銀行大手JP Morganが“あのシステム”にもクラウドのメスレガシーシステム脱却に乗り出した米老舗

米国の金融サービス企業JP Morgan Chaseが、レガシーシステムの刷新を図るためにクラウド戦略を加速させている。その鍵となる、同社の次の一手とは。

2022年11月18日 05時00分 公開
[Karl FlindersTechTarget]

 老舗の米銀行大手を運営する金融サービス企業JP Morgan Chaseは、以前はクラウドインフラへのシステム移行に消極的な姿勢を示していた。だが同社の方針は変わった。システムの刷新に向けて、同社はどのような取り組みを進めているのか。

老舗銀行JP Morganが目指す“次世代の金融システム”とは

 2022年9月、JP Morgan Chaseはクラウドインフラへのシステム移行を目的として、FinTech(金融とITの融合)企業Renovite Technologiesの買収を発表した。Renovite Technologiesは米国カリフォルニア州に本社を置き、英国とインドにオフィスを構えている。

 JP Morgan Chaseによると、この買収は「世界規模の次世代決済処理システムを開発する」という同社の目標達成を後押しするものだ。Renovite Technologiesは、クラウドインフラで利用することを前提にシステムを開発する「クラウドネイティブ」のアプローチを用いて決済技術を構築する。その決済技術が、JP Morgan Chaseの企業財務サービスや貿易金融サービス、カード決済サービス、加盟店向け決済サービスなどを統合した決済サービスの一部となる。

 JP Morgan Chaseで決済技術部門のグローバル責任者を務めるマイク・ブランディーナ氏は、「Renovite Technologiesの加盟店向け決済サービスは、顧客へのサービス提供において既に役に立っている」と話す。Renovite Technologiesの技術がJP Morgan Chaseの決済サービスと統合することで、加盟店として契約した顧客は世界中でさまざまな決済方法を利用でき、ビジネスの成長を促進できるようになる。

 Renovite TechnologiesのCEO兼創設者ビレン・ラナ氏は、「当社のミッションは、最新技術を用いて近代化したクラウドインフラを顧客に提供することだ」と述べる。ラナ氏は今回の買収について、「次世代インフラを使って顧客にトップクラスの決済機能を提供するという、当社とJP Morgan Chaseの共通のビジョンを実現できる」と話す。

 JP Morgan Chase以外にも、老舗銀行がシステムをクラウドインフラに移行することでレガシーシステムからの脱却を目指す動きはある。その理由として以下が挙げられる。

  • レガシーシステムの維持コストが負担となっている
  • 新しいデジタルサービスを構築して市場投入する際の手法を柔軟に選択できない

 老舗銀行はクラウドインフラへのシステム移行を円滑に推進するため、専門性を持つFinTech企業を巨額の資金で買収する傾向がある。買収以外にも、銀行がFinTech企業の技術を生かす方法はある。その一つが、FinTech企業のサービスを使ってレガシーシステムを置き換えることだ。

 例えばJP Morgan Chaseは、英国のFinTech企業Thought Machineがクラウドインフラ向けに提供する勘定系システム「Vault」に、米国内の銀行の勘定系システムを移行すると2021年9月に発表している。

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