「HDDは消える」説と「HDDは生き残る」説、それぞれの言い分「HDDの終わり」論を検証する【後編】

SSDの技術進化と容量単価の低下が注目を集める中、「HDDは終わる」との見方が再び浮上している。しかし、現実はそう単純ではない。SSDがHDDに取って代わるには、まだ幾つもの“壁”が存在する。

2025年05月28日 08時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

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 AI(人工知能)技術の活用が広がる中で、ストレージに求められる性能要件は高まっている。それと同時にSSDの進化は加速しており、「HDDの終焉(しゅうえん)」が再びささやかれ始めている。とはいえ、SSDがHDDを完全に代替するのはそう簡単ではないのも事実だ。専門家の見解を交えながら、HDDが市場から消える可能性がどこまであるのかを考える。

「HDDは消える」「HDDは生き残る」のそれぞれの理由

 HDDベンダーの主張によれば、SSDとHDDのコストパリティ(同等の価格水準)を実現するには、まだ相当の時間が必要だ。調査会社Gartnerでアナリストを務めるジョセフ・アンズワース氏によると、SSDの容量単価は依然としてHDDの4〜5倍に相当する。

 一方、SSDベンダーは「総所有コスト」(TCO)の観点から優位性を訴求する。TCOには、消費電力の削減や更新サイクルの長期化といった要素が含まれるが、こうしたメリットの有効性は、ストレージアレイの更新頻度や運用環境に左右される。

 「HDDと同等とまではいかなくても、SSDの容量単価がHDDに近づけばSSDの販売は伸びるだろう」とした上で、アンズワース氏は次のように続ける。「とはいえ、『ニアラインHDD』が実現している1GB当たり1セント強という価格水準に追い付くのは、現時点では極めて困難だ」。ニアラインHDDとは、頻繁に利用するデータを保管するHDDと、データを長期保存するためのHDDの中間的な役割を持つHDDを指す。

 コストに加えて、SSDには生産規模の課題も残されている。アンズワース氏は、「HDD全体の需要をNAND型フラッシュメモリだけで賄うには、現状の供給能力では不十分だ」と指摘する。加えて、NAND型フラッシュメモリ工場の建設には莫大(ばくだい)な投資と時間が必要となるため、今後SSDがHDDの領域に徐々に食い込んでいくとしても、数年以上かかると同氏は見込む。

 2023年、Pure Storageは「2028年までに、企業向けの新しいHDDの販売は終了する」との見解を示した。同社でカスタマーエンジニアリング研究開発部門のバイスプレジデントを務めるショーン・ロスマリン氏は、「ニアラインHDDは、次回の更新のタイミングでSSDに置き換わるだろう」と述べている。

 ロスマリン氏は、HDDの主要顧客であるハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)でさえ、今後はSSDの大容量化やTCOの優位性に注目するようになると主張する。

 ただし、こうした「HDDの終焉」論は繰り返し語られてきたものだ。調査会社IDCでアナリストを務めるエド・バーンズ氏は、実際には過度に誇張された予測に過ぎないと指摘する。「HDDベンダーは、2028年以降も視野に入れた製品ロードマップを策定している」とバーンズ氏は話す。

 バーンズ氏によれば、ストレージの最適な選択肢は用途に依存するため、予算に制約があり、かつ性能要件がそれほど厳しくない用途においては、依然としてHDDを中心にしたストレージシステムが導入される可能性が十分にあるという。

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