「Java」ライセンス料に悲鳴 加速する“Oracle離れ”の理由と立ちはだかる壁30周年を迎えて岐路に立つJava【後編】

Oracleの方針転換によって「Java」の料金が増えたことを受け、企業は代替製品への移行を検討し始めている。移行が加速する背景と、移行がスムーズに進みづらい要因を解説する。

2025年03月25日 08時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 プログラミング言語「Java」は、企業システムの中核技術として広く普及している。Javaアプリケーションの開発・実行環境である「Java Development Kit」(JDK)は、Oracleが提供する「Oracle JDK」が従来の標準的な選択肢だった。OracleがOracle JDKのライセンスを変更したことによって、企業のJava戦略は転換点を迎えている。Oracleが提供する無償のオープンソース版「OpenJDK」への移行を企業が検討し始めている背景と課題を探る。

Oracle JDKのライセンス変更による影響

 調査会社Gartnerによると、新しいサブスクリプションモデルは従来のモデルと比べて料金が数倍に増えた。同社は2025年1月に公開したレポート「3 Steps to Manage Exposure for Oracle Java SE Licensing」で、Oracle JDKのライセンス管理における問題を指摘した。特に、2019年4月以降に更新プログラムをダウンロードする場合や、非常に古いバージョンまたは最新バージョンを使用している場合において、注意を促している。

 アプリケーション開発ツールを手掛けるAzul Systems(以下、Azul)は、2024年秋に2039人のJavaユーザーを対象として、Javaの利用状況に関するアンケート調査を実施した。その調査結果をまとめたレポート「2025 State of Java Survey & Report」において、回答者がJDKのサブスクリプション料を支払わないとして挙げた理由は以下の通りだった。

  • サポートの必要性を感じていない(52%)
  • 優先度が低い(31%)
  • コスト(21%)

 Azulは、企業が短期的なコスト削減を優先する一方で、長期的には安全で信頼性の高いアプリケーション運用を確保するためのサポートの重要性を軽視していると指摘している。このトレードオフの判断は、特にセキュリティやシステムの安定性が必要なアプリケーションにおいて難しくなるという。

 Javaユーザーの不満の高まりは、コスト効率を重視する強いニーズの表れだとAzulは分析する。この傾向は、企業が長期的な戦略を見直し、JDKのライセンスやサポートにかかる費用を安定的かつ効果的に管理するための選択肢を模索するきっかけとなっている。

 Azulの調査では、他ベンダーのJDKへの切り替えを検討し始めたOracle JDKユーザーは2023年の72%から、2024年には88%に増えた。Oracle JDKユーザーの82%が、その価格設定に懸念を示していることも分かった。

 だがセラーズ氏は、一部の回答者からは価格上昇の直接的な影響が見えづらいと語る。これは、Oracle JDKの費用を開発部門以外の部門が支払っている場合があるためだ。

 企業はしばしばJavaをネットワークやサーバと同様に共有インフラとして扱い、その費用をIT部門や情報システム部門の全体予算から支払う。個々のアプリケーションに対する費用配分が明確ではないため、実際のライセンス費用が見えにくい。アプリケーションを使う部門も、最終的なライセンス費用の支払い責任者ではない。セラーズ氏によると、企業は各部門が直接制御できる範囲でコスト削減を図り、自身の管理下にないOracle JDKのライセンス料を個別に見直すことはあまりない。

 調査結果は、OpenJDKで同じ機能を利用可能であるため、Oracle JDKを使用する必要がないと考え始めているOracle JDKユーザーがいることも示している。「制限のある商用ライセンスよりも、オープンソースを選ぶ理由は明らかだ」とセラーズ氏は述べる。

 セラーズ氏は、Oracleが積極的にライセンス監査を実施して、Oracle JDKユーザーに使用状況の報告を頻繁に求めていると説明する。「監査から逃れ、管理の省力化とコスト削減を求めるのであれば、商用ライセンスが不要なオープンソースに移行することが懸命だ」と同氏は助言する。

移行に伴う技術的な課題

 Azulは企業のOracle JDK利用状況の把握や代替製品への移行を支援している。企業が複数の異なるバージョンのJDKを使っている場合、それぞれを適切なバージョンのJDKに置き換える必要があるため、移行作業は複雑になりがちだ。適切に移行できなければ、特定バージョンのJDKに依存するJavaアプリケーションが動作しなくなる恐れがある。

 「Oracle JDKからの移行における課題の一つは、Oracleが四半期ごとに膨大な件数のアップデートを提供していることだ」とセラーズ氏は指摘する。

 問題をさらに複雑にしているのが、JDKのメジャーバージョンとマイナーバージョンごとにパッチ(修正プログラム)やアップデートが存在することだ。「Oracle JDKから移行する際、使用している全てのバージョンに適した代替製品を確保できなければ、互換性の問題が発生することが大きな障壁になっている」とセラーズ氏は強調する。

 Javaの普及状況を考慮すると、今後も企業のアプリケーション開発において主要な役割を担い続けるだろう。一方でIT責任者は、Oracle JDKから費用対効果が高い代替製品への移行を積極的に進めることが見込まれる。

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