導入しやすさやカスタマイズ性など、オープンソースデータベースを使うメリットは複数ある。「MySQL」「MariaDB」をはじめ、主なオープンソースデータベース4つの特徴や用例、ライセンスをまとめた。
以前のデータベース市場は、ソースコードが公開されておらず、特定のベンダーが開発、管理するプロプライエタリ(ソースコード非公開の商用製品)なデータベース管理システム(DBMS)が主流だった。現在はこの構造とは対照的な、ソースコードが公開され、コミュニティー主導で開発を進めるオープンソースのDBMSも、企業アプリケーションで活躍するようになっている。ソースコードは閲覧可能だが、オープンソースとは利用条件が異なる「ソースアベイラブル」なDBMS(ソースアベイラブルデータベース)も同様だ。
以下では主要なオープンソースおよびソースアベイラブルなDBMSを紹介する。各データベースの項目では、主要な機能、利用例、ライセンス、商用サポートの選択肢を取り上げている。自社のアプリケーション要件に適したデータベースを選択する際の参考にしてほしい。
「MySQL」は代表的なオープンソースデータベースの一つだ。1995年、マイケル・ウィデニウス氏ら3人の開発者は共同でMySQL社を設立し、MySQLを公開した。同社は2008年にSun Microsystemsに買収され、2010年にはSun MicrosystemsがOracleに買収された。以来、OracleはMySQLをオープンソースソフトウェアとして保守しつつ、同社のデータベース製品群の中核に据えている。
リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)であるMySQLは、登場時からオンライントランザクション処理(OLTP)用データベースとして位置付けられてきた。現在でも主にトランザクション処理用途で使われる一方、Oracleのクラウドデータベースサービス「HeatWave MySQL」は、データ分析や機械学習アプリケーションの処理にも向いている。
MySQLが人気を博した大きな要因は、Web開発の初期を支えたオープンソース技術群「LAMP」の要素になったことだ。LはOS「Linux」、Aはサーバソフトウェア「Apache」、MはMySQL、Pは「PHP」「Perl」「Python」といったプログラミング言語を表す。現在も、MySQLは世界中のWebサイトを支えている。
他のRDBMSと同様、MySQLはデータの整合性と信頼性を保証する「ACID特性」(原子性、一貫性、独立性、永続性)を備える。そのため、Webアプリケーションサーバ、クラウドアプリケーション、コンテンツ管理システムなど、幅広い用途に向く。
MySQLは、オープンソースライセンスである「GPL」(GNU General Public License)バージョン2と、商用アプリケーションと共にデータベースを配布したい企業向けの商用ライセンスによるデュアルライセンス方式を採用している。
MySQLには複数の商用版実装が存在する。OracleはHeatwave MySQLの他に、「MySQL Enterprise Edition」「MySQL Standard Edition」など複数の選択肢を提供している。「Amazon Web Services」(AWS)、「Google Cloud」「Microsoft Azure」といったクラウドサービス群も、それぞれのデータサービス「Amazon Relational Database Service」(Amazon RDS)、「Cloud SQL」「Azure Database」でMySQLを利用可能にしている。Aiven、Perconaなどのサードパーティーベンダーも、クラウドサービスとしてMySQLを提供している。
「MariaDB」は、2009年にMySQLからフォーク(分岐)して誕生した。開発を率いたのは、MySQLの将来性に懸念を抱いて同年Sun Microsystemsを退社したウィデニウス氏が中心となるチームだ。開発当初はMySQLからそのまま置き換え可能な代替品として設計されていたが、バージョン5.6以降は、MySQLにはないMariaDB独自の新機能を搭載するようになった。
独自のデータベースソフトウェアになってからも、MySQLからMariaDBへの移行は比較的容易だ。MariaDBのデータファイルはMySQLと互換性があり、データベースとアプリケーション間の通信プロトコルも同じものを採用している。MySQLをアンインストールし、MariaDBをインストールするだけで移行が完了する場合がほとんどだ。
MariaDBは非営利団体MariaDB Foundationが管理を、ソフトウェア開発をMariaDB社が主導している。MariaDB社は、MySQLとの非互換性や機能差に関する情報を公開している。
MariaDBはMySQLと同様の目的で広く利用されている。トランザクション処理やデータ分析をはじめ、Webアプリケーション、クラウドアプリケーションでの利用が代表的だ。
無償のサーバソフトウェア「MariaDB Community Server」は、GPLバージョン2で配布されている。
MariaDB社は、「JSON」形式データや列指向データベース(データを列単位で格納するデータベース)を扱うことができる「MariaDB Enterprise Server」を販売している。MariaDB社から分社したSkySQLは、フルマネージドサービスのDBaaS(Database as a Service)を提供している。MariaDBはAmazon RDSやAzure Databaseでも利用できるが、Microsoftは2025年9月にAzure Databaseでの提供を終了する計画だ。
PostgreSQLは、1986年にカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)で「POSTGRES」として誕生した。このプロジェクトはRDBMSの先駆者であり、当時同校の教授だったマイケル・ストーンブレーカー氏が主導した。オープンソース化、データクエリ言語「SQL」のインタープリターが追加された後、1996年に「PostgreSQL」と改名された。誕生から数十年が経過した今でも、一部の開発者やベンダーは、PostgreSQLを指す言葉として「Postgres」を使う。
PostgreSQLはACID特性、SQLクエリを用いた操作、ストアドプロシージャ(データベースに対する複数の処理をまとめたもの)やトリガーを作成するための手続き型言語クエリなど、RDBMSの主要な特性と機能を備える。複数エンドユーザーが同時にデータを読み書きする際、処理が衝突しないようにする「多版型同時実行制御」(MVCC)も実装している。標準的なリレーショナルデータベース以外のデータベースも扱うことができ、公式サイトには「オブジェクトリレーショナルDBMS」との説明がある。
企業はしばしば、PostgreSQLをプロプライエタリRDBMSである「Oracle Database」の代替として使う。PostgreSQLは複雑なトランザクションや優れた同時実行性が求められるアプリケーション、データウェアハウスの実装が主な用途だ。
PostgreSQLは、OSI承認の「PostgreSQL License」の下で利用できる。
PostgreSQLにはさまざまな商用版やクラウドサービス版が存在する。PostgreSQLを専門に扱うベンダーEnterpriseDB(EDBの名称で事業展開)は、セルフマネージド版とマネージドサービス版の両方のPostgreSQLを提供している。AWS社、Google、Microsoft、Oracleの他、Aiven、Percona、Instaclustr(2022年にNetAppが買収)などのベンダーもPostgreSQLのマネージドサービスを提供している。
オープンソースRDBMS「Firebird」のルーツは、プロプライエタリデータベース「InterBase」が開発された1980年代初頭にまでさかのぼる。InterBaseの商用製品開発が終了し、最終リリース版がオープンソースライセンスで公開された後、そのソースコードを基にFirebirdプロジェクトが発足した。
Firebirdは、ACID特性を満たすトランザクション処理、開発者による独自の関数定義、さまざまなSQLクエリによるデータ処理が可能で、MVCCを備えることを特徴とする。稼働に必要なメモリやストレージ容量は比較的小さく、アプリケーションに組み込んで使用できるシングルユーザー版がある一方で、数百人が同時に利用する、数TB規模の巨大なデータベースの運用にも耐え得る。
Firebirdは業務アプリケーションと分析アプリケーションの両方を処理可能で、統合業務システム(ERP)などの企業向けアプリケーションを支えている。
Firebirdは、「InterBase Public License」(IPL)と「Initial Developer's Public License」(IDPL)の2つのライセンス下で提供される。これらはどちらも、OSI承認済みのオープンソースライセンス「Mozilla Public License」バージョン1.1の派生ライセンスだ。IPLはオリジナルのInterBaseのソースコードを、IDPLはFirebirdプロジェクトで開発、改良されたソースコードを対象としている。
Firebirdは特定のベンダー主導ではない、独立したオープンソースプロジェクトであり、商用利用を含めて無償で使うことができる。Firebirdの公式サイトは、商用サポート、コンサルティング、トレーニングサービスを提供するベンダーを紹介している。Firebirdのクラウドサービス版はAWS、Microsoft Azureで利用可能だ。
次回は、5〜8個目のオープンソースデータベースおよびソースアベイラブルデータベースを紹介する。
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