仮想化インフラ市場の行方【前編】
「2025年は勝負の年」 脱VMwareを狙うITベンダーの思惑
BroadcomによるVMware買収による市場の混乱は、競合の仮想化ベンダーにとってはチャンスだ。どのようなベンダーが市場に参入し、どのような戦略を描いているのか。
2025年は、半導体ベンダーBroadcomが仮想化ベンダーVMwareを買収した後の対応に失望していると見込まれるユーザー企業との契約を勝ち取るため、多くの仮想化ベンダーが競い合うことになるだろう。
BroadcomはVMware製品のライセンス体系やバンドルを変更した。これを、競合ベンダーはユーザー企業に近づくための機会と捉えている。市場の状況はどう変わり、各ベンダーはどのような戦略を描いているのか。
2025年の仮想化ベンダーの戦略とは
「既にVMware製品を利用しているユーザー企業の大半は、今後数年間は既存の製品に関する契約をBroadcomと継続する必要があるかもしれないが、IT管理者はVMwareの代替製品を求めて市場に目を向けるようになっている」と仮想ストレージベンダーStorMagicの最高マーケティング責任者(CMO)兼最高製品責任者(CPO)のブルース・コルンフェルト氏は述べる。
StorMagicはBroadcomのVMware買収以降、仮想化製品市場において攻勢を強めている。「Broadcomが市場に爆弾を投げ込んでから1年余りが経過した」とコルンフェルト氏は語る。「われわれが取引している大口のユーザー企業や見込み客は、すぐにはVMwareから移行できない。しかし、2025年は多くのユーザー企業が決断する年になると信じている」(コルンフェルト氏)
コンサルティング会社Dragon Slayer Consultingのプレジデントであるマーク・ステイマー氏によると、以下の仮想化関連のオープンソースソフトウェアが、VMware製品からの移行の実用的な選択肢として成熟しつつある。
- クラウド環境構築用ソフトウェア群「OpenStack」
- クラウド環境構築用ソフトウェア群「OpenNebula」
- ハイパーバイザーの「Proxmox Virtual Environment」(Proxmox VE)
ただし、仮想化ベンダーがマーケティング活動に熱狂する一方で「ユーザー企業が仮想化技術の変更と採用を決定するにはまだ何年も掛かるだろう」とステイマー氏や他の業界アナリストは言う。「ベンダーが言う通り、人々はすぐには動かない」とステイマー氏は述べる。「ただ時間が掛かるだけだ」
市場の状況
調査会社Forrester Researchのプリンシパルアナリストであるナビーン・チャブラ氏によると、IT管理者がビジネスに必要なシステム要件を把握できていれば、オープンソースソフトウェア(OSS)は商用ハイパーバイザーに代わる選択肢になる可能性がある。
「Proxmox VEはユーザー企業の仮想化基盤になり得る。OpenStackはVMwareやNutanixのプライベートクラウドのようなサービスにより適しており、ネットワークやストレージ、その他の領域に利用できる可能性がある」とチャブラ氏は述べる。「中小企業(SMB)や小規模な企業であれば、OSSや小規模なサービスで十分である可能性が高く、問題が発生した場合には、必要なサポートサービスを見つけることもできるだろう」(チャブラ氏)。一方、大企業は自動化機能やよりきめ細かい制御、より広範なソフトウェアとの連携を求める可能性がある。
「小規模事業者であれば、Proxmox VEで十分だ」とチャブラ氏は言う。「しかし、5000人の従業員がいてポリシーやガードレール(予防策)を設定する必要がある場合は、大企業向けのツールが必要となる」(チャブラ氏)
VMwareの競合に関する議論では、一部ではNutanixに注目が集まっている。「これはNutanixのマーケティング活動の影響が大きく、他のITベンダーも仮想化市場の一部を獲得しようとしている」とチャブラ氏は述べる。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)は、2024年に「HPE VM Essentials」を発表した。これは、KVM(Kernel-based Virtual Machine)技術によるハイパーバイザーだ。独立したハイパーバイザーとしても機能するが、HPEのオンプレミスインフラ向けサービス群「HPE GreenLake」と統合できる。HPE VM Essentialsは、HPEが2024年に買収したMorpheus Dataの技術を基に構築されている。
HPEはハードウェアとVMwareのプライベートクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)を組み合わせてユーザー企業に提供している。こうしたHPEにとって「VMwareは依然として『ファーストクラス』のパートナーだ」とHPE GreenLakeのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントであるブライアン・トンプソン氏は述べる。
一方で、トンプソン氏は「より多くのユーザー企業が、完全なエコシステム(複数の企業による共存共栄の仕組み)がまだ整っていない状態でも、VMware製品の代替案を追求し活用することを熱望している」と述べる。「市場が圧力をかけるのと同時に、ユーザー企業も意欲を高めている。彼らは、エコシステムが追いついたり、市販のソフトウェアが完全に認証されるのを待ったりはしない」(トンプソン氏)
「HPEは市場の需要に応えつつも、Broadcomとの友好的な関係を維持するために、代替サービスのマーケティング活動は消極的だ」とチャブラ氏は述べる。このアプローチは、HPEがVMwareの代替としては見過ごされる可能性を生む一方で、VMwareがユーザー企業の主要なITインフラであり続けるならば、Broadcomとのハードウェアパートナーシップを維持することにつながる可能性がある。
チャブラ氏は、「結局のところ大多数のユーザー企業がVMwareに留まる中で、自分たちが獲得できるのはごくわずかな割合に過ぎないということをHPEは理解している」と述べる。
OSSやハイパーコンバージドインフラ(HCI)などさまざまな選択肢がユーザー企業にはある。「だが、新しいベンダーを選択する際には、自社の目標とそのベンダーの戦略やサービスとを合わせる必要もある」とチャブラ氏は指摘する。「これらのベンダーやエコシステムには、熟慮すべき選定ポイントがある」(チャブラ氏)
TechTarget発 先取りITトレンド
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] 複雑化しがちな「SASE運用」 IT・医療・金融などの事例に見る導入成功の秘訣 -
製品資料
[フォーティネットジャパン合同会社] 「SD-WAN」導入で失敗しないための5つの重要事項 -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] VPNの代替候補「ZTNA」を理解できるようになる“3大要素”とは? -
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] すぐ分かる「SD-WAN」選定のポイント 成功企業はどんな成果を出した? -
製品資料
[SCSK株式会社] 「Dropbox」管理・運用の困りごと解決ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
3
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
4
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
5
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
6
シャトレーゼを悩ませる偽メール 混乱なしでBIMI導入とDMARC強化を実現した方法
-
7
「年1回の外部診断」が限界に 大手小売が脆弱性管理を内製化・一元化した方法
-
8
セキュリティは「情シス任せ」が過半数 漏えい発生時やSCS評価制度の課題は?
-
9
みずほ証券が「液冷サーバ」を採用 1日3.6億件の計算を支えるための要件
-
10
「AIの粗悪レポート」で悲鳴 IntelやGoogleがバグ報奨金を止めた理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー