VMware離れで追い風が吹く「Nutanixに続々移行」の実態とはわずか2週間で移行した例も

VMware買収後の製品提供方針の変更を受け、仮想化インフラの移行先の一つとして選ばれているのがNutanixだ。移行の動向や今後のITインフラの在り方について、同社の事業戦略を基にまとめる。

2025年05月15日 07時00分 公開
[渡邉利和]

 買収による製品ポートフォリオの整理やライセンス条件の変更を受けて、仮想化ソフトウェアベンダーVMwareのユーザー企業(以下、VMwareユーザー)が移行先を探しているという話が聞かれるようになった。移行先としてさまざまなユーザー企業が選択している製品の一つが、Nutanixの仮想化製品だ。

 AI(人工知能)アプリケーションの運用支援強化やコンテナへの移行支援など、ユーザー企業のアプリケーション環境のモダイナイズをしっかりと支えていくという戦略を打ち出しているNutanix。米本社CEOも交えて2025年4月に実施された同社の事業戦略説明会から、仮想化インフラ移行の動向や、企業のITインフラのこれからの在り方について見ていこう。

「VMwareからNutanixへの移行」が加速する実態

 まず国内事業の状況を説明したニュータニックス・ジャパンの金古 毅氏(代表執行役員社長)は、現在同社が注力している領域として「インフラのモダナイゼーション」「アプリケーションのモダナイゼーション」「エンタープライズAIの実現」を三本柱として挙げ、それぞれの国内における進捗(しんちょく)について説明した。

画像 ニュータニックス・ジャパンの金古 毅氏

 インフラに関しては、「VMware ESXi」をはじめとする他社製ハイパーバイザーから同社のハイパーバイザー「AHV」への新たな乗り換え事例を紹介した。ユーザー組織と移行対象システムは以下の通りだ。東海理化はVMwareの買収に伴うリスクを回避することが目的の一つだったという。

  • 倉敷中央病院
    • 電子カルテシステムなどの医療情報システム
  • STNet
    • データセンターサービス
  • 東海理化
    • 自動車用各種スイッチなどの製造関連

 金古氏はその他、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)技術を基盤とし、クラウドサービスや自動化、統合機能を備えたハイブリッドクラウドインフラのための包括的な製品群「Nutanix Cloud Platform」への移行事例を2件紹介した。

  • JR北海道(北海道旅客鉄道)
    • 鉄道のオペレーション、保線、ロボットによるプロセス自動化(RPA)、人事などのコアなアプリケーション
  • TIS
    • 金融業界向けのクレジットカード決済管理、会員管理、ポイント管理など、データベースを含めたミッションクリティカルなシステム

 ニュータニックス・ジャパンはこうした移行事例に加え、日本独自のコンサルティングサービスメニューとして「Nutanix Kubernetes Platform コンサルティングサービス」の提供開始も発表した。金古氏は「クラウドネイティブのモダンアプリケーション開発・ライフサイクル管理を目指しているお客さまへの技術支援の推進を日本独自のコンサルティングサービスメニューとして提供するもの」と説明し、同サービスの意義について2点を強調した。1つ目は、コンテナ化のための支援を提供することでアプリケーションのモダナイズに寄与すること。2点目は、Nutanixがコンテナオーケストレーター「Kubernetes」を製品として提供する「Nutanix Kubernetes Platform」が、「Nutanix Enterprise AI」を運用するためのベースになり、AI活用の推進を支援する取り組みになるということだ。Nutanix Enterprise AIは、AI(人工知能)アプリケーションを運用するための製品群となっている。

2週間でスムーズに移行した事例も

画像 Nutanixのラジブ・ラマスワミCEO

 NutanixのCEO、ラジブ・ラマスワミ氏はグローバルの状況について説明した。Broadcomによる買収以来、VMwareユーザーが他の仮想化製品に乗り換える動きが続いていると言われている。実際、Nutanixは四半期(3カ月)で700件以上の新規顧客を獲得した実績があるという。

 具体的には以下の事例が紹介された。


  • 大規模な金融サービス事業者
    • 12カ月で2万4000台の仮想マシン(VM)をNutanix製品に移行
  • 経済誌『Fortune』の売上高ランキング「Fortune global 500」に入る保険事業者
    • 9カ月で1万2000台のVMを移行
  • フロリダ州の民事訴訟事務所
    • 2週間で100台のVMを移行

 これらの事例について、ラマスワミ氏は移行のスムーズさを強調した。特に着目すべきがフロリダ州の民事訴訟事務所の例だ。業務上重要なアプリケーションを実行してはいるものの、規模的にはVM数で見れば100台程度で大規模という程ではなかったが、Nutanixの自動化ツールなどを活用しつつ、ユーザー企業自ら移行作業を実施し、2週間で完了させたという。

 パートナーシップ拡大の取り組みとしては、他社製ストレージを外部ストレージとして利用可能にする計画の説明もあった。まず対象になるのがDell TechnologiesのSDS(ソフトウェア定義ストレージ)製品「PowerFlex」だ。ラマスワミ氏は「現在多くのユーザー企業がテスト中(アーリーアクセス)で、2025年5月または6月には一般提供を開始できるのではないかと期待している」と語った。外部ストレージの対象が広がることで、VMware ESXiなどの他社製品からAHVに移行することが可能になるなど、さらに移行しやすさが向上することが期待される。

外部ストレージの選択肢が拡大

 2025年5月7~9日に開催されたNutanixのプライベートイベント「Nutanix .NEXT 2025」では、外部ストレージとして新たにPure Storageのオールフラッシュストレージ製品「FrashArray」も利用可能になると発表された。Dell TechnologiesのPowerFlexに続いて、利用可能なストレージのラインアップが拡大している形だ。Pure Storageは永続的にアップデートが保証されるサブスクリプション「Evergreen」を提供しており、長期的に運用を継続するユーザー企業が多いことでも知られる。ユーザー企業にとっては導入済みのFlashArrayの運用を継続しつつ、Nutanix製品の環境に組み込んで活用することも可能になる。

 この他Nutanix .NEXT 2025では、もともとVMとSDSを中核要素としていたHCIをコンテナベースで再構築した形となる「Cloud Natvie AOS」(一般提供は2025年夏を予定)も発表された他、AI分野でのNVIDIAのパートナーシップの強化など、さまざまなアナウンスがあった。

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