「量子コンピューティングは脅威」とは言わせない 今必要なセキュリティの備えとはIT大手からコンサルサービスが続々

量子コンピューティングの商用化が現実味を増す中、攻撃者による悪用リスクも高まっている。量子コンピューティング時代に備え、今どのような対策が必要なのか。

2025年06月10日 06時00分 公開
[John MooreTechTarget]

 米国の大手IT企業の間で、「量子コンピューティング」に関するセキュリティコンサルティングに注力する動きが始まっている。量子コンピューティングとは、量子力学を用いて複雑なデータ処理を実施する技術だ。2025年5月時点ではまだ本格的な商用化はされていないが、今後広く普及すれば攻撃者に悪用される可能性もある。量子コンピューティングによるセキュリティリスクを減らすために、IT企業各社はどのようなサービスを提供しているのか。

問い合わせが急増 各社サービスの内容と提供の背景はこれだ

 量子技術は、従来のコンピューティングが主に電気信号で情報を処理するのとは異なり、亜原子粒子(原子よりも小さい粒子)の性質を利用して計算をする。量子コンピューティングを使えば、病気の早期発見や気象予測の精度向上といったことが可能なると考えられている。

 量子コンピューティングはデータ処理だけでなく、セキュリティの分野でも可能性を秘めている。高度な脅威検出や暗号化による通信の保護など、防御においてさまざまなメリットをもたらす。一方で、攻撃者が量子コンピューティングを使うことで、暗号化されたデータを解読する可能性もある。こうした課題を解決するため、量子コンピューティングを使ってもデータを解読できないようにする「Post-Quantum Cryptography」(PQC、ポスト量子暗号技術)の開発が進んでいる。

 米国の大手IT企業は、こうした動きに合わせ量子コンピューティングのセキュリティを切り口としたサービス展開に力を入れている。

DXC Technology

 量子コンピューティングをはじめとする最新技術を生かしたサービスを提供するDXC Technologyはコンサルティング事業の一環として、量子コンピューティングに関するセキュリティ相談のサービスを提供している。同社は将来、自社のアプリケーション開発にも量子コンピューティングを取り入れる可能性があるとしつつ、「現在は需要拡大を受け、セキュリティコンサルティングに焦点を当てている」と説明する。

 その背景についてDXC Technologyのコンサルティング事業部でプレジデントの役職に就いているハワード・ボビル氏は、「2024年、量子コンピューティングのセキュリティについて当社に問い合わせをしたのはわずか数社だった」と述べる。しかし2025年に入ってからは、問い合わせ件数が急増。「量子コンピューティングのセキュリティに関する相談が日常的になってきた」(同氏)という。DXC Technology は、2026年以降にさらなら需要拡大を見込んでいる。

Unisys

 量子コンピューティングに関するセキュリティサービスを提供するUnisysは2025年3月、PQC関連サービスの第一弾として、暗号技術の安全性を評価するサービスを発表した。PQCを活用した戦略のコンサルティングや暗号技術の安全性を高めるための技術提供を含む。同社は今後、量子コンピューティングセキュリティのサービスメニューを拡大する計画だ。

Accenture

 グローバルコンサルティング企業Accentureのベンチャーキャピタル部門は2025年1月、PQCのソフトウェア開発を手掛ける企業QuSecureに投資したと発表した。QuSecureの技術を活用する形で、企業や政府機関に対し、量子コンピューティングによるリスクを想定したセキュリティサービスの提供を強化する。

課題は組織内のスキル不足

 デジタル証明書の認証局を運営するDigiCertによると、5年以内に量子コンピューティングが暗号化アルゴリズムを破るのではないか、という懸念が組織の中で高まっている。一方で、大半の組織はその対策に取り組んでいないと同社は説明する。DigiCertのバイスプレジデント(デジタルトラスト担当)のマイク・ネルソン氏はその理由として「社内のスキルやリソースが不足していること」を挙げる。

 量子コンピューティング商用化の具体的な時期が未定なことも、組織の取り組みが遅れている一因だ。DXC Technologyのハワード氏は、「世界各国の政府がPQCの行動を促進する上で重要な役割を果たしている」と指摘する。同氏によると、PQC関連の政策が拡大すれば、IT企業の量子コンピューティングセキュリティのコンサルティングの需要が高まる。

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