大容量SSDの開発は、HDDの大容量化を大きく上回るペースで進展している。複数のSSDベンダーが新たに発表したSSD新モデルも、HDDとの違いを印象付けるものになった。
SSDの直近の進化を前提にすると、“大容量のストレージと言えばHDD”という見方は必ずしも正しくない。大容量化のためのさまざまな技術が実用化していることもあり、近年SSDの容量はHDDを大きく上回るペースで増加している。2024年後半にも、複数のSSDベンダーが容量を飛躍的に増大させた製品を相次いで発表した。
Solidigm(SK hynixの子会社でIntelのメモリ事業を継承)は2024年11月、データセンター向けSSD「D5-P5336」の新モデルとして容量122.88TBの製品を発表した。このモデルについて特筆すべき点の一つは、同社が2023年に発表していたD5-P5336の容量61.44TBの従来モデルと比較して、消費電力が増えない点だ。
低消費電力に重点が置かれていることは、Micron Technologyが2024年11月に発表した容量61.44TBのSSD「Micron 6550 ION」(以下、6550 ION)でも同じ。20ワットの消費電力で、連続した位置に書き込まれたデータを読み取るシーケンシャル読み取りで12GBpsを達成できる。これは競合SSDと比べて最大20%の省エネルギー化につながる可能性があるとMicronは説明している。
調査会社NAND Researchの創設者でアナリストのスティーブ・マクドウェル氏は、ストレージの高密度化は2つの観点で重要だと指摘する。1つ目はデータセンターの持続可能性を向上させること。2つ目は、コンピューティングクラスタがより多くの電力を使えるようにすることだ。
特にGPU(グラフィックス処理装置)クラスタはより多くの電力を必要とする傾向にあり、データセンター全体の消費電力量を削減することはデータセンターの予算を適正に収める上では重要な観点になってきている。「SSD1台の容量が増加すればそれだけ必要なSSD台数とラックスペースが抑制され、結果としてストレージに必要な電力量を小さくできる可能性がある」(マクドウェル氏)
調査会社Objective Analysisのゼネラルディレクター兼半導体アナリストのジム・ハンディ氏は、60TB以上の大容量SSDの需要が高まっているとみている。大容量はAI(人工知能)モデルの学習や推論に使われている。SSDの容量が大きく伸びる一方で、HDDの容量は最新の主要製品で30TB前後にとどまっているのが現状だ。
Micronの6550 IONの特徴は以下の通り。
非連続な位置のデータを読み込むランダム読み込みで160万IOPS(1秒当たりの入出力数)
Micronの6550 IONは、大容量SSDの最先端を行く製品の一つだ。60TBを超えるSSDとしては、SolidigmのD5-P5336の容量61.44TB版や、Samsung Electronicsの容量61.44TBの「BM1743」などがある。
調査会社IDCのアナリストであるジェフ・ジャヌコビッチ氏は、6550 IONの特徴としてクアッドレベルセル(QLC)ではなくTLCを採用していることを挙げる。QLCでは耐久性が下げる懸念があるものの、TLCであればその懸念は軽減されるからだ。「一般的なサーバに搭載され、用途やアプリケーションが多様になることが期待できる」(ジャヌコビッチ氏)
一方のSolidigmは、D5-P5336の新モデルの容量を、前モデルからの倍増となる122.88TBにした。前バージョンと同様、D5-P5336の122.88TBのモデルもQLCを採用している。ジャヌコビッチ氏は「Solidigmは大容量SSDの製品化において先端を走っているベンダーだ」と評価する。新モデルのサンプル出荷は進んでおり、「私の知る限り、これは市場に存在する中で最も密度の高いSSDの出荷になる」と同氏は語る。
Pure Storageも高密度のフラッシュストレージを提供している。同社のそのモジュールは「DirectFlash Module」(DFM)と呼ばれ、SSDに似ているが厳密にはSSDではない。Pure Storageのストレージアレイに搭載することを前提にしたものであり、単体では購入できない。
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