月には「Bing Deep Search」を発表。Bingの検索インデックスとAIベンダーOpenAIのLLM「GPT-4」を組み合わせることで、より高度なAI検索結果を実現している。2024年2月に提供を開始し、同年3月以降は全てのユーザー向けに提供している。
次回は、企業がAI Overviewsをコンテンツマーケティングに活用するためのポイントを解説する。
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