“バグゼロ”を目指す開発戦略 予防のためのベストプラクティス10選バグ修正と予防のポイント【後編】

開発チームがバグ修正に追われる日々から脱却するには、バグの発生を未然に防ぐ取り組みが不可欠だ。開発プロセス全体にわたってバグの発生要因を断つ10個の予防策を解説する。

2025年04月24日 05時00分 公開
[Amy ReichertTechTarget]

 アプリケーション開発にバグ(不具合)は付き物だ。どれほど慎重に開発を進めても、予期しないバグは現れる。本番環境で予期しないバグが発生すると、開発チームは修正のための緊急体制に入らざるを得なくなる。

 プロジェクトの遅延や手戻りの原因になり得るバグの発生自体を予防することは、アプリケーションの品質を高める上で不可欠な視点だ。「バグ予防」に焦点を当て、開発プロセスの初期段階から品質管理を組み込むための10個のベストプラクティスを紹介する。

バグの予防に役立つ10個のベストプラクティス

 バグ報告が寄せられたときの流れを考えてみよう。重大なバグの報告が管理職に届き、その後開発チームのメンバー全員に共有される。なぜテストで検証できなかったのかという議論が起こり、早急に修正するためメンバーが割り当てられる。

 複数の開発者が関わっている場合、ソースコードにバグは生じやすいものだ。アプリケーションの複雑さもバグの要因になり得る。データをデータベースに保存したり、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)に転送したりするなど、さまざまなコンポーネント(部品)と連携する複雑なアプリケーションは、それぞれの接点でバグが発生する可能性がある。

 エンドユーザーにバグの影響が及ぶのを防ぐには、入念な計画、開発チームの良好なコミュニケーションと協力体制が不可欠だ。バグを予防するための手順を以下に挙げる。

1.エンドユーザーがバグを報告した場合の対処計画を策定する

 本番環境でバグが発生すると、進行中の開発作業を中断せざるを得なくなり、イテレーション(短期間で繰り返す開発サイクル)のスケジュールがずれる恐れがある。バグ修正とテストによる開発作業の中断は、本来の開発プロジェクトを遅延させてしまう。バグが報告された場合の対処計画を策定しておくことで、無用な混乱を避けることが可能だ。

2.コーディング規約を策定する

 開発チームは、ソースコードの記述、ビルド(実行可能ファイルの生成)、デプロイ(展開)、テストに関する一連のルールやガイドラインをコーディング規約として策定すべきだ。規約があればバグの修正が容易になる。単純なチェックリストから、コメントとサンプルコードを含む詳細なものまで、チームや企業、採用する開発手法によってさまざまな形態のコーディング規約が存在する。体系的で一貫性のある開発手法を適用すれば、開発の初期段階からソースコードの品質を確保しやすくなる。

3.単体テストにテスト用プログラムを含める

 単体テスト(プログラムの最小単位である機能の動作テスト)や結合テスト(複数の機能やコンポーネントを組み合わせたときの動作テスト)を自動化するためのテスト用プログラムを作成することは、テストの精度向上と省力化に貢献する。ビルド前にテストを実施することは、早期のバグ特定に役立つ。

4.開発の初期段階から品質管理を組み込む

 ソースコードの品質確保を開発の初期段階から組み込み、戦略と計画に基づいて継続的にテストを実行するとよい。

5.開発者間で相互にコードレビューを実施する

 コードレビューはバグを早期に発見、修正することに有用だ。後から追跡管理するよりも時間と作業量を削減できる見込みがある。

6.ビルド前に全てのソースコードをテストする

 アプリケーションのテストが品質保証(QA)チームの手に渡る前に、開発チームがソースコードのテストとバグ修正を実施することが重要だ。

7.テストで自動化機能を活用する

 開発チームは、単体テストと結合テストを含む自動テストを細かく実行する計画を立てる。AI(人工知能)技術を組み込んだ一部のテストツールは、テストの自動化機能を提供している。QAテスターに自動テストの作成と管理方法を覚えてもらえば、開発チームの作業負荷が減り、QAテスターのスキル向上にもつながる。

8.エンドユーザーが報告した全てのバグに対してテストケースを作成し、定期的に検証する

 QAチームは、本番環境で発生した全てのバグを網羅するテストケースを作成する。作成されたテストケースは、本番環境に実行可能ファイルを投入する前の(基本動作確認テスト)と回帰テスト(変更による影響を確認するためのテスト)に含めるようにする。

9.バグの発生履歴や修正履歴を文書化する

 バグ追跡ツールを使用し、全てのバグやその修正履歴を特定して文書化しよう。バグの履歴を分析すれば、発生しやすい箇所と修正方法についての気付きを得られる可能性がある。

10.バグとその原因についてチーム内で議論し、そこから学ぶ

 定例会中に、本番環境で発生した全てのバグとその根本的な原因、修正方法について話し合うことを開発チームの習慣にする。エンドユーザーにバグの影響が及ぶことを防ぎ、開発チームが緊急事態に陥ることを避ける重要性について、チームメンバー全員が理解することが重要だ。チームのコミュニケーションと協業を促進することも欠かせない。開発者とテスターのスキルを最新の状態に保ち、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通じて効果的なテストを実施するのに役立つツールを導入する。

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