AIコーディングツールは開発効率を向上させる能力を秘める一方で、プライバシーやライセンスの問題も抱えている。どのようなツールが自社に合い、どのような場面で真価を発揮するのか。
コーディングをAI(人工知能)技術で支援する試みは、開発者の作業効率を向上させる可能性を秘めた技術として注目を集めている。本稿は主要な7つのAIコーディングツールのうち4つを紹介する。開発者の日常業務を快適にし、プロジェクトや企業のニーズに最適なツールを見極めるために、その違いを理解しよう。
「Continue」は、「Visual Studio Code」や「IntelliJ IDEA」といった主要なIDE(統合開発環境)の拡張機能として動作する、AIコーディングツールだ。
Continueは無料のオープンソースとして提供されている。ただしどの大規模言語モデル(LLM)を利用するのかによって費用は変わる。OpenAIの「GPT」やAnthropicの「Claude」といったLLMを利用する場合は料金が発生するが、「Mistral」やMeta Platformsの「Llama 3」といった無料のLLMを使えば費用を抑えることができる。
複数人での利用に適した管理機能が使える有料プランもあり、1ユーザー当たり月額10ドルの「Team」プランと、利用料要相談の「Enterprise」プランがある。
Continueは、開発者が普段使用しているIDEにAIコーディング機能を組み込むことを目的として設計されている。Continueに組み込まれたチャットbotは、ファイルに関する質問に答えたり、新しいソースコードの記述を支援したりできる。オートコンプリート機能も備えており、開発者のソースコード入力中にリアルタイムで提案を表示する。
既存のコードブロック(ソースコードのまとまり)を選択してAIモデルに解析や編集を依頼することも可能で、ソースコード全体を書き換えずに部分的な修正を加えるのに有用だ。よく使う操作にショートカットを割り当てたり、お気に入りのプロンプトを保存して再利用したりすることもできる。
「Cursor」は自然言語の命令によるソースコード生成機能、オートコンプリート機能、エンドユーザーが与えたソースコードを参照情報として活用できるチャットbotを備えたAIコーディングツールだ。
Cursorには無料プランに加えて、以下の2種類の有料プランがある。無料プランにはProプランの2週間のトライアルが付属する。いずれの有料プランも、年額契約の場合は20%割引が適用される。
エンドユーザーは、プロンプトを入力して新しいソースコードを生成したり、AIモデルによる補完や提案を活用して既存のソースコードを編集したりできる。Cursorのチャットbotはエンドユーザーのプロジェクト内のファイルを参照でき、画像を含む問い合わせへの応答、Web検索による追加情報の取得も可能だ。
無料プランでは月2000回のソースコード補完と、50回のプレミアムモデルへの低速リクエストができる。プレミアムモデルには「GPT-4」「GPT-4o」「Claude 3.5 Sonnet」などが含まれる。Proプランではソースコード補完とプレミアムモデルへの低速リクエストが無制限になり、プレミアムモデルへの高速リクエスト500回と、1日10回OpenAIの推論モデル「o1-mini」を利用可能になる。Businessプランでは、請求の一元管理や使用状況のダッシュボードなど、管理・セキュリティ機能が強化される。
Cursorにはプライバシーモードがあり、有効化するとソースコードをローカルストレージに保存してAIモデルの学習に使われないようにする。プライバシーモードは全てのCursorユーザーが利用可能だ。Businessプランでは、チーム全体に対してプライバシーモードを強制的に適用することもできる。
「GitHub Copilot」は、Microsoft傘下のGitHub社がOpenAIと共同で開発したAIコーディングツールだ。Visual Studio Codeをはじめとする複数のIDEと連携して動作する。
GitHub Copilotには以下の3つのプランがある。
BusinessおよびEnterpriseプランの料金については、利用人数によって割引が適用される可能性があるため、営業担当への問い合わせが推奨されている。
全てのプランで、開発者がAIチャットbotとの会話を通じてソースコードに関する質問をしたり、リアルタイムのソースコード補完や提案を受けたりすることができる。GitHubのプルリクエスト(ソースコードの変更内容のレビューを受けて統合すること)に自動で説明文を追加する機能もある。サードパーティー製拡張機能やIDEと連携できる他、モバイルアプリケーションも提供されている。
BusinessおよびEnterpriseプランでは、利用状況の分析機能やセキュリティ機能を利用可能だ。具体的には、ユーザー企業のデータをAIモデル学習から除外する設定、生成されたソースコードに対する知的財産の保証、SAML(Security Assertion Markup Language)によるシングルサインオン(SSO)認証などがある。
Enterpriseプランでは、調整済みのAIモデルなどの追加機能が順次実装されており、一部は提供開始まで順番を待つ必要がある点には注意が必要だ。
「Tabnine」は主要なIDEと連携できるAIコーディングツールで、ソースコード補完、チャットbot、企業向けのAIモデルカスタマイズ機能を備える。
Tabnineには無料プランに加えて、以下の2つの有料プランがある。
Tabnineの主な機能はソースコード補完である一方、複数のAIモデルを利用できるAIチャットbotとの対話機能も可能だ。Visual Studio Code、IntelliJ IDEAなどの主要なIDEと互換性があるため、さまざまなプログラミング言語やツールを使う開発チームでも利用しやすい。
ソースコードの提案は、ライセンス上問題のないソースコード群のみに基づいて生成されるため、法的なリスクを軽減できる。Proプラン以上では、社内のソースコード群を参照情報として活用できる他、管理機能、プロジェクトマネジメントツール「Jira Software」との連携、タスク自動化を支援するAIエージェントなども利用可能になる。
Enterpriseプランでは、SSOや知的財産の保証といったセキュリティ機能に加え、特定のソースコード群に最適化したAIモデルの微調整といったカスタマイズも可能だ。これによって、複雑あるいは特殊なシステム構成を持つ企業でも導入しやすくなっている。
Tabnineはクラウドサービス、オンプレミスシステム、仮想プライベートクラウドなど、多様な導入形態を提供している。Enterpriseプランでは、AI技術活用に関するトレーニングを受けることが可能だ。
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