HDDやSSDがストレージの主流となる中でも、CDやDVDなどの光ディスクは一定の存在感を保っている。その基本的な仕組みから長所と短所、主要な用途までを解説する。
光ディスクは、低出力のレーザー光を用いてデータの書き込みおよび読み取りを実施する記録媒体だ。近年一般的に使用されている光ディスクには、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多用途ディスク)、Blu-ray Discの主に3つの種類がある。
HDDやSSDが飛躍的な進化を遂げる一方で、光ディスクはなぜ利用され続けるのか。その基本的な仕組みから、長所と短所、主要なユースケースまでを分かりやすく解説する。
光ディスクは、赤色または青色のレーザー光によってデータの記録および読み取りを実施する。一般的には直径12センチ(4.7インチ)の平らで円形の形をしており、データはディスク表面に微小な「ピット」や「ランド」として記録される。ピットは反射層に刻まれたくぼみであり、ランドはその周囲にあるくぼみのない平坦な部分を指す。
光ディスクに使われる記録材料は、その用途によって異なる。音声や映像が収録される市販の光ディスクには、アルミのような安価な材料が使用されることが一般的だ。一度だけ書き込みが可能なライトワンスディスクや、繰り返し書き換えが可能なリライタブルディスクには、さまざまな種類のデータを記録できるように、より高価な材料が用いられる。
データはディスクの中心から外周に向かってらせん状に書き込まれる。ディスクが回転する間、レーザー光を照射し、ディスク表面のピットとランドによる反射光の変化を検出することで0と1のbit(デジタル情報の最小単位)が読み取られる。
光ディスクの商業利用が始まった当初、光ディスクは同サイズの磁気記録媒体と比べてはるかに多くのデータを保持できた。しかしその後、HDDの技術が飛躍的に向上し、1センチ当たりの記録容量で光ディスクを大きく上回るようになった。SSDも容量や耐久性の面で進化を遂げ、同時に容量価格も着実に下がっている。
とはいえ光ディスクには、「耐久性」という大きなメリットがある。磁気テープやHDD、SSDと比べて経年劣化しにくく、電力サージ(一時的に電圧が上がること)や磁気障害といった外的要因の影響も比較的受けにくい。このため光ディスクは、音楽や映像などの市販コンテンツ向けに適する他、コールドストレージ(アクセス頻度の低い大量のデータを扱うストレージ)などのバックアップやアーカイブ用途に適している。
近年主流となっている3種類の光ディスクの容量は以下の通り。
これらの光ディスクはいずれも、直径120ミリ(4.7インチ)、厚さ1.2ミリ(0.05インチ)の共通サイズで設計されている。サイズが統一されているため、Blu-rayドライブではDVDやCDも再生可能であり、DVDドライブではCDの読み書きが可能だ。ただし、互換性は一方向のみに働くため、CDドライブではDVDやBlu-rayを再生できず、DVDドライブではBlu-rayを再生できない。
CD、DVD、Blu-ray Discは、それぞれ以下のような用途別フォーマットで提供されている。
光ディスクは映画やTV番組、音楽、ビデオゲームの保存用途に広く使用されており、家庭用エンターテインメント機器や自動車内の再生システムなどにおいては依然として光ディスクの人気がある。
他にも、長期保存用のアーカイブストレージやバックアップストレージ、業務用および個人用ソフトウェア、オペレーティングシステム(OS)、ソフトウェアの更新やパッチ(修正プログラム)配布に活用されている。
学術機関における教材や、企業における研修用コンテンツの配布手段としても光ディスクが使用されている。しかし近年は、ユーザーがコンテンツをダウンロードするようになっており、光ディスクは使われなくなっている。
光ディスクの主な長所は、「手軽さ」「耐久性」「使いやすさ」だ。その他にも次のような利点がある。
一方、光ディスクには以下のような短所がある。
これらの点を踏まえると、光ディスクは今後10年以内に、現在の技術革新によって時代遅れになる可能性も示唆されている。
光ディスクを製造している主要メーカーは以下の通り。
次回は、光ディスクのこれまでの進化と今後の技術展望について解説する。
記事掲載当初、本文でDVDを「デジタルビデオディスク」の略称として記載していましたが、正しくは「デジタル多用途(バーサタイル)ディスク」の略称です。おわびして訂正します。本文は修正済みです。
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