「VMware」から「Nutanix」に乗り換えたユーザー企業の“本音”とはNutanixに移行した企業が語る【前編】

Nutanixは、VMware製品から自社の製品に移行した組織をイベントに招き、座談会を実施した。各組織はどのような課題を抱えていたのか。

2025年06月11日 07時00分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

 半導体ベンダーBroadcomによる仮想化ベンダーVMwareの買収を契機として、Nutanixなどのベンダーがチャンスをうかがっている。Nutanixが2025年5月に開催した年次イベント「Nutanix .NEXT 2025」では、同社のハイパーコンバージドインフラ(HCI)ソフトウェア「Acropolis」とハイパーバイザー「AHV」、そしてユーザー企業の仮想化基盤移行が主要なテーマだった。

 Nutanixはユーザー企業の3社をイベントに招き、VMware製品からNutanix製品に移行した理由や経緯について語ってもらった。どのような内容だったのか。

VMwareからNutanixに切り替えた理由とは

 Nutanixが招いたユーザー企業とその担当者は次の通りだ。

  • オーストラリアで土木業務や鉱山開発業務を営むGolding Contractors(以下、Golding)のIT管理者ドム・ジョンストン氏
  • 三井住友海上火災保険(MSIG)の子会社であるMSIG Asiaのインフラ・業務担当バイスプレジデント、キー・ユー・ウェイ氏
  • 米国海軍で、病院船(負傷兵や海難者らを収容し、治療しながら輸送する船)の「Mercy」と「Comfort」を運用するマイク・テイラー氏

―― VMwareからNutanixに切り替えた経緯は。

ジョンストン氏 Goldingはクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)でVMwareのインフラを利用する契約を結んでいた。2025年2月まで3年間の契約となっていたが、2024年3月ごろ、VMwareとAWSの関係が変化した。

 自分たちの状況が不透明になった。約3カ月の間に議論を重ねた結果、3年間の契約が終了した後も当時のインフラを使い続けるリスクは深刻だと判断した。

 市場で代替製品を探した結果、Nutanixが浮上した。従来は災害対策(DR)のワークロード(処理やタスク)にはVMwareのDRツール「VMware Cloud Disaster Recovery」を利用していたが、クラウドサービスでNutanixの仮想環境を利用できるサービス「Nutanix Cloud Clusters」(NC2)を使用して、AWSのDR用ツールを利用している。

 もし災害が発生した場合、直ちにこのDR環境を起動してワークロード受け入れの態勢を整えるというのがわれわれのDR戦略だ。それが不要な場合は再び停止させる。これでコンピューティング使用量の損失は数百ドル程度で済む。

ウェイ氏 当社とNutanixの関係は2017年に始まった。当時のわれわれはサーバ、ストレージ、ネットワークで構成する3層型のシステムを廃止して、データセンターの設置面積を縮小するためのHCIを探していた。そこで候補に挙がったツールがNutanixのAcropolisだった。Nutanix製品を数年間使って信頼できると判断し、VMware製品で構築していた仮想化基盤を、最近になって全てAHVに切り替えた。移行が完了したのは2025年4月だ。

 移行を決断した理由はBroadcomによるVMwareの買収だ。更新後の料金が4倍から5倍になるという見積もりを提示されたことから、Nutanixへの移行を決断した。

 移行プロジェクトは、2024年第3四半期(2024年7〜9月)に着手し、2025年第2四半期(2025年4〜6月)に完了する慎重な計画で進めた。その中で私のチームは、2024年第4四半期(2024年10〜12月)から、1000〜2000台の仮想マシン(VM)の移行を担当して、2025年4月に完了した。2025年5月時点では全てのシステムがNutanixの仮想化基盤で稼働している。

テイラー氏 Nutanixとの関係が始まったのは2017年だった。われわれは以前からNutanixに目を付けていた。

 われわれの船では、ブレードサーバ(ブレードと呼ばれる細長い小型の筐体<きょうたい>にコンピューティング要素を詰め込んで抜き差しする構成のサーバ)1000台と、Dell EMCの階層型ストレージがラックを占領していた。

 船上で発電できる電力には限りがあることから、ラックの占有面積を縮小する必要があった。一方で、船上のITチームにとっては管理性や使いやすさも重要だった。

 そこでわれわれはDell Technologies、Cisco Systems、Nutanixの製品を比較して、Nutanixを2019年に病院船のMercyに、2020年にはもう一隻のComfortに導入した。

 2025年5月現在は、全ての仮想化基盤がNutanixに移行している。全機器の世代交代を検討中で、併せて冗長性や災害復旧の新機能の導入も検討している。そうなれば船には事業継続用のラックとミラーリングされたNutanixのフェイルオーバークラスタ(複数のサーバを束ねて障害時に切り替える構成)が搭載されるだろう。


 次回は3つの組織がVMwareからNutanixに移行を決断した背景を掘り下げる。

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