ARデバイスが普及しているとは言い難い。Appleの「Apple Vision Pro」も課題はあるものの、「ある進化」によって市場で受け入れられる可能性がある。
Appleのヘッドマウントディスプレイ(HMD)「Apple Vision Pro」が2024年初頭に登場し、同年6月にはScanditとの提携が発表された。スマートデバイスからバーコードやQRコードを読み取るScanditの「スマートデータキャプチャー」技術を用いることで、Apple Vision Proを使ってデータをより便利に読み取れるようになる。
この提携を聞いた時、筆者は強い既視感を覚えた。MicrosoftのARヘッドセット「HoloLens」が登場した2017年当時を思い出したのだ。
HoloLensが発売したとき、世間の拡張現実(AR)技術に対する期待は大いに高まった。宇宙から製造業まで、あらゆる産業に革命が起きる可能性を秘めていた。筆者はHoloLensのデモを見て感銘を受け、現場の技術者がホログラムでマニュアルを表示し、遠隔地の専門家が現場のスタッフに指導する未来を想像した。しかし2024年時点で、HoloLensは市場に普及したとは言い難い。
2024年に発売したApple Vision Proでも同じことが繰り返されるのか。Apple Vision Proがいかに技術的に優れていても、ARデバイスならではのハードルは依然として存在する。
といった要素が影響し、Apple Vision Proのニーズは順調に上向いているとは言えない状況だ。
HoloLensもApple Vision Proも、一般消費者向けの市場では苦戦を強いられている。しかし、それをただの失敗と捉えるのは適切ではない。「どの機能や特性が重要なのか」「ユーザーや用途のシナリオによって、評価されるポイントがどのように変わるのか」といった視点で考えることが重要だと筆者は考える。
こうした視点で考えると、AppleとScanditの提携は非常に興味深い。スマートデータキャプチャー技術を活用することで、ユーザー企業は在庫管理や注文処理、ID検証などのタスクを効率化できる。こうした産業向けアプリケーションにとって大切なのは、重量、快適性、実用性だ。つまり、ハイエンドのデバイスや機能は必要ない。長時間快適に装着できるデバイス、業務に使える必要最低限の機能、勤務時間を通して持続するバッテリーが重要だ。
「AppleがApple Vision Proの安価な有線バージョンを計画している」といううわさもあるが、これはビジネス向けの戦略として的を射ている。例えば、ユーザーのベルトに「iPhone」を取り付け、Apple Vision Proの処理の一部をオフロードすれば、デバイスを軽量化でき、長時間装着も苦ではなくなる。こうしたポイントは、企業向けにAR機器の導入が広がる重要な要素となる。
AR機器は必ずしもゴーグルやヘッドセットが必要なわけではない。ビジネス用途では、例えばスマートグラスのように目立たない形状の方が、より実用的で受け入れられる可能性がある。もちろん、これはユーザーのニーズやデバイスの使用環境によって左右される。
ScanditがエンタープライズAR分野で一定の地位を獲得できるかどうかは重要だ。同社のサービスは本質的にソフトウェアベースとなっている。ARデバイスと連携することで得た知見を、同社は今後のAR市場の進化に合わせて、他のデバイスにも生かすことができるはずだ。
エンタープライズARのユースケースは概念実証(PoC)を十分に実施できるほどに明確になってきている。ARに対する懐疑的な見方は、いつまでも続くわけではない。
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