優秀なプログラミング言語の一つに「Java」があるが、どのタスクにも適するわけではない。Javaと他の言語との比較を通して、適切なプログラミング言語を選ぶヒントを解説する。
開発者に人気のプログラミング言語の一つに、汎用(はんよう)的かつ安定性や拡張性に優れた「Java」がある。「Javaで大抵のタスクをこなせるのではないか」と考える人もいるだろう。実際、Javaは大半のタスクをこなせるが、それが最良の選択肢であるとは限らない。他の言語と比較した場合、Javaにはどのような問題があるのか。
他のプログラミング言語と比較して、Javaの処理速度は決して遅いわけではない。大半のタスクを十分な速さでこなす。しかし、Javaではソースコードを直接ネイティブコードに変換せず、まず「バイトコード」という中間コードに変換し、仮想マシン(JVM)が解釈して実行する。これにより異なるPCやOSでの移植性が高まる反面、ネイティブコードと比較すると処理効率は落ちる可能性がある。
オペレーティングシステム(OS)や、一瞬の遅れも許されないようなシステムでは、ネイティブコードの使用が好ましい。ネイティブコードは中間コードを介さず直接実行されるため、処理速度は速い傾向にある。このような用途で使用されるプログラミング言語として、「C」「C++」がある。これらの言語では高速な処理が可能である一方、データ構造といった現代的な機能が欠けているのが弱点だ。近年は「Go」や「Rust」など新しい言語も登場しており、これらはネイティブコードとして高速な処理ができる他、データ構造といった便利な機能を豊富に備えている。
Javaへのよくある批判として、「単純なタスクでも多くのソースコードを書く必要がある」というものがある。確かに、他の言語と比較するとJavaは記述量が多い傾向にあるが、CやC++と比較すると、それほど冗長というわけではない。さらに近年、Javaの冗長性を軽減するための機能改善も進んでいる。
ただし、ソースコードの簡潔さでは、他の言語に劣る場合もある。例えばPythonや、「JavaScript」「Mojo」といった言語は、短いソースコードで記述できるため、開発スピードを高めやすいとされている。筆者はJavaとPythonの両方でプログラムを書いた経験があるが、特にプロジェクトの初期段階では、JavaよりもPythonやJavaScriptといった簡潔な言語を用いた方が、方針変更や大幅なソースコード修正にも柔軟に対処できると考える。
一方で、プロジェクトの後半にアーキテクチャが固まってくると、ソースコードの安定性やスケーラビリティ(拡張性)が重視される傾向にあるため、Java、Python、JavaScriptのいずれの言語を使用しても、生産性の差はなくなってくると考える。設計が安定して変更が少なくなることで、ソースコードの簡潔性よりも、品質や一貫性が重要となってくるためだ。
Javaには、「ランタイム(実行環境)のバージョンが断片化し、統一されていない」という問題がある。例えば、Javaの古いバージョンである「Java 8」やそれ以前のバージョンから、最新のバージョンに至るまで、幾つものランタイムが今でも並行して使われており、それぞれに異なる仕様や機能が存在する。
一方で、PythonやMojo、「.NET」といった言語では、いずれも最新バージョンのランタイムに統一される傾向が強く、開発者やユーザーはどの環境でも一貫した動作を期待できる。
JavaScriptや「TypeScript」でも「ランタイムの分裂」という問題があるが、これらの言語で使用される「Node」と「Bun」のバージョン数は、Java仮想マシン(JVM)と比べて少なく、異なるバージョンによる互換性の問題も比較的軽微だ。
Java 8以降、Javaには幾つもの変更が加えられており、そのため異なるバージョンのランタイム環境間でソースコードの互換性を保つのが難しい場合がある。特に、デプロイ先の環境を完全に管理できない場合、期待通りに動作しないリスクが生じる。反対に、全て自分で全て管理できる場合は、この問題は軽減される。
Javaは事前構築済みのコンポーネント(部品)パッケージが豊富に用意されており、それらを利用することでプログラムを簡単に構築できるようになっている。ただし、Javaのパッケージ管理の仕組みは他の言語と比べると複雑で、初心者には学習のハードルが高く感じられることがある。
例えば、Pythonでは「PIP」、.NETでは「NuGet」、JavaScriptやTypeScriptでは「NPM」といった、パッケージの管理とインストールを簡単に実施できるツールが提供されている。「Go」では、ソースリポジトリから直接パッケージを取得できる仕組みが整備されており、いずれもパッケージの公開や利用が簡単にできる点が特徴だ。
一方で、Javaの代表的なパッケージ管理システムである「Maven」は、C言語の設定ファイル「makeファイル」をほうふつとさせるもので、依存関係を明示する「XMLファイル」を手動で設定する必要があり、その煩雑さが初心者にとっては負担になりやすいとされている。
そのため近年は、上述のPythonやJavaScriptといった言語のパッケージ管理が、利便性の観点から注目されており、新しいパッケージもこれらの言語向けに開発されることが増えている。結果として、Java以外の言語で作成されるライブラリが増え、Javaでの開発における選択肢も狭まりつつある状況だ。
Javaは優れた汎用プログラミング言語であり、幅広いタスクに使える。とはいえ、開発者は1つのプログラミング言語に固執せずに、その作業に最適な言語を使うことに前向きになろう。
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