データ読み書きの速さを含め、SSDはHDDに勝るさまざまなメリットを提供できるようになった。そうした中で語られるHDD不要説には一理ある。だがSSDのみで事足りると考えるのは危険だ。それはなぜか。
SSDの容量増大の進化が続く中で、HDDを使用しない「SSDオンリー」が現実的な選択肢になりつつある。データ読み書きの速さで考えてもSSDを積極的に使用する十分な理由があると言えるものの、SSDのみを使うことに注意を促す声もある。何が問題なのか。
HDDに対するSSDの利点は、データ読み書きの高速性だった。SSDはワークステーションやノートPC、I/O(データの入出力)性能を重視するアプリケーションを実行するためのサーバなどで使われてきた。
データ読み書き性能に関してSSDがHDDに対して特に優位になるのは、不連続なデータへのアクセス方式である「ランダムリード」と「ランダムライト」の場合だ。連続したデータへのアクセス方式である「シーケンシャルリード」と「シーケンシャルライト」の場合、SSDとHDDの性能差はより小さくなる。ただしHDDをベースに構成するストレージアレイであっても、キャッシュにSSDを用いている場合には、SSDのみで構成するオールフラッシュストレージの性能に近づく。
「求める特性によって必要なストレージは変わる」と、調査会社Informa Tech(Omdiaの名称で事業展開)のITオペレーション担当チーフアナリストであるロイ・イルスリー氏は言う。特に、
が検討材料として重要だ。ニーズに最も適したストレージがSSDである場合もあるし、HDDである場合もある。読み書き性能を重視する場合には、データセンターのストレージとしてオールフラッシュストレージのみを使用する「オールフラッシュデータセンター」の構想が浮上する可能性がある。ただし「オールフラッシュデータセンターが一般的になるとは考えていない」とイルスリー氏は語る。
HDDを製造する東芝デバイス&ストレージの欧州子会社Toshiba Electronics Europe(TEE)の事業開発担当シニアマネジャーであるライナー・カイゼ氏は、「世界のオンライン(常にアクセスできる状態にあること)データの大部分はHDDに保存されている」と強調する。それを前提にすると、SSD業界がストレージの全ての需要には答えられない可能性があると指摘する。「仮にHDDに全世界の85%のデータが保存されているとすれば、それだけの容量のSSDを用意しなければならない」(カイゼ氏)
SSDとHDDの価格と容量の差は縮まりつつあるが、完全にその差がなくなるまでには時間がかかる見通しだ。容量の観点では技術的にSSDはHDDよりも大容量化が可能になっているが、価格面においてはまだ明らかにHDDに軍配が上がるとカイゼ氏は説明する。
次回は、SSDの容量増大が続く見通しを踏まえて、HDDとSSDの利用が今後どう変わる可能性があるのかを考察する。
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