無線のプライベートネットワークとしては無線LAN(Wi-Fi)が一般的だが、プライベートLTEも企業にとって現実的な選択肢となっている。プライベートLTEの特徴を解説する。
企業が利用するプライベートネットワークに、新しい選択肢が出てきた。従来は無線LAN(Wi-Fi)以外のプライベートネットワークの導入は、専門性が求められることから現実的な選択肢ではなかった。しかし「LTE」(Long Term Evolution)を自社で運用する「プライベートLTE」といったプライベートネックワークを導入する方法が台頭し、一部の業界で普及し始めている。プライベートLTEと無線LANと比較しつつ、プライベートLTEの特徴を確認しよう。
プライベートLTEのメリットは、他のユーザーからの干渉がほとんどないことだ。携帯電話網でも使われるLTEを、企業や官公庁などが自前で基地局装置を設置して、自組織用に運用する。そのため、さまざまな端末が利用する無線LANと違って通信の安定性が向上し、遅延を抑えることが可能だ。
日本では、プライベートLTEは2種類の方式がある。1つ目は1.9GHz帯を免許不要で利用する「sXGP」(shared Xtended Global Platform)だ。下りの最高速度は約10Mbpsで、1つの基地局から半径を30〜200メートル程度カバーする。企業や病院などの利用に適している。
2つ目は免許が必要な2.5GHz帯を利用する「BWA」(Broadband Wireless Access:広帯域移動無線アクセス)だ。下りの最高速度は200Mbps程度で、1つの基地局で半径2〜3キロ程度をカバーする。地域や大学などでの利用に適している。
米国ではプライベートLTEの帯域は、連邦政府から購入するか、通信事業者からレンタルすることで利用できる。この時、プライベートLTEに必要な機器を販売またはレンタルで提供する通信事業者も存在する。
米国政府は軍が利用していた3.5GHzの周波数帯のうち150MHzの帯域幅を「市民ブロードバンド無線サービス」(CBRS)として2020年から民間に開放している。
ただし、CBRSを利用するプライベートLTEには制約がある。具体的にはアクセスのレベル(周波数帯を使うための優先順位)を3つに分類しており、数字が低いほど優先される。
PAL及びGAAへのチャネル(データ送受信用の周波数帯)は、「スペクトラムアクセスシステム」(SAS)によって動的に割り当てられる。SASはCBRS帯域内の帯域幅を管理するために生まれたデータベースだ。CBRSの電波を利用するシステムは、アクティブになる前にSASと通信してアクセスを要求する必要がある。SASは、全てのアクティブなシステムと連絡を取り続け、使用中の全ての回線を監視して、アクセスを要求するシステムに帯域幅を割り当てる。このプロセスは、他のアクティブなシステムからの干渉を防ぐのに役立つ。
デバイスがネットワークを利用する場合、無線LANはパスワードでアクセスを管理するが、LTEはユーザーの情報を保存したSIMカードが必要になる。SIMカードによってデバイスのなりすましを防ぎやすくなる一方で、利用できる端末は限られる。
次回は無線LANの特徴をプライベートLTEと比較させながら解説する。
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