プライベートネットワーク市場の半分以下
「プライベート5G」をユーザーが選ばない本当の理由
移動体通信システムをプライベートネットワークとして運用する「プライベート無線ネットワーク」の導入が進んでいるが、「5G」を使った「プライベート5G」の割合が想定よりも低いという。どういうことなのか。
区画ごとに基地局を設置する「セルラー方式」による移動体通信システムをユーザー組織が自営網として運用するプライベートネットワークを、「プライベート無線ネットワーク」(自営無線網)と呼ぶ。代表例が「5G」(第5世代移動体通信システム)を使用する「プライベート5G」や、「LTE」(Long Term Evolution)などの「4G」(第4世代移動体通信システム)を使う「プライベート4G」だ。
調査会社Juniper Researchが2025年3月に公開した調査レポート「Global Private Cellular Networks Market: 2025-2030」によると、現在のプライベート無線ネットワークの世界の市場規模は57億ドルだが、2028年には122億ドルと、2倍以上に増加する見通しだ。しかし意外なことに、Juniper Researchは同レポートで、プライベート5Gが占める割合は全体の半分以下の56億ドルにとどまると予測する。それはなぜか。
「プライベート4G」で十分?
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プライベート無線ネットワークの普及が進む主要な要因は、産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進だ。
以下の用途では、無線LAN(Wi-Fi)よりもプライベート無線ネットワークの方が向いているという見方が存在する。
- IoT(モノのインターネット)デバイスの導入
- ビッグデータやAI(人工知能)技術の活用
- 自動運搬装置(AGV)や自律走行搬送ロボット(AMR)といった自律型移動体の利用
近年、プライベート無線ネットワークの市場規模の拡大は緩やかだったが、さまざまな企業が導入を検討しており、今後の大幅な拡大が期待できる。具体的な数字として、過去4年間で約2500局のプライベート無線ネットワークが新規導入されたが、Juniper Researchは今後2年間で約3000局が新設されると予測する。レポートではこの動きが移動体通信事業者(MNO)やネットワーク事業者にとってプライベート5Gサービスを収益化するチャンスになると指摘している。
しかし、企業が導入するプライベート無線ネットワーク全体の内訳として、プライベート5Gが占める割合は高くない。前述の通り、Juniper Researchは2028年のプライベート無線ネットワーク市場において、プライベート5Gのシェアは全体の半分以下と予測する。
プライベート4Gと比較して、プライベート5Gには以下の優位性がある。
- 通信速度が速い
- 通信容量が大きい
- 通信遅延が少ない
- 信頼性が高い
しかしあるアナリストは「現状はプライベート4Gはほとんどのユーザー組織の需要を満たしているため、プライベート5Gは不要と判断されるケースが多く、今後の成長もあまり期待できない」と分析する。プライベート4Gは運用コストが低い上に、製造や物流などの多くの現場において、必要な接続性を十分に確保でき、引き続きの成長が見込まれる。
NaaSの台頭
この調査では、プライベート無線ネットワークの成長の要因として、ネットワークやそのインフラをサブスクリプション形式で利用する「NaaS」(Network as a Service)を挙げる。NaaSモデルで提供されるプライベート無線ネットワークは、迅速な拡張性に優れ、コスト効率も高い。NaaS型のプライベート無線ネットワークなら、ユーザー企業は、初期投資や運用コストを抑えつつ容易に利用できる可能性がある。
レポートの著者であるミシェル・ジョインソン氏は「市場拡大に伴い、ベンダーはプライベート無線ネットワークを導入したい企業を引き付けるために、NaaSなどの柔軟な提供モデルを用意すべきだ」と語る。
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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