いまさら聞けない「ルーター」とは? モデムとの違いから“7種の分類”までルーターを基本から理解する【第2回】

ルーターとモデムの役割は、通常はあいまいにしか理解されていない。本稿は両者の基本的な役割とともに、7種類のルーターの役割の違いを整理する。

2025年07月12日 08時00分 公開

 「ルーター」と「モデム」は、同じくインターネットへの接続時に使用するネットワーク機器として混同されがちだ。用語の使われ方があいまいになることがあるが、両者には異なる役割がある。加えて、ルーターにさまざまな種類があることも混乱を招く一因になっている可能性がある。本稿ではルーターを7種類に分類して解説する。

 インターネットにつながるネットワークの仕組みを基本から理解するために、ルーターとモデムとの違い、そして7種類のルーターの違いと役割を押さえておこう。

そもそもルーターとモデムは何が違うのか

 ルーターとモデムという用語は、家庭やオフィスでインターネットを利用する際には意味の区別なく使用されることがある。だが、両者は同じものではない。

ルーターの役割

 ルーターは、ネットワークとネットワークを接続するための機器であり、家庭やオフィスのLAN(ローカルネットワーク)と、インターネットなどの外部ネットワークを橋渡しする役割を担っている。例えば家庭のネットワークでは、モデムからインターネット接続を受け取り、LANに接続されたさまざまなデバイスに通信を分配する。この仕組みにより、PCやスマートフォン、プリンタといった各種デバイスが、無線LAN(Wi-Fi)や有線のイーサネットケーブルを介してインターネットに接続できるようになる。

 ルーターはLANを構成し、家庭やオフィス内の複数のデバイス同士が相互に通信できるようにする役割を果たす。LAN内の各デバイスがインターネットに接続するための経路も提供する。ルーターは一般的には無線LAN(Wi-Fi)の機能を搭載しているため、イーサネットケーブルを使わずに、スマートフォンやPCなどをLANに接続できる。

 現在では1台の機器がモデム機能とルーター機能を兼ね備えるケースが一般的になっている。そうした1台2役の場合、インターネット接続の確立と、家庭内ネットワークの構築を1台で担うため、設置や管理の手間が少ないという利点がある。

モデムの役割

 モデムは、インターネット回線から送られてくる信号を、PCなどのデバイスで利用可能にするための変換装置だ。例えばアナログ回線を使っているのであれば、アナログ形式の信号をデジタル信号に変換する。これにより、自宅やオフィスをインターネットサービスプロバイダー(ISP)に接続し、インターネットにアクセスできるようになる。

 モデムにはLANを構築する機能はない。そのため、複数のデバイスをネットワークに接続したい場合は、ルーターを併用する必要がある。一般的なモデムには、「Wi-Fi」の無線通信機能が搭載されておらず、有線によるインターネット接続しか提供しない点にも注意が必要だ。

7種類のルーター

 ルーターには、用途や設置環境に応じて、さまざまな種類がある。インターネットの利用環境や利用目的が多様化していることから、それに応じてこれだけの種類のルーターが提供されている。

有線ルーター

 有線ルーターは、イーサネットケーブルを使ってデバイスを物理的にインターネットに接続するタイプのルーターだ。有線接続は、無線LAN(Wi-Fi)接続と比べて通信速度が安定しやすく、セキュリティを確保しやすい利点がある。安定した高速通信が求められるデータセンターやオフィスなどの接続環境に適している。

無線ルーター

 無線ルーターは、有線ルーターと同様にLANを構築してインターネット接続を提供する機器だが、無線LAN(Wi-Fi)を利用することでPCやスマートフォン、タブレットといったデバイスの可搬性を高められる点が特徴だ。

 基本的に無線ルーターは、無線LAN規格「IEEE 802.11」シリーズの規格を使用する。例えば「IEEE 802.11ac」(Wi-Fi 5)や「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)などがある。最新の規格としては「IEEE 802.11be」(Wi-Fi 7)の製品も出回っている。

コアルーター

 コアルーターは、ISP(インターネットサービスプロバイダー)など大規模なネットワークを運用する組織が使用する、高速かつ高機能な種類のルーターで、インターネットの中核を担う存在だ。大容量のトラフィック(ネットワークを流れるデータ)を処理するために、ルーターやスイッチを多数接続できる広帯域幅の特性を備えている。一般には、光ファイバーを用いたバックボーンネットワーク内に設置され、長距離かつ高速なデータ転送を実現する。

エッジルーター

 エッジルーターは、組織のネットワークと外部ネットワークとの接続点に配置されるルーターだ。ネットワークの境界(エッジ)に位置することからこう呼ばれる。内部ネットワーク向けのルーターと比べて、トラフィック制御やセキュリティ機能を重視して設計されていることが多い。

ブランチルーター

 ブランチルーターは、企業の支社や営業所といった遠隔地のオフィスのLANを本社のWANに接続するルーターだ。本社ネットワークのエッジルーターと通信する役割を担う。ブランチルーターは一般的に、複数の通信信号を時間ごとに分割して1本の回線で送信する「時分割多重化」(TDM)や、無線LANの集中管理、WANの高速化といった機能を備えており、リモート拠点のネットワーク運用を効率化できる。

仮想ルーター

 仮想ルーターは、物理的なルーターをソフトウェアベースで仮想的に再現(エミュレーション)する機能だ。1台の物理ルーターを複数の仮想的なユニットに分割し、それぞれを独立したルーター機能として使うことができる。各仮想ルーターは、独自のルーティングテーブル(経路情報表)やインタフェース、構成設定を持ち、個別に制御される。

 仮想ルーターは、複数の利用者(テナント)が1つのネットワークインフラを共有する「マルチテナント環境」や、同一デバイス上で複数のVPN(仮想プライベートネットワーク)を運用する場合などに有効な機能だ。トラフィックを分離してセキュリティやネットワーク管理を改善できる利点もある。

論理ルーター

 論理ルーターは、物理ルーター内に複数の独立したルーター機能を持たせる仕組みだ。強化された仮想ルーターの一種と考えることができる。論理ルーターには、専用のCPUやメモリ、ネットワークインタフェースが割り当てられ、それらのハードウェアリソースを各論理ルーターが利用する。

 物理ルーターの機能を仮想的に再現しながら、1台のルーターで複数のルーティングドメイン(論理的なネットワーク分離領域)を構築できるのが論理ルーターの特徴だ。これにより、1台の物理ルーターでマルチテナントや複数の業務用ネットワークを効率的に運用できる。


 次回は、ルーターが使用するルーティングプロトコルの種類を解説する。

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