「VMware依存」から脱却したい“企業の本音”と代替製品の実態“脱VMware”は進むのか【前編】

BroadcomによるVMwareの買収と、その後の方針転換は大きな衝撃を与えた。代替ハイパーバイザーやクラウドネイティブ技術などへの移行は実際に進んでいるのか。移行を検討している企業が考慮すべき要素とは何か。

2025年05月07日 07時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

 半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収した後、VMwareの仮想化製品を、買い切り方式からサブスクリプションサービスへの移行を進めている。「この取り組みは成功を収めている」とBroadcomのCEOホック・タン氏は述べる。

 タン氏は、プライベートクラウドおよびハイブリッドクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)は着実に普及しており、「VCFの利用拡大は、当社のさらなる成長につながる」と説明する。だがこの成長は順風満帆ではない。BroadcomがVCFの価値を強調する一方で、一部の顧客やパートナー企業は否定的な反応を見せている。

VMwareから離れたい企業の本音

 市場の競合他社や業界アナリストは、大半のVMwareユーザーが契約を更新しつつも、代替手段を探しているとの見方を示す。OS「Linux」に組み込まれたハイパーバイザー「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)や、プライベートクラウド構築ツール群「OpenStack」などのオープンソースツールが代替候補として注目されている。Broadcomの競合仮想化ベンダーの中には、Broadcomへの依存を避けたい企業向けに、KVMをベースに独自開発した仮想化関連ツールを提供しているところがある。

 ただしこうしたツールの導入は今のところ限定的だ。調査会社Data Center Intelligence Group(DCIG)のCEO兼プリンシパルアナリストであるジェローム・ウェント氏は、Broadcomが今後も仮想化市場のリーダーであり続けると予測する。

 「VCFは機能が豊富で、多様なシステムとの連携が可能だ。VMware製品を利用し続けてきた企業にとっては扱いやすく、従来製品からVCFへの移行は自然な選択肢になりやすい」とウェント氏は指摘する。これに対してKVMベースの仮想化関連ツールは、連携可能なツールの発展、サポート体制、運用ノウハウといった面でVCFに及ばない点があり、問題発生のリスクを懸念する声がある。

 「VMware製品が使用できなくなって業務に重大な支障が出るリスクと費用を比較した結果、企業は“仕方なく”VMware製品を使い続けることを選択している」(ウェント氏)

競合他社の動き

 Platform9 Systemsは、VMwareを退社した複数のエンジニアが創設したプライベートクラウドベンダーだ。OpenStackを基盤として、VCFの競合となる仮想化製品「Private Cloud Director」を提供している。

 「Broadcomが大口顧客を重視する姿勢を取ったことで、市場に新たな機会が生まれた。それに乗じて、当社もVMwareユーザーを積極的に支援している」。Platform9 Systemsの共同創設者であり製品部門バイスプレジデントのマドゥラ・マスカスキー氏はそう話す。

 一部の企業はVMware製品を使い続けてるが、離脱する企業も確実に存在する。「こうした動きが、他のベンダーにとって巨大な市場を開くことになる。現状やむを得ず契約している企業も、いずれはBroadcomからの脱却を決意するだろう」とマスカスキー氏は予測する。

 Platform9 Systemsは2024年11月にオープンソースツール「vJailbreak」を公開した。vJailbreakは、VMware製品で構築したVM(仮想マシン)を、Private Cloud DirectorなどのKVM互換ハイパーバイザーに移行するための無償ツールだ。

 Platform9 Systemsは、VMwareの管理ツール「VMware vCenter」と同等の機能を実装しようと試みているものの、マスカスキー氏は完全に同一の代替品を探すことには懐疑的だ。むしろVMwreユーザーは、異なるシステム設計の仮想化製品や、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」をクラウドネイティブな代替手段として検討すべきだと同氏は提唱する。VMware製品からの移行で不足する機能は他のツールで補い、ベンダーロックインを避けてシステムを最新化することが望ましいというのが同氏の見解だ。

 プライベートクラウドベンダーCloudSigmaも、VMware製品からの移行をビジネスチャンスだと捉えている。同社はVMware製品の代替として、KVMベースの仮想化ツールを提供している。以前はVMwareの公式パートナーとして、VMware製品を提供する立場にあった。

 CloudSigmaの共同創設者兼CEOであるロバート・ジェンキン氏によると、まだVMware製品を採用していない企業のほとんどは、KVMベースのハイパーバイザーや、クラウドネイティブなツールを選択している。

 「Broadcomは既存顧客からの収益最大化を図っているように見える」とジェンキン氏は言う。そうした企業のほとんどはVMware製品に大きく依存しており、移行は容易ではない。それでもKVMはベンダーロックインを回避する上で有効な選択肢だ。

 ジェンキン氏はVMwareユーザーに対して、現在利用している機能を見直すことを推奨する。「VMwareが提供する機能の大部分は、KVMを通じてより低予算で実現できる可能性がある。新しいシステムを構築する際には、KVMを基盤にするのが現在のトレンドだ」(同氏)


 次回は、Broadcomおよび仮想化市場の今後の展望を考察する。

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