Microsoft 365の「Teams分離」に待ち受けるまさかの結末揺れるMicrosoft製品【後編】

Microsoftは「Microsoft 365」「Office 365」から「Teams」を切り離して提供する地域を拡大することを決定した。その根本には、同社のユーザー企業が示した“ある考え”があった。

2024年05月23日 07時00分 公開
[Makenzie HollandTechTarget]

 Microsoftは2024年4月、ユニファイドコミュニケーション(UC)ツール「Microsoft Teams」(以下、Teams)を、オフィススイートのサブスクリプションサービス「Microsoft 365」「Office 365」から除外して提供する地域を拡大すると発表した。

 それまで同社は、Teamsの切り離しを欧州経済領域(EEA:欧州連合の加盟国とアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)とスイスのユーザー企業に限定して実施していた。サービスの切り離しは、2023年7月に欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が、Microsoftを市場独占の疑いで調査したことを受けたものだ。調査の背景には、「Slack」「Zoom」といった競合のコラボレーションツールを提供するベンダーからの声がある。Microsoftによる“Teams分離”の結末には、何が待ち受けているのか。

「Teams分離」に待ち受ける“まさかの結末”

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)から今回のMicrosoftのライセンス変更までに、数年の月日が流れている。「企業はパンデミックを迎えるのとともにテレワークを実施するようになり、Web会議ツールとコラボレーションツールの導入に一気に動いた」と、調査会社Deep Analysisの創設者アラン・ペルツシャープ氏は語る。

 Microsoftは2016年にTeamsをプレビュー版として提供開始し、パンデミック時にはすでにOffice 365のライセンスにバンドルされていた。企業からすると、SlackやZoomに料金を払うことなく、契約中のOffice 365に含まれているTeamsをコラボレーションツールとして使えることは、経済的なメリットが大きかった。

 それから数年がたった2024年、Teamsを利用中の大企業が他のコラボレーションツールに切り替える可能性は「高くない」とペルツシャープ氏は考える。「コラボレーションツールの変更は容易ではなく、たいていの場合は企業が持つサービスに関する知識とそれまでの経験の大部分が失われてしまう」と同氏は言い添える。

 とはいえ今回のライセンス体系変更は、Slackを提供するSlack Technologiesや、Zoomを提供するZoom Video Communicationsからすると、条件をいくらか公平にし、競争の場をもたらすものだ。「ただしコラボレーションツールの新規大量採用が見込めた『つかの間の数年間』は、すでに終わってしまった」とペルツシャープ氏は語る。

規制当局とMicrosoftはどう動くのか

 MicrosoftによるTeamsの切り離しについて、調査会社Forrester ResearchのアナリストであるJ.P.ガウンダー氏は、EUの規則だけではなく、他の地域における規制強化の可能性を考えると「賢明な対処だ」との意見を示す。

 現にEUはこのところ、Apple、Meta Platforms、Googleの親会社Alphabetなどに対し、デジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)違反の調査を始めている。デジタル市場法は、ベンダーに対してサードパーティー製品/サービスとの相互運用性の確保と、自社製品の優遇の禁止を求めている。

 ガウンダー氏によると、MicrosoftによるTeamsのライセンス体系変更の次の争点は、価格設定になる見込みだ。同社は「TeamsをMicrosoft 365およびOffice 365から切り離して提供することはMicrosoftの経費を上げることになるため、Microsoft製品/サービスが値上がりするのは当然だ」と主張する可能性がある。

 「この主張は、少なくともある程度は事実だ」とガウンダー氏は述べる。その理由について同氏は以下のように説明する。「切り離した製品/サービスを管理、開発、販売することは、かえってコストがかかる。バンドルしていない製品/サービスを知ってもらうためのマーケティング予算を増やす必要もある」

 「規制当局は値上げに対していい顔をしないと思われるが、Microsoftの主張に異議を唱えるのは簡単ではない」(ガウンダー氏)

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス

事例 双日テックイノベーション株式会社

わずか4カ月でクラウドPBXへ移行、エヌ・シー・エヌに学ぶ電話環境改善のヒント

固定電話とオンプレミスPBXをベースとした電話環境は、異動や席替えのたびに配線の引き直し工事が発生したり、電話管理が属人化したりと、非効率さが課題となりがちだ。この問題を短期間で解消した、エヌ・シー・エヌの事例を紹介する。

事例 Asana Japan株式会社

富士通のDX推進事例に学ぶ、生産性40%アップを目指す突破口とは?

富士通が展開するDX推進プロジェクト「フジトラ」。12万余りのグループ従業員全体をカバーするのは容易ではないが、その一翼を担うのが「ワークマネジメントツール」だ。本ツールの導入経緯から効用、今後の展開などを紹介する。

製品資料 株式会社マヒト

名刺発注業務を効率化、柔軟なワークフロー構築が可能な名刺発注システムとは

名刺は日々のビジネスに欠かせないツールの1つだが、その発注に関する承認と管理は意外と手間のかかる作業であり、規模が大きくなるほど負担は増大する。そこで注目したいのが、柔軟なワークフローを構築できる名刺発注サービスだ。

製品レビュー NECネッツエスアイ株式会社

2分の動画で解説:外出先での電話環境を改善、雑音除去もできるクラウドPBXとは

外出時の電話対応では、取り次ぎや折り返しの手間に加え、周囲の雑音やノイズといった課題もつきものだ。これらを解決する手段として期待されるクラウドソリューションを取り上げ、実際の利用方法や活用効果を、動画を通じて紹介する。

製品資料 株式会社ジャストシステム

稟議/申請のデジタル化を推進、ノーコードで実現するワークフロー変革術

あらゆる領域でデジタルシフトが進む今、ワークフローにおいてもシステム化が加速している。その手段として注目されるのが、ITの専門知識がなくてもシステム構築が可能なノーコードツールだ。そのメリットや選定のポイントを解説する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ゥ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ュ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ー

2025/04/24 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...