買収されたVMwareのVDI事業 Omnissaは今後どうなる?Omnissaの内情【後編】

VMwareのEUC事業は投資会社KKRに買収され、Omnissaとしてスタートした。Omnissaの経営体制はどのようなものか。同社の今後のビジネスはどうなるのか。

2025年06月30日 08時00分 公開
[Rob BastiaansenTechTarget]

 2024年、半導体ベンダーのBroadcomは、仮想化ベンダーVMwareの製品群の中でVDI(仮想デスクトップインフラ)などの製品を含むエンドユーザーコンピューティング(EUC)部門を投資会社KKRに売却した。KKRによる買収は2024年7月に完了し、それ以来Omnissaという名前の新しい独立した会社として事業を継続している。

 Omnissaの経営体制については2つの疑問が浮かぶ。資金はどこからきているのか、そして誰が支配しているのかという点だ。

Omnissaの支配者は誰か

 OmnissaとKKRの情報について公開されている中で最大の情報は、KKRが買収のために40億ドルを支払ったという事実だ。KKRは投資ファンドを運営する企業であり、その資金は世界各国の投資家から集められている。現在はKKRの株主および出資者がOmnissaを所有していると言える。

 しかし、Omnissaの事業は誰がコントロールしているのだろうか。Broadcomからの分社化に伴い、経営陣を含む多くの従業員がBroadcomからOmnissaに移った。最も重要なのは、EUC部門のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーであったシャンカー・アイヤー氏がOmnissaのCEOになったことだ。KKRはOmnissaが買収前と変わらない道を歩み続けることを示した。

 経営体制について注目すべき点がもう一つある。2011年以来、KKRは投資先企業に対して共同所有権を導入し始めた。Omnissaに移った4000人のVMware従業員についても同様だ。KKRはプレスリリースでこれを次のように説明した。

 「EUC部門は独立した後、KKRの幅広い従業員オーナーシッププログラム(従業員に株式の所有機会を提供する仕組み)を実施し、これにより全ての従業員はKKRと共に各自のビジネスのオーナーとなる」

 従業員が議決権を持つわけではない。Omnissaは株式非公開企業であり、従業員の株式が実際の価値に変わるのは、Omnissaが再び売却されるか株式市場に上場した場合に限られる。しかし会社の成功から利益を得ることができると知っていれば、従業員はより会社に関与するようになるはずだ。

VMwareの今後

 Broadcomによる買収により、VMwareのEUC部門は分離して、セキュリティベンダーCarbon Black(VMwareが2019年10月に買収)はSymantecに統合された。しかしVMwareが持っていたソフトウェア群の大部分はVMware内に残っている。

 顧客にとって影響が大きい部分は技術よりも、サブスクリプションライセンスモデルへの移行と製品提供の簡素化だ。BroadcomはVMware製品のポートフォリオを簡素化した。VMwareの顧客は複数の製品や管理機能、自動化機能を備えたプライベートクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)、またはハイパーバイザー「VMware vSphere」を中心にした「VMware vSphere Foundation」からを選べる。

 Broadcomの観点からは顧客の製品選定をシンプルにするものだ。だが、Webで見受けられるさまざまな議論を見ると、全ての顧客やパートナー企業がこの方針に満足しているわけではない。特にVMware製品を販売していた事業者にとってはそうだ。コストの上昇につながるケースが珍しくなく、代替製品へ移行する事業者もある。ライセンスコストが上昇している顧客も存在する。

 しかし、これまで投資してきたVMwareを使い続けるだけの十分な理由がまだある。VCFの新バージョン「9.0」では、ソフトウェア群全体が更新されるだけでなく、従来のVMware製品との統合がさらに緊密になると期待できる。

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