「VMware離れ」はどこまで進む? Broadcomと仮想化市場の狙い“脱VMware”は進むのか【後編】

VMwareの製品戦略変更によって、企業は代替技術への移行を検討し始めた。専門家はこの動きを単なる「VMware離れ」ではなく、クラウドネイティブ技術を取り込む機会だと捉えている。移行すべきかどうかを見極めるヒントを紹介する。

2025年05月14日 07時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

 仮想化ベンダーVMwareの買収後、半導体ベンダーBroadcomはVMware製品のラインアップやライセンス体系の変更など、さまざまな変革を推し進めている。特にプライベートクラウドおよびハイブリッドクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)への集中戦略に対して、企業から不満の声が上がっている。こうした状況下、OS「Linux」に組み込まれたハイパーバイザー「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)などのオープンソースツールが代替候補として台頭しつつあるものの、全面的な移行は進んでいない。仮想化市場は今後どのような動きを見せるのか。

これからの仮想化市場はどうなる?

 VMware製品からの脱却を図り、クラウドネイティブなツールや代替ハイパーバイザーを採用するといった大規模な移行は、時間がかかるものだ。だがKVMをはじめとする代替手段は、仮想化分野での経験が浅い企業の間で既に広がりつつある。

 ブライアン・キルシュ氏は、米Informa TechTargetの寄稿者で、技術専門学校Milwaukee Area Technical Collegeの講師兼ITアーキテクトだ。キルシュ氏は、2024年夏にBroadcomがVMwareの教育機関向けのライセンスを廃止したことが転機になったと指摘する。一部の教育機関は、将来同じようなリスクが発生することを避けるために、オープンソースの代替手段に目を向け始めたという。

 キルシュ氏の所属学部は、仮想化ベンダーProxmox Server Solutionsの製品を採用した。「Broadcomが大口顧客以外を軽視し続ければ、今後KVMが主流になる可能性がある」と同氏は語る。若い世代のIT人材の間ではオープンソースへの抵抗感が薄れており、移行がさらに進む可能性がある。

 KVMなどの競合製品の普及が進まない理由として、VMwareに比べてドキュメントやサポート体制、ユーザーコミュニティーの充実度が劣っている点を指摘する声がある。

 ベンダーやIT専門家がKVMなどのオープンソースツールの利点を強調する中、企業はVMware製品の更新を選択することになると、調査会社Forrester Researchのアナリストであるナビーン・チャブラ氏は見込む。

 「VMware製品の使用継続に前向きな企業は一部に過ぎない。だが、もし競合他社が本当に魅力的な仮想化製品を提供しているのであれば、なぜ売り上げが急増しないのか。代替製品を探す動機はあるが、実際に積極的な企業ばかりではない」(チャブラ氏)

 調査会社Data Center Intelligence Group(DCIG)のCEO兼プリンシパルアナリストであるジェローム・ウェント氏は、競合製品がVMware製品の成熟度や機能性にまだ追い付いていないと分析する。ウェント氏の見方では、ベンダーは革新的な仮想化製品の開発を急ピッチで進めているが、まだ市場には出ていないのが現状だ。

今後のBroadcom

 「『VMwareから離れたい』『BroadcomがVMware製品のラインアップを大幅に削減したことは受け入れがたい』といった声はよく耳にする」。BroadcomのVCF部門でクラウドエコノミクスを統括するドリュー・ニールセン氏は、VCFに対する否定的な世論を同社が把握していることを認める。

 「VCFは、『Amazon Web Services』(AWS)や『Microsoft Azure』といったクラウドサービスよりも、ハイブリッドクラウドを構築するためのインフラとして優れている」とニールセン氏は語る。同氏の主張によると、VCFの機能をフル活用すれば費用の削減が見込める。

 「VMware製品群の価値を最大限に引き出すにはVCFを受け入れなければならない。必要な機能だけを選んで使いたいという要望には応えられない」(ニールセン氏)

 BroadcomはVMwareのユーザーグループ「VMware User Group」(VMUG)向けに、個人利用版VCFの提供を開始した。将来的には教育機関向けの認定プログラムを通じて利用を拡大する計画がある。

 Broadcomの主張は企業の動向と一致する。ウェント氏によると、VCFの構成製品を有効活用しようとする意思のある企業が、その恩恵を受けている。「全てのライセンスを活用すれば、Broadcomの主張通りにコストを削減できるだろう。同等の機能を備える代替製品はなく、無理に探そうとすれば総所有コスト(TCO)は大幅に上昇する」と同氏は話す。

 タン氏によると、VMware製品を含むインフラストラクチャソフトウェア部門の売り上げは成長しており、永続ライセンスからサブスクリプション契約への移行も進んでいる。この成功は、Broadcomが当面は現在の戦略を維持することを示唆する。「現時点で新たな企業買収の計画はなく、VMware製品とAI(人工知能)向けプロセッサに注力する」と同氏はあらためて言及する。

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