サーバが“不要”なデータベース「SQLite」とは? オープンソースDB4選オープンソースデータベース12選【第3回】

企業のデータ管理に欠かせないDBMS。オープンソースやそれに類似するソースアベイラブルなDBMSのうち、主要4製品と、それらの特徴やライセンス、用例、サポート体制などの概要をまとめた。

2025年06月16日 05時00分 公開
[Sean Michael KernerTechTarget]

関連キーワード

データベース | オープンソース | RDBMS


 特定のベンダーが開発、管理するプロプライエタリ(ソースコード非公開の商用製品)なデータベース管理システム(DBMS)が主流だった状況は変わり、現在はソースコードが公開され、コミュニティー主導で開発を進めるオープンソースのDBMSが広く普及している。オープンソースと似た概念として、ソースコードは閲覧可能だが、オープンソースとは利用条件が異なる「ソースアベイラブル」なDBMS(ソースアベイラブルデータベース)もあり、オープンソースDBMSと共に浸透しつつある。

 本稿は主要な12個のオープンソースおよびソースアベイラブルなDBMSのうち、5〜8個目について、それぞれのDBMSの機能、利用例、ライセンス、商用サポートを解説する。

5.SQLite

 「SQLite」は、アプリケーション内部で動作する軽量な組み込み型RDBMSだ。2000年、コンピュータアナリスト兼プログラマーのリチャード・ヒップ氏が開発した。ヒップ氏はその後、ソフトウェアエンジニアリング企業Hipp, Wyrick & Company(Hwaci)を設立し、ソフトウェア開発を主導している。

 組み込みデータベースであるSQLiteは自己完結型であり、組み込まれたアプリケーション内で全ての機能が完結する。データの整合性と信頼性を保証する「ACID特性」(原子性、一貫性、独立性、永続性)を満たすトランザクション処理が可能な、SQLクエリを取り扱うことができるデータベースエンジンを内蔵する。独立したデータベースサーバは使用しない。データや機能、仕組みを含む全てのデータベース構成要素が、単一のファイルにまとめて保存される。

主な用例

 SQLiteは、動作に必要なメモリやストレージ容量の小ささと、サーバなしで動作する構造から、モバイルアプリケーションやWebブラウザ、IoT(モノのインターネット)デバイスで広く活躍している。

ライセンス

 SQLiteのソースコードはパブリックドメインであり、ライセンスなしであらゆる目的のために自由に使用、変更、配布できる。法的な理由でライセンスが必要な企業に向けて、Hwaciは有償ライセンスを販売している。これはSQLiteの正当な権利者であることを示す権原保証と、永続的な使用権を組み合わせたものだ。

商用サポート

 Hwaciは有償の技術サポート、メンテナンス、テストサービスを提供している他、別途ライセンスで販売されるSQLite向け拡張機能群も提供している。「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」でSQLiteを稼働させることも可能だ。

6.Apache Cassandra

 「Apache Cassandra」は、複数の列を持つ表形式でデータを格納する、ワイドカラム型DBMSだ。Facebook(現Meta Platforms)社内が開発したApache Cassandraは2008年にオープンソース化され、2009年にオープンソースソフトウェアの開発プロジェクトを運営する非営利団体Apache Software Foundationの管理下に入った。

 耐障害性に優れた分散データベースである点がApache Cassandraの特徴だ。これによって、複数のサーバで構成されるサーバクラスタで、大量のデータを保存、管理できる。単一障害点をなくすために、複数のサーバノードにデータを複製する。処理要求に応じてクラスタにサーバを追加すれば、動的なスケーリングも可能だ。

 Apache Cassandraは一時的なデータの不整合を許容し、最終的なデータの整合性のみを確保する「結果整合性」モデルを採用しているため、トランザクション処理用途には制約が生じる場合がある。この点についてApache Software Foundationのプロジェクトメンバーは、Apache CassandraがACID特性を満たしたトランザクション処理ができるよう開発を進めている。

主な用例

 Apache Cassandraは処理速度、スケーラビリティ、高可用性が求められる用途向けに設計されている。在庫管理、電子商取引、ソーシャルメディア分析、メッセージングシステム、通信など、さまざまなアプリケーションがApache Cassandraをデータベースとして利用している。

ライセンス

 Apache Cassandraは、オープンソースライセンス「Apache License 2.0」の下で公開されている。

商用サポート

 DataStax、Aiven、Instaclustr(2022年にNetAppが買収)など、複数のベンダーがApache Cassandraの商用サポートやDBaaS(Database as a Service)版を提供している。AWS社の「Amazon Keyspaces (for Apache Cassandra)」、Microsoftの「Azure Managed Instance for Apache Cassandra」は、データベースサービスとしてApache Cassandraを利用できるクラウドサービスだ。

7.Apache CouchDB

 「CouchDB」は、ソフトウェアエンジニアのダミアン・カッツ氏が2005年に公開し、2008年にApacheプロジェクトとなったNoSQLドキュメントデータベースだ。名前の「Couch」は「clusters of unreliable commodity hardware」(信頼性の低い安価なハードウェアによるクラスタ)の頭字語で、ありふれたハードウェアで効率的に動作する信頼性の高いデータベースシステムを構築するという、プロジェクトの当初の目標に由来する。CouchDBは単一のサーバノードでも、クラスタ内の複数のサーバノードにまたがる単一の論理システムとしても運用でき、必要に応じてサーバノードを追加することによるスケーリングも可能だ。

 データの保存にデータ記述言語「JSON」を、クエリ用言語にスクリプト(簡易プログラム)言語「JavaScript」を使用するのがCouchDBの特徴だ。複数エンドユーザーが同時にデータを読み書きする際、処理が衝突しないようにする「多版型同時実行制御」(MVCC)を実装している点、ACID特性を実現している点も主な特徴として挙げられる。ただし複数のサーバノードにまたがるデータについては、可用性とパフォーマンスを優先させるために結果整合性モデルを採用している。その結果、データの完全な一貫性が保たれないことには注意が必要だ。CouchDBは、前回の同期からの変更分のみを複製する増分レプリケーション機能を用いて、サーバノード間でデータを同期する。この仕組みを通じて、モバイルアプリケーションをはじめとする、一時的にオフラインになるアプリケーションであってもデータを最新に保てる。

主な用例

 CouchDBはデータ分析、時系列データの保存、オフラインでのデータ保管と稼働が求められるアプリケーションなど、さまざまな目的で利用できる。

ライセンス

 CouchDBはApache License 2.0の下で保護公開されている。

商用サポート

 IBMのクラウドデータベース「IBM Cloudant」はCouchDBをベースにしており、全文検索機能、地理空間インデックス(地理情報を表すインデックス)の作成機能が追加されている。CouchDBのサポートサービスを提供するベンダーは複数ある。中でもAWS、Microsoft Azure、Google Cloudでは、CouchDBがインストール済みの仮想サーバを利用できる。

8.Neo4j

 「Neo4j」は、データ間の関係性の表現と操作に適したNoSQLデータベースだ。個々のエンティティー(実体)を表す「ノード」と、ノード間がどのように接続されているのかを定義する「リレーションシップ」(「エッジ」とも呼ばれる)から成る「グラフデータ」を扱う。ノードとリレーションシップには、それらをさらに詳細に説明するために、キーと値を組み合わせたプロパティー(属性)を含めることもできる。

 2007年にオープンソースソフトウェアとして登場したNeo4jは、データベースベンダーのNeo4j社が管理している。テキストや画像をベクトルに変換して類似性を計算する「ベクトル検索」、ベクトル形式でのデータ管理などの機能が追加、拡張されてきた。

 Neo4jの主な特徴には、ACID特性を満たすデータ処理、自律的なサーバクラスタリングによるスケールアウト、クエリ言語「Cypher」の採用が挙げられる。Neo4j社は、2024年4月に国際標準化機構(ISO)が発行したグラフデータ用の標準クエリ言語「GQL」に、Cypherを準拠させつつ、さらなる機能強化を図る計画だ。

主な用例

 ソーシャルメディアにおける人間関係の分析、商品のレコメンデーションエンジン、ITインフラ運用でのサーバやアプリケーション間の依存関係の可視化、物の流れを追跡することによるサプライチェーン管理などが、Neo4jの主要な用例だ。ベクトル検索機能を、画像やテキストを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」に応用する用例も登場してきた。

ライセンス

 オープンソース版の「Neo4j Community Edition」は、オープンソースライセンスの「GPL」(GNU General Public License)バージョン3でライセンスされている。Cypherのオープンソース版「openCypher」は、Apache License 2.0下で利用可能だ。

商用サポート

 Neo4j社は、クローズドソースの機能を追加した「Neo4j Enterprise Edition」や、サブスクリプション形式のクラウドデータベースサービス「Neo4j AuraDB」など、複数のサポート付き商用製品を提供している。


 次回は、9〜12個目のオープンソースデータベースおよびソースアベイラブルデータベースを紹介する。

TechTarget.AIとは

TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...