いまさら聞けない「ルーター経由」でインターネットに接続する“真の理由”ルーターを基本から理解する【第1回】

インターネット接続に欠かせない機器として、家庭にもオフィスにも一般的に設置されているルーター。その仕組みを正しく理解しているだろうか。

2025年07月06日 08時15分 公開

 いまや家庭でもオフィスでも、当たり前のように設置されているルーター。スマートフォンやPC、さらにはカメラなどのIoT(モノのインターネット)機器がインターネットにつながる際、ほとんどの場合、ルーターが重要な役割を果たしている。

 ルーターについて「インターネット接続に必要な機器」くらいの認識はあっても、なぜルーターがインターネット接続に使われているのかや、実際にどのような働きをしているのかを理解している人は多くないだろう。人によっては「Wi-Fiにつなぐ機器」程度にしか捉えていない可能性もある。

 ルーターを正しく理解しておくことは、ネットワークのトラブルシューティングや、より安全で効率的なネットワーク設計にも欠かせない。その役割を押さえておこう。

そもそも「ルーター」は何のためにあるのか

 ルーターとは、2つ以上のネットワークを接続し、データの中継をする物理または仮想のネットワーク機器を指す。接続するネットワークには、LAN(ローカルエリアネットワーク)やWAN(ワイドエリアネットワーク)といった、規模や用途が異なるさまざまな種類のネットワークが含まれる。

 異なるネットワーク同士を接続する装置はゲートウェイと呼ばれる。ルーターはその一種であり、インターネット上の各PoP(Point of Presence:接続拠点)において、複数のネットワークの接点に設置されている。

 ネットワークの通信ルールを階層で定義した「OSI参照モデル」(OSI:開放型システム間相互接続)では、ルーターは第3層(レイヤー3、ネットワーク層)で動作するネットワーク機器だ。

 ルーターは受信したパケット(送受信データを小分けにした単位)の宛先となるIPアドレスを確認し、目的地に到達するまでの最適な経路を計算した上で、パケットを転送する。1つのパケットは、最終的な宛先に届くまでに数百台ものルーターを経由し、ネットワークを次々と移動しながら転送されることもある。

ネットワーク機器としてのルーター

 従来型のルーターは、ルーター機能単体の専用ソフトウェアを搭載したハードウェアだ。一方、仮想ルーターは物理ルーターと同等の機能を持つソフトウェアベースの仕組みであり、通常は汎用(はんとう)のサーバで実行される。

 仮想ルーターは単体で動作することもあるが、ファイアウォール(不正通信を遮断する機能)やパケットフィルタリング(通信内容を精査する機能)、ロードバランサー(通信の負荷を分散させる機能)、WAN最適化(WAN回線における通信効率を高める機能)など、他の仮想ネットワーク機能と組み合わせて提供されることがよくある。無線LANアクセスポイントやネットワークスイッチの機能が、ルーターの機能として組み込まれる場合もある。

ハブとしてのルーターの役割

 ルーターは、異なるネットワークを接続し、パケットを正しい宛先に転送すると同時に、複数のデバイスが同じインターネット接続を共有できるようにする役割も担っている。ルーターはネットワークのハブ的な存在として機能する。例えばインターネットなど外部のネットワークから届くトラフィック(ネットワークを流れるデータ)を受信し、それをLAN内の宛先となるデバイスに振り分ける。この仕組みによって、家庭やオフィスのPCやスマートフォンなど複数のデバイスが、同じパブリックIPアドレス(インターネット上で割り当てられる一意のIPアドレス)と、1つのインターネット接続を共有できる。

 ルーターは通常、LANを構築する役割も同時に担っている。これにより、ルーターに接続するLAN内のデバイス同士は、インターネットを経由せずに直接通信できるようになる。

ルーティングの仕組み

 ノートPCやスマートフォンなどのデータを他のデバイスに送信する際、そのデータはパケットに分割される。各パケットには「ヘッダ」と呼ばれる情報が付加され、そこには送信元と送信先のIPアドレスなど、通信に必要な情報が含まれる。

 ルーターは、このヘッダ内の送信先IPアドレスを読み取り、自身が保持するルーティングテーブル(宛先までの経路情報をまとめた表)と照合し、パケットを次に転送すべき最適な経路、つまり次ホップを決定する。

 データをネットワーク上の目的地へ届けるための経路情報を一覧化した表がルーティングテーブルだ。各経路には、通信の優先度や距離など、経路選択に影響する指標が添えられている場合もある。ルーターはこのルーティングテーブルを基に、IPアドレスごとに最適な転送先を選ぶためのアルゴリズムを用いて、どこにデータを送るかを判断する。

 ルーティングテーブルには、デフォルトルート(あらかじめ設定された既定の転送先)が定義されていることが多い。ルーターは、受信したパケットに対してより適切な経路が見つからない場合、このデフォルトルートを使ってパケットを転送する。例えば、家庭用やオフィス用の一般的なルーターでは、全ての送信トラフィックが1本のデフォルトルートを通じて、インターネットサービスプロバイダー(ISP)に向かうよう設定されている。

 静的ルーティングと動的ルーティングの2種類がある。静的ルーティングでは、管理者が手動で経路情報を設定し、ルーターに固定された経路しか持たせない。一方、動的ルーティングでは、ルーターがネットワークの状況に応じて経路情報を自動で更新し、ルーティングプロトコルを使って他のルーターと情報を交換する。

NATの仕組み

 NAT(ネットワークアドレス変換)も一般的にはルーターが実行する機能の一つだ。NATは、LAN内の複数のプライベートIPアドレス(LAN内で使われるIPアドレス)から出ていく全ての通信を、LAN内の各デバイスが共有するパブリックIPアドレス(インターネットで割り振られる一意のIPアドレス)に変換することで、外部から内部のIPアドレスを見えないようにする。これにより、グローバルIPアドレスの使用を節約すると同時に、ネットワーク内部の構成を隠すことでセキュリティを高めることができる。


 次回は、ルーターの種類別にその役割を解説する。

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