スマートフォンをノートPCのように利用可能にするデバイスがある。具体的な使い方や、使い勝手はどうなのか。筆者が「Android」搭載スマートフォンなどのデバイスで使ってみた感想と共に紹介する。
スマートフォンの処理能力は、今やノートPCと同程度にまで進化している。そこで登場してきたのが、「ノートPCと同じような使い方でスマートフォンの処理能力を引き出す」ための方法だ。筆者が「Android」搭載スマートフォンなどのデバイスを接続して使ってみた感想と共に、その具体的な方法を紹介する。
「ラップドック」はディスプレイとキーボード、タッチパッドがセットになったデバイスで、スマートフォンと接続させることでノートPCのようなユーザー体験を生み出す。筆者はNex Computerのラップドック「NexDock 360」を試し、ラップドックは実際に役立つのかを検証した。
NexDock 360はラップドックの一つだ。同製品は13型のディスプレイとキーボードを搭載しており、ホストデバイスで実行されているOSを利用するため、“プロセッサを搭載していないノートPC”と言える。スマートフォンなどのホストデバイスと本体は、近距離無線通信規格「Bluetooth」による無線接続または「USB Type-C」「Mini HDMI」による有線接続が可能だ。
筆者は旧型のAppleの小型デスクトップPC「Mac Mini」をHDMI経由でNexDock 360に有線接続し、MicrosoftのOS「Windows 11」搭載PCで無線接続を試してみた。メインのWindows PCをNexDock 360に接続させることで、別の部屋での作業が可能になった。目立った遅れがほとんどない状態でWindowsのユーザー体験が得られるため、場合によってはデスクトップ仮想化よりも適した選択肢になる可能性がある。
NexDock 360はスマートフォンやPC以外の映像再生機器を接続することも可能だ。両端にMini HDMI端子とMicro HDMI端子を備えるケーブルを用意すれば、デジタルカメラとNexDock 360を接続して基本的なフィールドモニターとしても使用できる。
スマートフォンを手掛けるSamsung Electronicsは、同社製のスマートフォンをモニターに接続して、ノートPCのような操作感で使うための機能「Samsung DeX」を用意している。Samsung DeXを搭載した同社製スマートフォンとNexDock 360を接続させることで、ノートPCと変わらない操作感が得られる可能性がある。
ただしSamsung DeXがノートPCのようなユーザー体験を提供するとしても、Appleの「macOS」やWindowsと全く同等というわけではない。一部のスマートフォンアプリケーションは、Samsung DeXで実行する際に幾つか追加手順が必要だ。
例えば筆者は、Googleのノート型デバイス「Chromebook」で同社のWebブラウザ「Google Chrome」(Chrome)を起動し、ブラウザのタブから「Googleドライブ」や「Googleドキュメント」などのサービスを利用している。NexDock 360とSamsung DeXで同様の作業を実施する場合、デフォルトではChromeがモバイルブラウザモードに設定されるため、デスクトップブラウザモードと比較してGoogleドライブの機能が制限される。今回見つけた回避策は、Chromeブラウザの各タブでデスクトップモードを手動で有効にする方法だった。以前のChromebookで作業していた方法を再現するには、GoogleドライブとGoogleドキュメントのモバイルアプリケーションを削除する必要があった。
本稿は英国で執筆している。NexDock 360は米国から個人で輸入する必要があったため、製品価格の299ドル(約4万3000円)に加えて関税と配送料金を支払う必要があった。さらに充電器の電圧もプラグも米国の壁面コンセント向けの規格を採用しているため、変換プラグを購入する必要があった。こうしたコストを踏まえると、導入コストは約275ポンド(約5万2000円)から約335ポンド(約6万3000円)に上昇する。もう少しコストを掛ければ、ChromebookやローエンドのWindows PCが手に入る金額だ。
特筆に値するのは、NexDock 360はテクニカルサポート用のWebベースのヘルプデスクが用意されている点だ。NexDock 360で最初に直面した問題の一つは、スマートフォン「Samsung S23」をNexDock 360に有線接続しようとすると、ディスプレイしか接続されないことだった。キーボードとタッチパッドはBluetooth経由で無線接続された。これは大半のユーザーにとっては問題にならないと考えられるが、筆者が利用するVPN(仮想プライベートネットワーク)ソフトウェアはこの状態では正常に動作しなかった。NexDockのヘルプデスクはNexDock 360に同梱されるケーブルではキーボードとタッチパッドが有線接続できない可能性があることを指摘し、USB Cケーブルの通販サイトのリンクを提供した。筆者は提案された新しいケーブルを使用することで、VPNソフトウェアを利用できるようになった。
筆者はNexDock 360は汎用(はんよう)性の高いデバイスだと考えている。ノートPCを使用できるのに、充電が必要な“ノートPCもどき”のデバイスを持ち歩く必要がある理由を疑問に思う読者もいるだろう。しかしNexDock 360にはノートPCを上回る利点がある。具体的には、幅広い状況で利用できる、持ち運び可能なディスプレイやキーボード、タッチパッドが提供される点だ。サーバルームやデータセンターでは、NexDock 360をサーバやストレージ、ネットワーク機器の背面に直接接続してコンソールとして使用できる。デスクトップPCと接続すれば、2枚目のモニターとして機能する。画面を半分に折りたたむことができるため、スマートフォンをタブレットとして使用可能にするという使い方もある。
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