「2025年は勝負の年」 脱VMwareを狙うITベンダーの思惑仮想化インフラ市場の行方【前編】

BroadcomによるVMware買収による市場の混乱は、競合の仮想化ベンダーにとってはチャンスだ。どのようなベンダーが市場に参入し、どのような戦略を描いているのか。

2025年04月14日 07時30分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

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 2025年は、半導体ベンダーBroadcomが仮想化ベンダーVMwareを買収した後の対応に失望していると見込まれるユーザー企業との契約を勝ち取るため、多くの仮想化ベンダーが競い合うことになるだろう。

 BroadcomはVMware製品のライセンス体系やバンドルを変更した。これを、競合ベンダーはユーザー企業に近づくための機会と捉えている。市場の状況はどう変わり、各ベンダーはどのような戦略を描いているのか。

2025年の仮想化ベンダーの戦略とは

 「既にVMware製品を利用しているユーザー企業の大半は、今後数年間は既存の製品に関する契約をBroadcomと継続する必要があるかもしれないが、IT管理者はVMwareの代替製品を求めて市場に目を向けるようになっている」と仮想ストレージベンダーStorMagicの最高マーケティング責任者(CMO)兼最高製品責任者(CPO)のブルース・コルンフェルト氏は述べる。

 StorMagicはBroadcomのVMware買収以降、仮想化製品市場において攻勢を強めている。「Broadcomが市場に爆弾を投げ込んでから1年余りが経過した」とコルンフェルト氏は語る。「われわれが取引している大口のユーザー企業や見込み客は、すぐにはVMwareから移行できない。しかし、2025年は多くのユーザー企業が決断する年になると信じている」(コルンフェルト氏)

 コンサルティング会社Dragon Slayer Consultingのプレジデントであるマーク・ステイマー氏によると、以下の仮想化関連のオープンソースソフトウェアが、VMware製品からの移行の実用的な選択肢として成熟しつつある。

  • クラウド環境構築用ソフトウェア群「OpenStack」
  • クラウド環境構築用ソフトウェア群「OpenNebula」
  • ハイパーバイザーの「Proxmox Virtual Environment」(Proxmox VE)

 ただし、仮想化ベンダーがマーケティング活動に熱狂する一方で「ユーザー企業が仮想化技術の変更と採用を決定するにはまだ何年も掛かるだろう」とステイマー氏や他の業界アナリストは言う。「ベンダーが言う通り、人々はすぐには動かない」とステイマー氏は述べる。「ただ時間が掛かるだけだ」

市場の状況

 調査会社Forrester Researchのプリンシパルアナリストであるナビーン・チャブラ氏によると、IT管理者がビジネスに必要なシステム要件を把握できていれば、オープンソースソフトウェア(OSS)は商用ハイパーバイザーに代わる選択肢になる可能性がある。

 「Proxmox VEはユーザー企業の仮想化基盤になり得る。OpenStackはVMwareやNutanixのプライベートクラウドのようなサービスにより適しており、ネットワークやストレージ、その他の領域に利用できる可能性がある」とチャブラ氏は述べる。「中小企業(SMB)や小規模な企業であれば、OSSや小規模なサービスで十分である可能性が高く、問題が発生した場合には、必要なサポートサービスを見つけることもできるだろう」(チャブラ氏)。一方、大企業は自動化機能やよりきめ細かい制御、より広範なソフトウェアとの連携を求める可能性がある。

 「小規模事業者であれば、Proxmox VEで十分だ」とチャブラ氏は言う。「しかし、5000人の従業員がいてポリシーやガードレール(予防策)を設定する必要がある場合は、大企業向けのツールが必要となる」(チャブラ氏)

 VMwareの競合に関する議論では、一部ではNutanixに注目が集まっている。「これはNutanixのマーケティング活動の影響が大きく、他のITベンダーも仮想化市場の一部を獲得しようとしている」とチャブラ氏は述べる。

 Hewlett Packard Enterprise(HPE)は、2024年に「HPE VM Essentials」を発表した。これは、KVM(Kernel-based Virtual Machine)技術によるハイパーバイザーだ。独立したハイパーバイザーとしても機能するが、HPEのオンプレミスインフラ向けサービス群「HPE GreenLake」と統合できる。HPE VM Essentialsは、HPEが2024年に買収したMorpheus Dataの技術を基に構築されている。

 HPEはハードウェアとVMwareのプライベートクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)を組み合わせてユーザー企業に提供している。こうしたHPEにとって「VMwareは依然として『ファーストクラス』のパートナーだ」とHPE GreenLakeのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントであるブライアン・トンプソン氏は述べる。

 一方で、トンプソン氏は「より多くのユーザー企業が、完全なエコシステム(複数の企業による共存共栄の仕組み)がまだ整っていない状態でも、VMware製品の代替案を追求し活用することを熱望している」と述べる。「市場が圧力をかけるのと同時に、ユーザー企業も意欲を高めている。彼らは、エコシステムが追いついたり、市販のソフトウェアが完全に認証されるのを待ったりはしない」(トンプソン氏)

 「HPEは市場の需要に応えつつも、Broadcomとの友好的な関係を維持するために、代替サービスのマーケティング活動は消極的だ」とチャブラ氏は述べる。このアプローチは、HPEがVMwareの代替としては見過ごされる可能性を生む一方で、VMwareがユーザー企業の主要なITインフラであり続けるならば、Broadcomとのハードウェアパートナーシップを維持することにつながる可能性がある。

 チャブラ氏は、「結局のところ大多数のユーザー企業がVMwareに留まる中で、自分たちが獲得できるのはごくわずかな割合に過ぎないということをHPEは理解している」と述べる。

 OSSやハイパーコンバージドインフラ(HCI)などさまざまな選択肢がユーザー企業にはある。「だが、新しいベンダーを選択する際には、自社の目標とそのベンダーの戦略やサービスとを合わせる必要もある」とチャブラ氏は指摘する。「これらのベンダーやエコシステムには、熟慮すべき選定ポイントがある」(チャブラ氏)

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