社内で使うなら「パブリックAI」と「プライベートAI」のどちらが適切?「ハイブリッドAI」という選択肢も

人工知能(AI)技術を活用する際、まず選択肢になるのが「パブリックAI」と「プライベートAI」だ。安全かつ適正なコストで導入と運用をするには、どのようなポイントを押さえるべきなのか。そのこつを解説する。

2025年05月12日 05時00分 公開
[Chris FolkerdTechTarget]

 人工知能(AI)技術のビジネス活用を推進する際にユーザー組織が考えなければならないのは、そのインフラをどう構築するかだ。インフラに応じて、大きく「パブリックAI」と「プライベートAI」の2つに分けることができる。両者のメリットとデメリットは何か。導入する際には何に注意すればよいのか。AI活用とインフラ構築のためのポイントをまとめた。

「パブリックAI」と「プライベートAI」を比較

 パブリックAIは、クラウドベンダーのインフラで運用され、複数の組織がアクセスして利用する。パブリックAIでは、多種多様なソースから情報を取得して分析するので、強力で汎用(はんよう)的なAI機能が提供される。しかしパブリックAIにはデメリットもある。セキュリティとプライバシーを巡る懸念だ。

 一方のプライベートAIは、特定の組織のために構築されたインフラで運用され、使用するのはその組織に限定される。プライベートAIは専用のインフラを使用するだけではなく、AI機能もユーザー組織のニーズに合わせて調整されている。AIモデルが何をどう学習するかは、ユーザー組織が決める。プライベートAIのインフラは、クラウドインフラとオンプレミスインフラの両方が考えられる。プライベートAIでは、パブリックAIのデメリットであるセキュリティとプライバシーを巡る懸念を軽減できる。

 以下で、プライベートAIのメリットとデメリットを詳しく見てみよう。

プライベートAIのメリット

  • セキュリティ
    • プライベートAIのメリットの一つはセキュリティの強化だ。専用インフラを使ってAIシステムを運用することで、機密情報を攻撃から保護したり、プライバシー侵害を防いだりしやすくなる。AI技術利用に関して特に強いセキュリティが求められるのは、金融や医療、政府機関といった分野だ。
  • 性能
    • プライベートAIは特定の組織の要件に基づいてカスタマイズされ、その組織に合ったパフォーマンスを発揮する。専用インフラによって、AI処理の速度や効率が最適化され、迅速に分析結果を得られるようになる。
  • 制御しやすさ
    • プライベートAIではAIモデルを独自のニーズに合わせて調整し、ビジネスの変化に応じてさまざまなAI機能を開発できる。

プライベートAIのデメリット

  • コスト
    • プライベートAIのインフラを構築して運用管理するには、多大なコストが伴う可能性がある。専用インフラ、AI技術に精通する人材、継続的なメンテナンスのコストは、特に中堅・中小企業にとっての大きな障壁になりかねない。
  • 管理しにくさ
    • プライベートAIのシステムを管理するには、AI技術とビジネス内容の両方を熟知する必要がある。場合によって、外部パートナーの力を借りることが必要になることもあり、コストの増加につながる。
  • 拡張性の限界
    • インフラの拡張性が不足することがある。プライベートAIを活用する場合、AI技術利用に関する方針を慎重に計画し、セキュリティやパフォーマンスを犠牲にすることがないようにAIインフラを構築することが重要だ。

「ハイブリッドAI」も登場

 AIインフラは大きな進歩を遂げている。ハードウェアの費用は依然として高額になるが、ソフトウェアは入手しやすくなった。プライベートAIに関しては、まずは大企業が導入すると予測されるが、試験導入を含め、徐々に中堅・中小企業にも広がる可能性がある。

 プライベートAIとパブリックAI双方のメリットを活用する「ハイブリッドAI」という選択肢もある。ハイブリッドAIとは、プライベートAIの特定機能を利用しながら、パブリックAIの併用によってインフラ構築への投資を抑えられるアプローチだ。ハイブリッドAIの導入に当たり、以下がポイントになる。

  • AI技術に関するニーズの評価
    • 自社はAI技術に何を求めているかを評価して、AI技術が最大限の価値を発揮できる場所を見極める。保護する必要があるデータを特定し、セキュリティ対策を講じる。
  • パートナーとの協業
    • AIインフラを構築する際に、セキュリティも含め、AI技術の専門知識を提供できるパートナーと協業することが重要になる。
  • セキュリティを重視
    • AIインフラが厳格なセキュリティポリシーに従うようにする。AIインフラのテスト運用によって、誤情報の生成といったリスクを減らす。
  • 拡張性を考慮
    • AI技術利用の拡大を想定したロードマップを策定する。自社のニーズの変化に合わせてAIインフラをどのように管理して拡大するかを検討することが重要になる。

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