企業向けHDDの終焉(しゅうえん)が迫っているという見方が、現実味を帯びてきたとあるオールフラッシュストレージベンダーPure Storageはみている。その根拠は何か。
ストレージベンダーPure Storageは、企業向けHDDの終焉(しゅうえん)が迫っているという同社の予測が、現実味を帯びてきたと考えている。
2024年12月に、Pure Storageはあるハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)が同社のフラッシュストレージモジュール「DirectFlash Module」(DFM)を、ストレージインフラのコンポーネントとして採用することで合意したと発表。サプライチェーンパートナーとの連携強化も進み、Pure StorageはNAND型フラッシュメモリベンダーであるMicron Technologyやキオクシアとの協力体制の強化を相次いで発表している。
Pure Storageのようなオールフラッシュストレージベンダーの取り組みが功を奏し、ハイパースケーラーがフラッシュストレージをより多く採用するようになれば、HDDの出荷は大きく落ち込む可能性がある。もしそうなれば、HDDはいよいよ消滅に向かう可能性があるのだろうか。
Pure Storageは、Micronとの協業拡大を2025年1月に発表。Pure Storageは、MicronのQLC(クアッドレベルセル)方式のNAND型フラッシュメモリ第9世代「Micron G9 QLC NAND」を、DFMに大量に搭載する計画だ。QLCとは1つのメモリセル(記憶素子)に4bitを格納する記録方式であり、SSDの容量増大に寄与する技術の一つだ。
それに先立ち、Pure Storageはキオクシアの提携を2024年12月に発表している。キオクシアのQLCのNAND型フラッシュメモリを搭載したストレージ製品をハイパースケールデータセンターのニーズに合わせて構築し、提供するというものだ。
DFMは、他のストレージが提供している通常のSSDとは異なる。Pure Storageのストレージアレイに搭載することを前提に設計されており、ドライブを単体で購入することはできない。
Pure Storageは、DFMの設計と製造を管理しており、コントローラーシステムの設計と構築も実施している、データ管理機能をドライブやストレージアレイのシステム全体に分散させることができる。これによってキャッシュの使用とデータ配置が効率化される。その結果、QLCのNAND型フラッシュメモリの寿命がある程度延びることがあるという。
DFMにおけるデータ管理機能の分散は、電力消費の低減、より高速なI/O(データの入出力)、省スペースによるNAND型フラッシュメモリの搭載量増加にもつながる。膨大な容量のストレージを使用するハイパースケーラーにとって、DFMのこれらのメリットは大きい。
Pure Storageの課題は、サプライチェーンの規模拡大だ。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Google、Meta Platformsは、世界で生産されるサーバの相当量を購入している。そうしたハイパースケーラーは多くの場合、ホワイトボックス(ノーブランド)ハードウェアを購入し、自社でカスタマイズしている。その市場はこれまで、企業向けストレージベンダーに対して実質的に閉ざされていた。そうしたベンダーの製品は、ハイパースケーラーそれぞれの固有の要件に合わせて作られていないからだ。
Pure Storageがどのハイパースケーラーとの取引を獲得したのかは正式には明らかになっていない。だが同社はハイパースケーラー独自のストレージと連携するコンポーネントとしてDFMを販売する戦略を取っており、それが功を奏してこれまで閉ざされていた市場に入り込んでいると考えられる。
これまで大規模データセンターを運営するハイパースケーラーは、ストレージサービスを提供するためにHDDを好んで採用してきた。その主な理由は、HDDが安いことだ。
だがそうした価格の違いがある半面、HDDはデータ読み書きの速度がSSDよりも遅い。AI(人工知能)技術の台頭に伴い、さまざまなデータにアクセスする必要性が生じ、使用頻度の低いデータにより高速にアクセスする必要が出てきた。そこでハイパースケーラーはSSDに目を向け始めた。
だが従来のSSDの容量は、ハイパースケーラーが採算を取れる規模に満たなかった。ところがPure Storageは、Micronとキオクシアの最新世代のQLCフラッシュメモリを採用し、容量150T(テラ)Bのフラッシュストレージモジュール「DirectFlash Module」(DFM)を作れるようになった。DFMとはSSDに相当するハードウェアだが、Pure Storageのストレージアレイに搭載することを前提に設計されているため、一般的なHDDのドライブとは異なるものだ。
そのDFMの容量は、300TBに達する見込みとなっている。一般的なHDDの最大容量は30TBほどまで増大しているが、DFMの容量はその約10台分に相当する規模まで拡大することになる。
Pure Storageがハイパースケーラーに大容量DFMを供給する取引は、「HDDの終わり」の始まりとなるのだろうか。
Pure Storageの最高技術責任者ロブ・リー氏は、2025年1月にプラハで開かれた記者会見で、Pure Storageの製品がハイパースケーラーに採用されることは「画期的なことだ」と語った。その上で、ハイパースケーラーがフラッシュストレージに重点を移すとなれば、HDD市場の崩壊につながる可能性があるとの見方を示した。
「われわれは単にストレージアレイを供給するわけではない。われわれはハイパースケーラーとの共同エンジニアリングにより、彼らのカスタムシステムにDFMを統合するのだ」。リー氏はそう説明。さらに同氏は「彼らはDFMのようなものを自前で構築する準備もできていたが、『自前で構築するまでもなく、PureStorageのフラッシュモジュールを統合すればいい』と考えた」と語る。
リー氏によると、ハイパースケーラーがこうした動きに出た背景には、データの増大とAI(人工知能)関連のニーズがある。特に、比較的使用頻度が低い大規模なデータストアにアクセスする必要が出てきたことが大きい。そうした中で従来はHDDが担っていた役割をフラッシュストレージが担うようになれば、HDDの需要が激減し、HDDの生産が成り立たなくなる可能性がある同氏は指摘する。
米国Informa TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。
メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。
ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。
CPUやGPUの性能向上に伴い、データセンターでは今、発熱量の増加にどう対応するかが課題となっている。特に高密度なサーバ環境では、従来のファンやヒートシンクに頼るだけでは熱管理が難しい。こうした中、企業が採用すべき手段とは?
中堅・中小企業の中には、IT担当者が社内に1~3人しかいないという企業も少なくない。そのような状況でも幅広い業務に対応しなければならないIT担当者の負担を減らす上では、ファイルサーバをアウトソーシングすることも有効だ。
データの多様化と肥大化が加速 ファイルサーバ運用は限界? 見直しのポイント (2025/4/8)
Hyper-Vは「次の仮想化基盤」になり得るのか 有識者の本音を聞く (2025/3/14)
「生成AI」の自社運用に“ちょうどよいサーバ”の賢い選び方 (2025/3/12)
クラウドストレージは便利だけど検索性が課題? 東急建設の解決策は (2025/2/25)
AI時代のデータ活用を阻む「ストレージ」の壁 悩める運用担当者の救世主とは? (2025/1/21)
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...