VMwareからNutanixに移行 “コストだけではない”その切実な事情仮想化インフラの移行を決断した理由とは

既存の仮想化インフラの将来に不安を感じた企業の間で注目が集まっている製品の一つが、Nutanixの仮想化ソフトウェアだ。Broadcomによる買収を機に移行を決断した企業の事例を紹介する。

2025年07月09日 05時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

 クラウドインフラ構築用の仮想化ソフトウェア群を提供してきたNutanixは、インフラ市場での存在感を強めようとしている。背景にあるのは、半導体ベンダーBroadcomが仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを2023年に買収したことを受けて、既存の仮想化インフラに対する不安がユーザー組織の間に広がったことだ。

 既存の仮想化インフラに課題を抱えるユーザー組織にとって、Nutanix製品は移行先候補の一つになっている。米国で2025年5月に開催された年次イベント「Nutanix Next 2025」では、実際にNutanixの製品群に移行した事例が紹介された。

Nutanixに移行するコストだけではない理由

 米国で2025年5月に開催された年次イベント「Nutanix Next 2025」には、VMware製品からNutanixへの移行を検討する企業も参加した。そうした企業にとって、価格体系の変更やパートナー体制の打ち切りは、仮想化インフラの移行を検討する理由の一部に過ぎない。それよりも、他の仮想化インフラへの移行を後押ししているのは、VMwareの方針転換全般に対する将来不安だ。

 調査会社Moor Insights & Strategyのアナリストであるマット・キンボール氏によれば、コストとパフォーマンスが安定していることは、IT管理者を安心させる大きな安心材料だ。新しい技術やアーキテクチャも将来への備えとしては重要な要素になる。だがそれ以上に重要なのは、ビジネスに直結するアプリケーションを停止せずに稼働させ続けられるかどうかであり、そのための信頼を置けるかどうかだ。

 「企業のIT部門は非常に保守的な人間の集まりだ」とキンボール氏は言う。彼らはシステムが稼働している時間(アップタイム)で評価され、停止した時間(ダウンタイム)で責任を問われる。そうした価値感の下では、信頼できるかどうかが非常に重要になる。

移行が目立つアジア、オーストラリア

 Nutanixが機能追加を急ぐ中、VMware製品を中心とする既存の仮想化インフラからの移行先として、Nutanix製品を前向きに検討する動きが広がっている。

 世界的にNutanixの製品群が浸透しつつある中だが、特に顕著なのがアジアとオーストラリアでの採用だという。移行に踏み切った企業に、シンガポールに本社を置く保険会社MSIG Asiaがある。2017年に小規模な構成でNutanixのハイパーコンバージドインフラ(HCI)の利用を開始していた同社は、2025年4月には合計2000台に及ぶ全ての仮想マシン(VM)をNutanixのインフラに移行した。

 MSIG Asiaのインフラおよびオペレーション部門のアシスタントバイスプレジデントであるユー・ウェイ・キー氏は、「きっかけはBroadcomによるVMware買収だった」と語る。その上で「NutanixとVMwareの製品には機能面での大きな差がないことが分かり、当社がBroadcomに支払うライセンス料金が激増したことをきっかけに移行プロセスを速めることにした」と説明する。

 オーストラリア各地にオフィスを構える土木工学企業Golding Contractorsは当初、クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)上でVMwareの仮想化製品群を利用できる「VMware Cloud on AWS」を利用していた。Golding ContractorsのIT管理者であるドム・ジョンストン氏は、「VMwareとAWSの決別とその後の経緯を見て、VMwareの未来を信頼できなくなった」と語る。2024年4月に、AWSによるVMware Cloud on AWSの販売は終了となっていた。ジョンストン氏は「AWSとVMwareの関係解消は、当社にとってかなり重要な出来事だった」として、「VMwareをベースにするインフラから基本的に移行する決定を下した」と説明する。

 Golding Contractorsは、VMware Cloud on AWSから、Nutanixのクラウドインフラ構築用製品をクラウドサービスにおいて使用できる「Nutanix Cloud Clusters」(NC2)に移行した。

もともと移行予定だった例も

 VMwareを巡る一連の混乱とは無関係に、ソフトウェアの更新を契機として、仮想化基盤をNutanix製品に移行した企業もある。

 米海軍の病院船「マーシー」(Mercy)では、仮想化インフラの老朽化が進んでいたことから、約10年前に刷新の検討が始まった。マーシーは病床数約1000床の病院船で、人道的任務で世界各国にいる米国の海兵隊員や海軍兵士、一般市民の治療に当たる。外洋での過酷な気象条件下や港に停泊時に運用されることも多い。軍事海上輸送司令部で米海軍の病院船統合任務指揮官を務めるマイク・テイラーは、「われわれは一瞬たりとも活動を中断するわけにはいかない」と語る。マーシーでの採用に当たってはさまざまな状況下でNutanixのソフトウェアによる仮想化環境をテストし、海兵隊や海軍兵士の命を支えるにふさわしい製品であるかどうかを確認したという。

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