「VRエンジニア」とは、どのような職業なのか。具体的な業務内容や求められるスキル、働く上で知っておきたい心構えなどについて、業界関係者に聞いた。
「VRエンジニア」(VR:仮想現実)と聞くと、まず“VRゲームの開発者”を思い浮かべる人がいるだろう。それは間違いではないが、VRエンジニアの役割はゲーム開発にとどまらない。VRエンジニアの業務内容や求められるスキル、働きやすさとは。本稿はVRエンジニアの実態に迫る。
ソフトウェア開発企業King Crow Studiosは、VRやAR(拡張現実)、MR(複合現実)といったXR(Extended Reality)技術を手掛けている。同社でVRエンジニアを務めるスティーブン・ランシアート氏はVRエンジニアについて、「さまざまなアプリケーション向けに“没入型空間”を作り出す専門家だ」と説明する。その魅力は、新興技術を使い、従来なかったものを創造できる点だという。
「一般的なシステム開発者と比べて、VRエンジニアは、感覚やデザイン、ユーザーエクスペリエンス(UX)の高いスキルが求められる」。こう話すのは、バーチャルインタラクティブスタジオThe SkyWatcherでゲームディレクター兼創設者を務めるリザ・レズニック氏だ。
VRエンジニアには、以下の専門スキルが求められる。
「VRエンジニアは、1人で何役もこなさなければならない」とレズニック氏は話す。例えば、エンターテインメント業界で働くVRエンジニアは、以下の役割を担うことになる。
VRエンジニアの業務は、現実世界のオブジェクトを仮想空間にマッピングする作業がメインとなる。例えば、仮想空間内のオブジェクトの挙動が現実世界のものと異なっていて不自然な場合は、その部分を修正するといった具合だ。
プロトタイプ(試作品)を迅速に作成することも重要だ。スピード感を持って試行錯誤を繰り返すことで、効果的な施策を見つけ出せる。「VRの領域では、まだ明確な定義が定まっていないため、プロトタイプが特に重要だ」とレズニック氏は説明する。
テストのプロセスは、標準的な2D(2次元)環境とVR空間とでは大きく異なる。「仮想空間ではユーザーインタフェース(UI)の標準が確立されておらず、テストの自動化が難しいため、開発者の負担が大きい」。調査会社Forrester Researchでシニアアナリストを務めるアンドリュー・コーンウォール氏はこう指摘する。
「良い」「悪い」の基準は、技術の進化に伴って変わることがある。例えば、VRにおけるテキストの表示は、画質面の問題から長らく避けられてきた。しかし近年、専用フォントの開発や、VRヘッドセットの解像度向上により、この状況は変化しつつある。
このように技術の進化や基準の移り変わりが激しいVR領域の業務は大変になりやすいという。「開発者は技術進化のスピードに付いていく必要があり、かなりのプレッシャーがかかる」とコーンウォール氏は話す。学校を卒業したばかりの若者がゲーム業界の道に入るが、業務負荷に耐え切れない人もいる。「VRエンジニアは、積極的に新人教育やサポートを実施し、効率的に働ける環境を確保することが重要だ」と同氏は話す。
次回は、VRエンジニアのキャリアの始め方を紹介する。
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